Top page科・属リストDiploastraeidae > Diploastrea > Diploastrea heliopora

Diploastraeidae ダイオウサンゴ科
Diploastrea ダイオウサンゴ属

Diploastrea heliopora (Lamarck, 1816)
(Figs. 1-16)

Astrea heliopora Lamarck, 1816: 265 [mers Australes].

Astraea (Orbicella) glaucopis Dana, 1846: 208 [Feejee Islands]; 1849: pl. 10, figs. 2a, b.

Astraea (Orbicella) patula Dana, 1846: 209 [Feejee Islands]; 1849: pl. 10, fig. 14.

Orbicella minikoiensis Gardiner, 1904: 774, pl. 63, fig. 35 [Minicoi].

Diploastrea heliopora: Matthai 1914: 72, pl. 20, figs.7, 8, pl. 34, fig. 9; Vaughan 1918: 142, pl. 59, figs. 5, 5a; Yabe, Sugiyama & Eguchi 1936: 54, pl. 11, figs. 5, 6; Crossland 1952: 166; Shirai 1977: 566, 5 figs.; Veron, Pichon & Wijsman-Best 1977: 153, figs. 295-297; Shirai & Sano 1985: 246, fig. 1; Veron 1986: 512, figs. 1-4, 1 skeleton fig.; Nishihira 1988: 203, 3 figs.; Uchida & Fukuda 1989: 184, 2 figs.; Sakai 1992: 164, pl. 40-9, fig. 4-90C; Nishihira & Veron 1995: 369, 3 figs.; Veron 2000: vol. 3, 230, figs. 1-4, 1 skeleton fig.; Dai & Horng 2009: vol. 2, 156, 3 figs.; Kameda, Mezaki & Sugihara 2012: 34, 112, 2 figs.; Kajiwara et al. 2020: 82; Rowlett 2020: 624, 10 figs.

ダイオウサンゴ 白井, 1977

ダイオウサンゴ 白井, 1977: 566, 5図; 白井・佐野 1985: 246, 図1; 西平 1988: 203, 3図; 内田・福田 1989: 184, 2図;酒井 1992: 164, pl. 40-9, 図4-90C; 西平・Veron 1995: 369, 3図; 亀田・目崎・杉原 2012: 39, 128, 2図; 梶原ら 2020: 82.

1 2 3

図1. ダイオウサンゴ. Fig. 1. Diploastrea heliopora (Lamarck, 1816).

A-H. MIY-KK2014-235. 宮古諸島宮古島七光湾沖離礁, 水深 17 m: AB. 群体; C. サンゴ体; D. 同, 個体とその周囲; E. 同, 個体とその周囲, 側面; F. 同, 個体, 隔壁と軸柱; G. 同, 莢壁ならびに個体間上における肋の分布; H. 同, 個体の断面. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: DEH, 10 mm; FG, 1 mm. 写真: AB, 梶原健次撮影; C-H, 野村恵一撮影.

図2. ダイオウサンゴ. Fig. 2. Diploastrea heliopora (Lamarck, 1816).

A-D. GS-YB15-009. 宮古諸島八重干瀬クンカディ・ガマ南, 水深 3 m. 島田剛採集: A. サンゴ体; B. 同, 個体とその周囲; C. 同, 個体とその周囲, 側面; D. 同, 隔壁上の歯状突起.

EF. GS-YB15-036. 八重干瀬アガラ・ガウサ東, 水深 11 m, 島田剛採集: E. サンゴ体; F. 同, 個体とその周囲.

GH. 群体. 慶良間諸島渡嘉敷島アリガー, 水深5m.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: BCF, 10 mm; D, 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. ダイオウサンゴ. Fig. 3. Diploastrea heliopora (Lamarck, 1816).

A-D, CMNH-ZG 08549. 奄美大島奄美市知名瀬, 水深 10 m: A-C, 群体; D, サンゴ体.

EF, MIY-HM2017-028, 群体. 奄美諸島奄美大島大浜海岸, 水深 5 m.

GH, 群体. モルジブバドゥー, 水深 8 m.

定規の目盛り: 1 mm. 写真: A-D, 立川浩之撮影; EF, 松本 尚撮影; GH, 野村恵一撮影.

形態:群体は被覆状もしくは塊状で、たいていドーム状を成す。長径は 1 m 以内のものが多いが、時に高さ・幅共に数mに及ぶ大群体を形成する。表面は特徴的な大型突起を欠き滑らかである。

個体はほぼ円形で均一に密生し、個体間隔は個体1個分以内である。成長した個体の大きさはほぼ揃い、上面が平坦なドーム状に盛り上がり、プロコイド型配列を成す。成長した個体の莢径は 7~10 mm、個体の外径は 14~18 mm、高さは 3~5 mm である。莢は浅い。個体の増殖方法は基本的に触手環外出芽であるが、ごく稀に触手環内出芽が認められる。

隔壁は4次まで認められるが、4次隔壁は不完全で、個体によってはこれを欠く場合がある。隔壁は軸柱に向かってまっすぐに伸び、2次隔壁まではほぼ同形同大で軸柱まで達し、3次隔壁以下は概して1次・2次隔壁よりも細く、全て軸柱に達するか一部は達しない。隔壁の側面には細かな顆粒状突起が生じる。パリ状葉を欠く。

隔壁は肋と一体化した隔壁-肋を形成する。隔壁-肋の厚さは莢壁内縁付近で最も厚く、そこから内外両端方向に向かうにつれて狭まる。隔壁-肋は莢壁外側面下部からなだらかに盛り上がり、軸柱外縁付近で急に軸柱に向かって落ち込む。隔壁-肋上には10個前後の歯状突起が1列に並ぶが、軸柱寄りにあるものは他よりも大きい。歯状突起の上端部には顆粒状突起が密に分布する。肋の一部は隣接する個体同士で連結する。個体間付近の隔壁-肋間には、隔壁-肋よりも顕著に細くかつ短い肋が認められる。

軸柱は大きく直径はたいてい莢径の5割を占め、隔壁内側面から生じた数本のトラベキュラが縒り合わさったスポンジ状構造を成す。莢壁はやや厚く、幅は 3~4 mm、シナプティキュロテカならびにセプトテカによって形成される。莢壁や個体間には虫食い様の穴が空く。共骨表面は滑らかで、棘を欠く。

生時の表皮の色彩は一様な明褐色、灰褐色、緑褐色等、莢内は明色を呈する場合が多い。

識別点:本種は有藻性イシサンゴ類の中では珍しく生時の方が他種と区別しやすい。すなわち、群体表面は起伏が少なく、円形で均一な個体が隙間なく整然と並ぶ特徴は、少し離れていてもよく目立つからである。標本では、プロコイド型配列をした円形の個体が密生すること、莢径は約 10 mm、個体の大きさ (外径) は約 15 mm であること、ほぼ同形同大の多数の隔壁を持つこと、大きなスポンジ状の軸柱を持つこと、極端に大きさの異なる2種類の肋を持つことによって類似した形状を持つ他種と区別される。また、本種はシナプティキュロテカを持つことによって、Montastraeidae、Merulinidae サザナミサンゴ科、Lobophylliidae オオトゲサンゴ科ならびに Mussidae と容易に区別される (Budd & Huang 2023)。

分布と生態:国内では奄美諸島以南、海外ではインド・西太平洋域に生息する。たいてい、水深 3 m 以深に分布する。雌雄異体でポリプは夜間に伸ばす。

和名の由来:白井 (1977) によれば、形状が「大王」のように堂々として他のサンゴと混在しないところに因む。

参考:担名タイプの写真

Astrea heliopora Lamarck, 1816 ── Holotype, MNHN scle20 [Corallosphere]

Orbicella minikoiensis Gardiner, 1904 ── Syntype, USNM 85 [Corallosphere]

引用文献ほか

引用文献:

Bernard HM (1897) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 3. The genus Montipora, the genus Anacropora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]

Dai CF, Horng C (2009) Scleractinia fauna of Taiwan I. The complex group. National Taiwan University, Taipei.

梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.

亀田和成・目崎拓真・杉原薫 (2013) 黒島研究所収蔵造礁サンゴ目録第2版. 日本ウミガメ協議会付属 黒島研究所, 竹富町. [日本ウミガメ協議会付属黒島研究所]

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

野村恵一 (2016) 串本産有藻性イシサンゴ類図鑑. Ⅰ シズカテマリ亜目. マリンパビリオン 特別号5. [串本海中公園]

野村恵一 (2017) 小笠原諸島の有藻性イシサンゴ群集. In: 東京都小笠原支庁, 平成28年度小笠原諸島海域生態調査委託報告書. 小笠原自然文化研究所, 小笠原, pp 95-179. [小笠原世界遺産センター]

野村恵一・鈴木豪 (2022) コモンサンゴ類の同定の話(51) , 国内産種の紹介37. 霜柱状突起を持ち、被覆状・塊状群体を成し、瘤状突起以外の大型突起を欠く種. マリンパビリオン 特別号14. [串本海中公園]

野村恵一・鈴木豪・岩尾研二 (2017) 阿嘉島のコモンサンゴ類. みどりいし28, supplement. [阿嘉島臨海研究所]

Pillay RM, Terashima H, Venkatasami A, Uchida H (2002) Field guide to corals of Mauritius. Albion Fisheries Research Centre & Japan International Cooperation Agency, Mauritius.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

杉原薫・野村恵一・横地洋之・下池和幸・梶原健次・鈴木豪・座安佑奈・出羽尚子・深見裕伸・北野裕子・松本尚・目﨑拓真・永田俊輔・立川浩之・木村匡 (2015) 日本の有藻性イシサンゴ類. 種子島編.国立環境研究所生物・生態系環境研究センター, つくば. [国立環境研究所]

Veron JEN (1986) Corals of Australia and the Indo-Pacific. Angus & Robertson Publication, North Ryde, NSW.

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. ●. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

横地洋之・下池和幸・梶原健次・野村恵一・北野裕子・松本尚・島田剛・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・山本広美・座安佑奈・木村匡・河野裕美 (2019) 西表島網取湾の造礁サンゴ類. 西表島研究 2018, 東海大学沖縄地域研究センター所報 36-69.

執筆者:野村恵一

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開