用語集
分類学の基本用語
タクソン taxon (複数 taxa) ある分類階級に位置づけられる、生物の集合のことを指し、学名の有無にかかわらない。分類群もしくは分類学的単位とも呼ばれる。一つのタクソンに与えられた学名が、種名や属名などである。
名義タクソン nominal taxon ある適格名によって表示されるタクソンという概念。科・属・種の各階級群における名義タクソンは、それぞれある一つの担名タイプに基づいている。
cf. confer 種の位置が特定できない場合に属と種名の間に入れる用語。あるタクソンに単に似ているという意味を持つ。
aff. affinis 種の位置が特定できない場合に属と種名の間に入れる用語。あるタクソンに似ているが種が異なるという意味を持つ。
種群 species group / spp. / species complex / complex 以下の複数の意味を持つ。①単なる種の集まり。②同属内の特定の種の集まり (species group)。③同定が未了の同属内の複数種で、属名の後に付けて Montipora spp. のように表記する。④種複合体 (分類学的位置決定が未了の複数の近縁種の集まり (species complex / complex)。
種複合体 species complex / complex 分類学的位置決定が未了の、複数の近縁種 (隠蔽種) をひとくくりにして扱ったもの。特定の種複合体を表す場合には学名の後にこれらの語を続けて Acropora hyacinthus species complex、または A. hyacinthus complex のように表記する。
隠蔽種 cryptic species 形態的に区別できず同一の種として扱われているが、本来は別種であるもの。産卵時期の違いや分子系統学的手法などで、その存在が明らかになることがある。
異名 (シノニム) synonym 同一のタクソンに与えられた複数の学名もしくは和名の各々を指す。
シノニム (異名) synonym 異名の項を参照。
古参異名 (シニアシノニム) senior synonym 複数の異名の中で、最初に設立されたもの。
新参異名 (ジュニアシノニム) junior synonym 複数の異名の中で、最初に設立された異名を除いたもの。
同名 (ホモニム) homonym 異なるタクサに与えられた同一の学名もしくは和名のことを指す。
ホモニム (同名) homonym 同名の項を参照。
記相 diagnosis (複数 daignoses) ある分類群を近縁の分類群から容易に識別することを目的として、そのために必要な分類形質を要約した文章。
標徴 characteristics 分類の指標となる特徴もしくは形質。
タイプ
タイプ標本 type specimen タイプを構成する標本。狭義では担名タイプ (ホロタイプ、シンタイプ、レクトタイプ、ネオタイプ) の標本を指すが、広義ではパラタイプやパラレクトタイプも含んだ標本を指す。
担名タイプ name-bearing type ある名義タクソンの学名の適用を決定することができる客観的な参照基準を提供するもので、科においてはタイプ属、属においてはタイプ種、種においてはホロタイプ・レクトタイプ・一連のシンタイプあるいはネオタイプ。
ホロタイプ holotype ある名義種が設立されたときにその担名タイプとして指定されるか、またはその他の方法で固定された唯一の標本。
パラタイプ paratype ある名義種設立の際に引用された標本のうち、ホロタイプ以外の標本 (担名タイプではない)。
シンタイプ syntype ある名義種設立の際にホロタイプが指定されなかった場合、その論文中で引用された全ての標本 (原著者が明示して除外した標本や疑問を呈しつつ含めた標本を除く) を指す。また、担名タイプとして同時に指定された複数の標本を指す。一連のシンタイプはひとまとまりで一つの担名タイプを構成する。
レクトタイプ lectotype 一連のシンタイプを担名タイプとして設立された種において、設立後にシンタイプの中から唯一の担名タイプとして指定された標本。レクトタイプに指定されなかった残りの標本はパラレクトタイプとなる (パラレクトタイプは担名タイプではない)。
ネオタイプ neotype ある名義種を客観的に定義する必要がありながらその担名タイプ (ホロタイプ、全てのシンタイプ、レクトタイプまたはそれ以前に指定されたネオタイプ) が全く存在しないと信じられる場合に、担名タイプとして新たに指定される唯一の標本。
タイプ産地 type locality ある名義種の担名タイプ (標本) が採集された場所。
サンゴの類型
有藻性サンゴ zooxanthellate coral サンゴのうち褐虫藻が共生するもの。ヒドロ虫綱アナサンゴモドキ科の全種、花虫綱八放サンゴ亜綱の一部の種、花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目の種の約半分およびスナギンチャク目の一部の種が含まれる。本サンゴ図鑑で扱うのはこの有藻性サンゴである。
有藻性イシサンゴ zooxanthellate scleractinian coral イシサンゴ目のうち褐虫藻が共生するもの。イシサンゴ目の種の約半数の種が含まれる。大部分は造礁性であるが、一部 (旧ワレクサビライシ属、ムシノスチョウジガイ属、スツボサンゴ属など) は非造礁性である。
無藻性サンゴ azooxanthellate coral サンゴのうち褐虫藻を持たないもの。
無藻性イシサンゴ azooxanthellate scleractinian coral イシサンゴ目のうち褐虫藻を持たないもの。イシサンゴ目の約半数の種が含まれる。大部分の種は非造礁性であるが、キサンゴ科のナンヨウキサンゴは造礁性である。
半有藻性イシサンゴ apozooxanthellate / facultative zooxanthellate scleractinian coral 環境条件によって褐虫藻を持ったり持たなかったりするイシサンゴ。スツボサンゴや一部のセンベイサンゴ属などがこれに該当する。
サンゴの基本用語
サンゴ coral (個々の種を表す場合は可算名詞扱い) 刺胞動物門ヒドロ虫綱および花虫綱に属し、炭酸カルシウム (アラレ石または方解石) の分泌により、連続的な骨格または微小な多数の独立した骨片を形成する種と、黒色で角質のタンパク質性骨軸を形成する種の総称。ヒドロ虫綱サンゴモドキ科の全種とウミヒドラ科の一部の種ならびにアナサンゴモドキ科の全種、花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目の全種、スナギンチャク目の一部の種、ツノサンゴ目の全種、花虫綱八放サンゴ亜綱の全種が含まれる。
サンゴ体 corallum (複数 coralla) 単体および群体の骨格部分全体。単体の場合サンゴ個体と同意。
群体 colony 無性生殖した個体が一まとまりにつながったものでサンゴ体と軟体部を含む。
芽体 anthocaulus 【クサビライシ科】 プラヌラ幼生に由来する固着性の成長段階で、キノコに類似した形態を持つ。
自由生活体 anthocyathus 【クサビライシ科】 芽体のキノコの傘にあたる部分が柄から分離して自由生活性となった成長段階。
定型成長 determinate 群体が予測可能な形態を持ち、通常は放射相称に成長し、コリンボース状や卓状のように群体の成長方向を示す明白な周辺部を持つ。
不定形成長 indeterminate 群体が固有 (内因性) の制約を持たずに成長し、 空間などの外的な要因のみに群体形が制限されている。
触手環内出芽 intratentacular budding 個体が大きくなってくびれるようにして2分裂する増殖方法。
触手環外出芽 extratentacular budding 個体の脇から新たなポリプが現れる増殖方法。
口内出芽 intrastomatous (= intra-oral) budding 【クサビライシ科】 口 (通常は初口) を取り囲む隔壁のうち、相対する位置にある一対の隔壁が癒合して仕切りとなり、口が二つに分かれる出芽方法。触手環内出芽に含まれる。
口周縁出芽 circumstomatous (= circumoral, circumstomadaeal) budding 【クサビライシ科】 口を取り囲む隔壁の一部が嵌入して、その部分に新たな口が形成される出芽方法。この出芽方法も触手環内出芽に含まれる。
縁辺出芽 peripheral budding 【クサビライシ科】 口周縁出芽のうち、新たな口がサンゴ体の縁辺近くに形成される場合をいう。
分裂溝 slit, cleft, fragmentation cleft 【クサビライシ科】 隣接する隔壁-肋ユニット間のサンゴ体壁に形成されるスリット状の割れ目。この割れ目に沿ってサンゴ体が分裂 (縦分裂) して複数の扇形の破片が形成されることにより、無性生殖を行う。
個体 individual 個虫に関連する軟体部と骨格。
ポリプ polyp 軟体部の個虫の部分を指し、共肉は含めない。
軟体部 soft body ポリプと共肉。
共肉 coenoserc ポリプ間にある共同の肉質部分。
共骨 coenosteum 個体間にある共同の骨格部分。
シーネンキム coenenchyme 共肉 (coenosarc) と共骨 (coenosteum) の両方の部分。
口盤 oral disc ポリプにおける触手環の内側で、口を取り囲む部分。
頂球 acrosphere 刺胞動物の触手先端に見られる球状の膨らみ。有藻性イシサンゴ類ではハナサンゴ科、クサビライシ科、ハナヤサイサンゴ科などの多くの種に見られる。
端帯 edge zone ポリプの一部で、莢壁外縁部に覆いかぶさった部分。
莢 calice 莢壁の内側の部分で莢壁は含めない。
莢壁 theca (複数 thecae) ポリプが入る莢の外周部分。莢壁は単純な板状の壁ではなく、近接する様々な組織と関連を持ち、関連組織に応じて細分されるが、総称して個体壁 (corallite wall) と呼ばれる場合がある。
サンゴ体壁 corallum wall 【クサビライシ科】 莢壁にあたる部分で、放射状に配列する隔壁-肋ユニットを底面近くで結びつける構造物。隔壁-肋ユニットの下部とともにサンゴ体の底面を構成する。有孔 (perforated) の場合と無孔 (solid) の場合がある。
個体壁 corallite wall サンゴ個体の周りで隆起した壁状構造物で、莢壁 (theca) と同意である場合があるが、莢壁のように構造の形態にこだわらない一般的な呼称。
莢径 calice diameter / calicular diameter 一般に、莢の中央を通る莢内壁間の最大距離。
サンゴ個体径 corallite diameter 一般に、莢の中央を通る莢壁外縁間の最大距離。
サンゴ個体 corallite 個体の骨格部分で共骨は含めない。すなわち、莢壁を含めたポリプが入る器の部分。なお、本図鑑では簡略化のためにサンゴ個体を単に個体と表記する場合がある。
中央サンゴ個体 central corallite サンゴ体中央に位置する他よりも一際大きなサンゴ個体。
中軸サンゴ個体 axial corallite 【ミドリイシ属】 突起 (枝) の頭頂部に位置するサンゴ個体。形状は概ね管状である。
放射サンゴ個体 radial corallite 【ミドリイシ属】 突起 (枝) の側面に位置するサンゴ個体。様々な形状があり、種同定の重要な形質の一つである。
突出型サンゴ個体 exsert type corallite / exsert corallite 【コモンサンゴ属】 共骨面上に突出したサンゴ個体。
埋没型サンゴ個体 immersed type corallite / immersed corallite 【コモンサンゴ属】 共骨面下に埋没したサンゴ個体。
単口 monocentric 一つのサンゴ個体に一つの口および軸柱を持つ状態。
多口 polycentric 一つのサンゴ個体に複数の口および軸柱を持つ状態。
初口 primary stoma (mouth) 【クサビライシ科】 サンゴ体に最初に形成される口。
二次口 secondary stomata (mouths) 【クサビライシ科】 初口の周囲に二次的に形成される口。
単口性 monostomatous or monocentric 【クサビライシ科】 単一の口を持つサンゴ体。
多口性 polystonatous of polycentric 【クサビライシ科】 複数の口を持つサンゴ体。
サンゴ体の形状
塊状 massive 群体の形状で、基盤に固着し、群体長径に対する高さの比が 1/4 以上のもの。
被覆状 encrusting 群体の形状で、基盤を被覆し、群体長径に対する高さの比が 1/4 未満のもの。
被覆板状 encrusting plate 群体の形状で、被覆状の群体周辺に短い板状の張り出しを持つもの。
板状 plate shaped 群体の形状で、基盤から板状に張り出したもの。ミドリイシ属では、基盤から水平方向に伸びた主枝がほぼ隙間なく癒合して板のように広がった群体形。側枝の先端が立ち上がった直立枝は非常に短いか見られない。
葉状 foliaceous 群体の形状で、基盤から葉のように薄く幅広く伸びたもの。単葉、複葉、渦巻き状など形状は様々。
楔状 cuneiform 群体の形状で、楔状の扁平で太い突起が多方向に伸びて、ドーム型や半球形になるもの。
指状 digitate 群体の形状で、被覆状ないし板状の基部から円筒形や円錐形の指状の突起が分岐せずに直立したもの。
樹木状 arborescent 群体の形状で、樹木のような群体形をなすもの。ミドリイシ属では、比較的太い枝が広い間隔で分岐したもので、鹿角状 (staghorn) とも呼ばれる。
卓状 table / tabular 群体の形状で、基盤から立ち上がった基部を中心に水平方向に放射状に広がる板状の張り出しを持つもの。ミドリイシ属では、群体中央の基盤から立ち上がった幹から放射水平状に張り出した主枝が網目状に分枝・癒合しながら伸びると同時に、側枝の先端が次々と短く直立した群体形。多数の直立枝が短く同じ高さで並ぶため、群体上面が平坦なテーブルのような形状になる。
樹木卓状 arborescent table 【ミドリイシ属】 卓状群体の中で特に直立枝が長く伸び分枝もあるもの。水平枝は癒合して板状になる。
コリンボース状 corymbose 【ミドリイシ属】 群体の形状で、群体中央の固着部から主枝が放射水平状に伸びた後、側枝の先端が垂直方向へ反り上がった群体形。直立枝は卓状よりも長く伸び分枝も見られるため、群体上面はドーム状に盛り上がった形状になる。
芝草コリンボース状 caespito corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状群体の中で特に分枝が多いもの。水平枝の癒合が弱い群体では根元から折れやすく、破片分散した群体が不定形成長することがある。
卓コリンボース状 tabular corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状の群体が水平方向に平たく成長して、概形が卓状のようになった群体形。水平枝がほとんど癒合しない点が卓状と異なる。
コリンボース指状 digitate corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状の群体で、直立枝が指状のもの。直立枝は僅かに分岐することもある。
樹木コリンボース状 arborescent corymbose 【ミドリイシ属】 群体中央部から放射状に伸張した樹木状群体。水平枝の癒合は弱く、板状にならない。
被覆指状 digitate encrusting 【ミドリイシ属】 被覆状の付着基部から円筒形や円錐形の指状突起が分枝せずに直立したもの。
洗瓶ブラシ状 hispidose 【ミドリイシ属】 群体の形状で、3次側枝以上が分枝し、瓶を洗うブラ シのような形状になった群体形。
洗瓶ブラシ板状 hispidose plate 【ミドリイシ属】 洗瓶ブラシ状の群体が水平方向に薄く広がったもの。水深が深い場所で見られる。
芝草状 caespitose 【ミドリイシ属】 比較的細い枝が狭い間隔で分枝した群体形。
芝草樹木状 caespitose-arborescent 【ミドリイシ属】 比較的細い枝が狭い間隔で分岐して長く伸びた群体形。
塊樹木状 massive arborescent 【ミドリイシ属】 塊状の幹を持った不規則で太い樹木状の群体形。
分枝 branching 群体の樹木状部の枝分かれを指し、主枝 (main branch) や基部から分枝することを1次分枝 (primary branching)、1次分枝で生じた枝 (1次側枝) から分枝することを2次分枝 (secondary branching)、2次分枝で生じた枝 (2次側枝) から分枝することを3次分枝 (tertiary branching) という具合に、連続する分枝の次数を数える。ミドリイシ属 Acropora では分枝の前後で枝のサイズまたは形状が異なる分枝の次数を数える。分枝した枝が融合して板状や網目状などの基部を形成した場合は、この基部から再び1次分枝が始まる。
第1分岐 primary branching 【ミドリイシ属】 固着部からの分岐を除く1番目の分岐。ただし、被覆状から突出する分岐は第一分岐に数える。第1・第2分岐は共にほぼ同じ長さと角度で軸枝から分岐しており、群体の概観を左右する大きめの枝である。
第2分岐 secondary branching 【ミドリイシ属】 第1分岐を軸枝とする2番目の分岐。第1・第2分岐は共にほぼ同じ長さと角度で軸枝から分岐しており、群体の概観を左右する大きめの枝である。
第3分岐 tertiary branching 【ミドリイシ属】 第2分岐を軸枝とする3番目の分岐。第3分岐あるいはそれ以上の次数の分岐は、第1・第2分岐とは明らかにサイズや形状が不連続で、群体の概観には影響しない小枝である。洗瓶ブラシ状群体は第3分岐以上が発達する群体形の典型。
付着基部 attachment base 群体 (サンゴ体) の中で、海底基盤に付着する底面部分を指す。特に底面からサンゴ体を立ち上げる場合に用いられる。
サンゴ個体の配列
プロコイド plocoid サンゴ個体が莢壁を共有せずに互いに独立して離れて並ぶ個体配列様式。
ファセロイド phaceroid サンゴ個体が枝状に伸長し、個体同士が著しく離れた個体配列様式。
セリオイド cerioid サンゴ個体が莢壁を共有して互いに接して並ぶ個体配列様式。
サムナステロイド thamnasteroid 莢壁がなく隔壁と肋の区別がない状態で互いのサンゴ個体がつながった個体配列様式。
フラベロイド flabelloid サンゴ個体が単一の列に並ぶ配列様式。サンゴ体は基部が小さく成長につれて扁平な扇状になる。ふつう単体サンゴに用いられるが、フラベロメアンドロイド型の成長初期の群体に用いられることもある。
メアンドロイド meandroid サンゴ個体が畝状に並行する莢壁間の谷に並び、隣接する谷の個体との間で莢壁を共有する個体配列様式。
フラベロ・メアンドロイド flabello-meandroid サンゴ個体が畝状に並行する莢壁間の谷に並ぶが、隣接する谷の個体と莢壁を共有しない個体配列様式。
ファセロ・メアンドロイド phacero-meandroid サンゴ個体はフラベロ・メアンドロイドと同様な配列であるが、ファセロイドの様にサンゴ個体が枝状に伸長する。
ハイドノフォロイド hydnophoroid 【イボサンゴ属など】 円錐形または短い尾根状のモンティクルを囲むように個体が配列する様式。特にイボサンゴ属 Hydnophora で顕著にみられる。
骨格の構造
トラベキュラ trabecula (複数 trabeculae) 骨格の骨組みとなる石灰質の束 (糸) 状組織で、共骨、莢壁、隔壁、軸柱、付属突起などの形成に関わる。
シナプティキュラ synapticula (複数 synapticulae) 隔壁や肋、トラベキュラ間を個体の成長軸に対して垂直方向に連結する束 (棒) 状繊維組織。
シナプティキュラ輪 synapticular ring シナプティキュラがつくる同心円状構造で、隔壁内縁部や莢壁近くに見られる。
複合シナプティキュラ compound synapticulae 【クサビライシ科】 隣接する隔壁間を結ぶ一連の棒状の構造物で、クサビライシ科の固有派生形質である。他の多くのイシサンゴ類の科で見られるシナプティキュラ (=単純シナプティキュラ simple synapticulae) と相同ではないとされる。
モンティクル monticule (複数 monticulea / monticules) 隣接する個体間に生じる円錐状構造物。イボサンゴ属 Hydnophora のものは hydnophore protuberance または hydnophoroid protuberance とも呼ばれる。
マージノテカ marginotheca 単体サンゴの側面や群体サンゴの底面に生じる薄皮状の石灰質組織で、同心円状の皺に見える場合が多い。
エピテカ epitheca 無藻性単体イシサンゴ全般 (一部、ハナサンゴ属のようなファセロイド型群体イシサンゴも含む) の莢壁外縁部、もしくは有藻性群体イシサンゴの基盤固着部に発達する薄皮状の石灰質膠着構造。内部にトラベキュラを持たないことで、マージノテカと区別される。
コリン colline 共骨上の個体間に生じる畝状隆起構造物。
肋 costa サンゴ個体の隔壁から莢壁の外側に伸びた畝状の部分。
肋状 costate 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘間が板状に癒合するが、板上に棘が残っているもの。
歯 tooth (複数 teeth) /dent 隔壁や肋上に生じる比較的大型の突起。
鋸歯状 dentate 隔壁や肋、莢壁などの上縁に鋸歯が並んだ状態。
鋸歯 dentation 隔壁や肋、莢壁などの上縁に形成される鋸歯状ないし櫛歯状の構造。
網目状共骨 reticulum 多孔質な網目状の共骨で、ミドリイシ科やハマサンゴ属などでみられる。
網目状 reticulate 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘の基部が不規則に癒合し網目状になったもの。棘は不規則に散在する。
棘が連なる網目状 reticulate, lines of spinules 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、網目状の共骨から棘が突出してライン状に連なったもの。
棘が連なる肋状 costae with spinules 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘間が板状に癒合するが、板上に棘が残っているもの。
棘 spinule / spine (コモンサンゴ属では spinule を用いる) 共骨もしくは付属突起上に生じる微細な突起。コモンサンゴ属では直径 0.1 mm 前後の針状、棒状もしくは薄片状の微細な突起を指す。ミドリイシ属では単一棘、叉状棘、細分棘、側偏棘などの形状を有する。
単一棘 simple spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が分岐しない単純なもの。
単一尖端棘 single pointed spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が尖った単一棘。
単一鈍端棘 single blunt spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が尖らない単一棘。
叉状棘 forked spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が叉状に分岐したもの。
細分棘 elaborate spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が3本以上に分岐したもの。
側偏棘 laterally flattened spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面にみられる微細な棘で、板状・扁平になったもの。
側偏細分棘 laterally flattened elaborate spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が3本以上に分岐し、板状・扁平になったもの。
蛇行細分棘 meandroid elaborate spinule 【ニオウミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、蛇行しながら一列に並んだ細分棘。
疣状突起 verruca (複数 verrucae) 群体表面に見られるイボ状の突起。コモンサンゴ属では莢径よりも大きくおよそ 5 mm 以下で、ドーム状を成し、通常上半面には個体は分布しない。
大瘤状突起 mound 【コモンサンゴ属】 およそ直径 2 cm 以上の瘤状に盛り上がった大型の突起。
小瘤状突起 nodule 【コモンサンゴ属】 直径 1 cm 前後の瘤状に盛り上がった小型の突起。
粒状突起 tubercle / tuberculum (複数 tubercula) / tubercula (複数 tuberculae) 【コモンサンゴ属】 莢径よりも大きくおよそ 5 mm 以下の突起で形や大きさは不揃いな場合が多く、しばしば上半面に個体が分布する。
細粒状突起 thin tubercula 【コモンサンゴ属】 共骨由来の微小な突起で、棘よりも明瞭に大きく莢径よりも幅狭い、後に粒状突起や個体壁に成長する。形状は霜柱状突起と区別できない場合があるが、霜柱状突起に比べて分布や大きさ、ならびに形も不均一である。
霜柱状突起 papilla (複数 papillae) 【コモンサンゴ属】 トラベキュラが共骨表面に現れた微小な突起で、一般に棘よりも大きく莢径よりも幅狭い。ドーム状、円柱状など形態は様々で、コモンサンゴ属の一部にみられる。
畝状突起 ridge 【コモンサンゴ属】 太い畝状の隆起構造物で、隆起上には個体が分布する。個体間に形成される細い畝状構造物であるコリンとは区別される。
莢壁冠 thecal crown 【コモンサンゴ属】 霜柱状突起が個体の周囲で冠状に並んだもの。
骨格の構造(枝)
主枝 main branch 付着基部から最初に分かれた主要な枝。
幹 stem 主枝の中で特に太いもの、または不定形のもの。
側枝 sub branch / side branch 群体の樹木状部で分枝した枝を指し、主枝 (main branch) や基部から1次分枝した枝を1次側枝 (primary sub/side branch)、1次側枝から2次分枝した枝を2次側枝 (secondary sub/side branch)、2次側枝から3次分枝した枝を3次側枝 (tertiary sub/side branch) という具合に連続する枝の次数を数える。末端の枝は末枝 (terminal branch) と呼ぶ。ミドリイシ属では分枝前後で枝のサイズまたは形状が異なる枝の次数を数える。洗瓶ブラシ状の種では3次側枝以上が生じ、末枝は低次の枝とはサイズや形状が大きく異なる小枝 (branchlet) となるため放射個体と見間違えやすいが、小枝の側面に小さな放射個体が見られることで区別できる。
末枝 terminal branch 末端に位置する枝。梢。
骨格の構造(サンゴ個体内部)
軸柱 columella (複数 columellae) 中央窩内に見られる針状、杭状、板状もしくはスポンジ状構造物で、トラベキュラや接合した隔壁により形成される。
パリ palus (複数 pali) 隔壁内縁の先に生じる杭状突起で、隔壁とは完全に独立した構造物。主にハマサンゴ属のものを指す。
パリ環 palar ring パリが中央窩を取り囲むように並ぶ円状構造で、特に高く目立つものはパリ冠 (palar crown) ともいう。
パリ状冠 paliform crown 顕著なパリ状葉が軸柱の外側を円状に規則的に囲んだもの。
パリ状葉 paliform lobe 隔壁の一部で、隔壁内縁に生じる葉状突起。隔壁と融合したパリとの区別が難しく、外見で隔壁と融合しているように見える内縁突起はパリ状葉とみなす。ハナガササンゴ属や旧キクメイシ科などで見られる。
中央窩 central fossa パリまたは隔壁内縁で囲まれた莢中央部の窪み。
小輻体 (しょうふくたい) radius (複数 radii) 【ハマサンゴ属】 中央窩内に見られる構造で、軸柱とパリまたは隔壁内縁をつなぐ細い放射状の構造物。
骨格の構造 (隔壁)
隔壁 septum (複数 septa) 莢の中心に向かって放射状に配列する薄板状もしくは鋸歯状などの構造物。隔壁の枚数や形状は分類群によって相違が著しいが、その配列や形状は重要な分類形質として用いられる。一般に6枚の1次隔壁の間に6枚の2次隔壁が生じ、これらの間に12枚の3次隔壁、同様に24枚の4次隔壁、48枚の5次隔壁と続くが、分類群によっては3次隔壁以降を持たないものや、次数の判別が難しいもの、ハナガササンゴ型配列やキサンゴ型配列のように特殊な形態を示すものがある。
1次隔壁 primary septum (複数 primary septa) 最初に形成される6枚の隔壁で、他に比べて大きい (長い) 場合が多い。
2次隔壁 secondary septum (複数 secondary septa) 1次隔壁の間に形成される6枚の隔壁。
3次隔壁 tertiary septum (複数 tertiary septa) 1次隔壁と2次隔壁の間に形成される12枚の隔壁。
方向隔壁 directive / directive septum 1次隔壁の中で個体の左右対称軸上にある1対の隔壁で、特にミドリイシ科やハマサンゴ属では明瞭に判別できる。
シナプティキュロテカ synapticulotheca 莢壁の 1 形態で、シナプティキュラの発達によってつくられた壁状構造。
セプトテカ septotheca 莢壁の 1 形態で、隔壁-肋の一部が肥大して、隣接する隔壁-肋と密着することでつくられた壁状構造。
完全隔壁 complete septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚が全て揃った隔壁。
規則的隔壁 regular septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚の長さがほぼ揃った隔壁。
不規則的隔壁 irregular septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚の長さが顕著に異なった隔壁。
不完全隔壁 incomplete septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚全てが揃わない不完全な隔壁。
鋸歯状隔壁 dentate septum 【コモンサンゴ属】 歯 (歯状突起) が莢奥に向かって列生した隔壁。
板状隔壁 plate-shaped septum 【コモンサンゴ属】 列状に並んだ歯 (歯状突起) が互いに接合して板状になった隔壁。
準板状隔壁 semi-plate shaped 【コモンサンゴ属】 莢奥に向かって列生した歯 (歯状突起) が部分的に接合して板状になった隔壁。
ハナガササンゴ型配列 gonioporoid pattern 【ハナガササンゴ属】 ハナガササンゴ属 Goniopora でみられる特有の隔壁配列様式。
ハマサンゴ型配列 Porites septal pattern 【ハマサンゴ属】 ハマサンゴ属 Porites に特有の隔壁配列様式。
三幅対 (さんぷくつい) triplet 【ハマサンゴ属】 12枚の隔壁のうち、腹側方向隔壁とその左右各1枚の側隔壁からなるひとまとまりの隔壁。内端が離れる場合、内端が融合する場合、内端がシナプティキュラでつながり三叉 (trident) 状になる場合の3通りが主に見られる。
側隔壁 lateral / lateral septum 【ハマサンゴ属】 12枚の隔壁のうち、方向隔壁以外のもの。
側隔壁対 lateral pair 【ハマサンゴ属】 背側方向隔壁に続く左右各2対の側隔壁。各対を構成する2枚の隔壁の内縁部はふつう融合する。
隔壁-肋ユニット septo-costal unit 【クサビライシ科】 一枚の隔壁と、それに対応する肋で構成される板状のユニット。隣接するユニットとは複合シナプティキュラとサンゴ体壁で結合する。
口間隔壁 interstomatous septa 【クサビライシ科】 複数の口を結ぶ隔壁。クサビライシ科では肋はサンゴ体の裏面に形成されるため、septo-costae ではなくこの用語を用いる。
触手葉 tentacular lobe 【クサビライシ科】 隔壁の内縁 (口側の端) に形成される葉状の突起で、触手の位置に対応する。
キサンゴ型配列 pourtalès plan 無藻性イシサンゴ類のツボサンゴ属やキサンゴ属でみられる特有の隔壁配列様式。有藻性イシサンゴ類 (半有藻性イシサンゴ類) ではスツボサンゴがこの配列を有する。
隔壁間隙 interseptal loculus (複数 loculi) 隣接する隔壁間の隙間。
歯状突起 denticle 隔壁上縁に見られる突起で、ハマサンゴ属などではパリ環と同心円状に形成されることが多い。
ミドリイシ属の放射サンゴ個体の形状
管状サンゴ個体 tubular corallite 【ミドリイシ属】 莢壁が円筒形の管のように長く伸びた形状の放射サンゴ個体。
単純管状サンゴ個体、円形開口 simple tubular corallite, round opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁は膨らみがなく直線的。開口部は円形で縁は角張っているもの。
丸い管状サンゴ個体、円形開口 rounded tubular corallite, round opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁は丸く膨らみ、開口部は円形で縁は丸いもの。
管状サンゴ個体、傾斜開口 tubular corallite, oblique opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、開口部が内側に傾斜したもの。開口部は楕円形になるので、楕円開口 (oval opening) とも呼ばれる。
管状サンゴ個体、鼻形開口 tubular corallite, nariform opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、開口部が人の鼻の形をしたもの。開口部は枝に近接しない (枝に近接したものは鼻状サンゴ個体)。
単純管状サンゴ個体、欠刻開口 simple tubular corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 単純管状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。大きく欠刻した個体は残った莢壁が棘のように見える。
丸い管状サンゴ個体、欠刻開口 rounded tubular corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 丸い管状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。内側莢壁が完全に欠刻したものは円形唇の唇弁状のように見える。
密着管状サンゴ個体 appressed tubular corallite 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体の形状で、枝に圧着した管状のもの。
管状サンゴ個体、耳形開口 tubular corallite, cochleariform opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁の縁に耳たぶのような膨らみがあるもの。莢壁は薄く、開口部がラッパ状に開くこともある。
鼻状サンゴ個体 nariform corallite 【ミドリイシ属】 開口部が枝に近接し、外側が丸みを帯びて人の鼻の形をした形状の放射サンゴ個体。
鼻状サンゴ個体、円形開口 nariform corallite, round opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部が円形または楕円形のもの。
鼻状サンゴ個体、細長開口 nariform corallite, elongate opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部が細長く伸びたもの。
鼻状サンゴ個体、欠刻開口 nariform corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。
唇弁状サンゴ個体 labellate corallite 【ミドリイシ属】 莢壁開口部の外唇が張り出した形状の放射サンゴ個体。
唇弁状サンゴ個体、円形唇 labellate corallite, rounded lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部が肥厚して丸みを帯びたもの。
唇弁状サンゴ個体、直立唇 labellate corallite, straight lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部が上方に長く伸びたもの。
唇弁状サンゴ個体、水平唇 labellate, horizontal lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部は薄い四角形または半円形になり、高さが水平に揃って張り出す。特に外唇部が大きく広がったものは、張り開き状または朝顔形開口 (flaring lip opening) とも呼ばれる。
唇弁状サンゴ個体、耳形 labellate, cochleariform 【ミドリイシ属】耳の形状をした唇弁状個体で、莢壁の縁に耳たぶのような膨らみがある。特に外唇部が大きく広がったものは、張り開き状または朝顔形開口 (flaring lip opening) とも呼ばれる。
円錐形サンゴ個体 conical corallite 【ミドリイシ属】 円錐形の放射サンゴ個体。ニオウミドリイシ属に多い。
埋没状サンゴ個体 immersed corallite 【ミドリイシ属】 共骨中に完全に埋没し、莢壁が全く突出しない放射サンゴ個体。
半埋没状サンゴ個体 sub-immersed corallite 【ミドリイシ属】 共骨中に埋没するが、莢壁が僅かに突出する放射サンゴ個体。
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1次隔壁 primary septum (複数 primary septa) 最初に形成される6枚の隔壁で、他に比べて大きい (長い) 場合が多い。
2次隔壁 secondary septum (複数 secondary septa) 1次隔壁の間に形成される6枚の隔壁。
3次隔壁 tertiary septum (複数 tertiary septa) 1次隔壁と2次隔壁の間に形成される12枚の隔壁。
aff. affinis 種の位置が特定できない場合に属と種名の間に入れる用語。あるタクソンに似ているが種が異なるという意味を持つ。
cf. confer 種の位置が特定できない場合に属と種名の間に入れる用語。あるタクソンに単に似ているという意味を持つ。
あ行
網目状 reticulate 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘の基部が不規則に癒合し網目状になったもの。棘は不規則に散在する。
網目状共骨 reticulum 多孔質な網目状の共骨で、ミドリイシ科やハマサンゴ属などでみられる。
疣状突起 verruca (複数 verrucae) 群体表面に見られるイボ状の突起。コモンサンゴ属では莢径よりも大きくおよそ 5 mm 以下で、ドーム状を成し、通常上半面には個体は分布しない。
異名 (シノニム) synonym 同一のタクソンに与えられた複数の学名もしくは和名の各々を指す。
隠蔽種 cryptic species 形態的に区別できず同一の種として扱われているが、本来は別種であるもの。産卵時期の違いや分子系統学的手法などで、その存在が明らかになることがある。
畝状突起 ridge 【コモンサンゴ属】 太い畝状の隆起構造物で、隆起上には個体が分布する。個体間に形成される細い畝状構造物であるコリンとは区別される。
エピテカ epitheca 無藻性単体イシサンゴ全般 (一部、ハナサンゴ属のようなファセロイド型群体イシサンゴも含む) の莢壁外縁部、もしくは有藻性群体イシサンゴの基盤固着部に発達する薄皮状の石灰質膠着構造。内部にトラベキュラを持たないことで、マージノテカと区別される。
円錐形サンゴ個体 conical corallite 【ミドリイシ属】 円錐形の放射サンゴ個体。ニオウミドリイシ属に多い。
縁辺出芽 peripheral budding 【クサビライシ科】 口周縁出芽のうち、新たな口がサンゴ体の縁辺近くに形成される場合をいう。
大瘤状突起 mound 【コモンサンゴ属】 およそ直径 2 cm 以上の瘤状に盛り上がった大型の突起。
か行
塊樹木状 massive arborescent 【ミドリイシ属】 塊状の幹を持った不規則で太い樹木状の群体形。
塊状 massive 群体の形状で、基盤に固着し、群体長径に対する高さの比が 1/4 以上のもの。
隔壁 septum (複数 septa) 莢の中心に向かって放射状に配列する薄板状もしくは鋸歯状などの構造物。隔壁の枚数や形状は分類群によって相違が著しいが、その配列や形状は重要な分類形質として用いられる。一般に6枚の1次隔壁の間に6枚の2次隔壁が生じ、これらの間に12枚の3次隔壁、同様に24枚の4次隔壁、48枚の5次隔壁と続くが、分類群によっては3次隔壁以降を持たないものや、次数の判別が難しいもの、ハナガササンゴ型配列やキサンゴ型配列のように特殊な形態を示すものがある。
隔壁間隙 interseptal loculus (複数 loculi) 隣接する隔壁間の隙間。
隔壁-肋ユニット septo-costal unit 【クサビライシ科】 一枚の隔壁と、それに対応する肋で構成される板状のユニット。隣接するユニットとは複合シナプティキュラとサンゴ体壁で結合する。
芽体 anthocaulus 【クサビライシ科】 プラヌラ幼生に由来する固着性の成長段階で、キノコに類似した形態を持つ。
管状サンゴ個体 tubular corallite 【ミドリイシ属】 莢壁が円筒形の管のように長く伸びた形状の放射サンゴ個体。
管状サンゴ個体、傾斜開口 tubular corallite, oblique opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、開口部が内側に傾斜したもの。開口部は楕円形になるので、楕円開口 (oval opening) とも呼ばれる。
管状サンゴ個体、鼻形開口 tubular corallite, nariform opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、開口部が人の鼻の形をしたもの。開口部は枝に近接しない (枝に近接したものは鼻状サンゴ個体)。
管状サンゴ個体、耳形開口 tubular corallite, cochleariform opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁の縁に耳たぶのような膨らみがあるもの。莢壁は薄く、開口部がラッパ状に開くこともある。
完全隔壁 complete septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚が全て揃った隔壁。
キサンゴ型配列 pourtalès plan 無藻性イシサンゴ類のツボサンゴ属やキサンゴ属でみられる特有の隔壁配列様式。有藻性イシサンゴ類 (半有藻性イシサンゴ類) ではスツボサンゴがこの配列を有する。
記相 diagnosis (複数 daignoses) ある分類群を近縁の分類群から容易に識別することを目的として、そのために必要な分類形質を要約した文章。
規則的隔壁 regular septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚の長さがほぼ揃った隔壁。
莢 calice 莢壁の内側の部分で莢壁は含めない。
莢径 calice diameter / calicular diameter 一般に、莢の中央を通る莢内壁間の最大距離。
共骨 coenosteum 個体間にある共同の骨格部分。
共肉 coenoserc ポリプ間にある共同の肉質部分。
莢壁 theca (複数 thecae) ポリプが入る莢の外周部分。莢壁は単純な板状の壁ではなく、近接する様々な組織と関連を持ち、関連組織に応じて細分されるが、総称して個体壁 (corallite wall) と呼ばれる場合がある。
莢壁冠 thecal crown 【コモンサンゴ属】 霜柱状突起が個体の周囲で冠状に並んだもの。
棘 spinule / spine (コモンサンゴ属では spinule を用いる) 共骨もしくは付属突起上に生じる微細な突起。コモンサンゴ属では直径 0.1 mm 前後の針状、棒状もしくは薄片状の微細な突起を指す。ミドリイシ属では単一棘、叉状棘、細分棘、側偏棘などの形状を有する。
棘が連なる網目状 reticulate, lines of spinules 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、網目状の共骨から棘が突出してライン状に連なったもの。
棘が連なる肋状 costae with spinules 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘間が板状に癒合するが、板上に棘が残っているもの。
鋸歯 dentation 隔壁や肋、莢壁などの上縁に形成される鋸歯状ないし櫛歯状の構造。
鋸歯状 dentate 隔壁や肋、莢壁などの上縁に鋸歯が並んだ状態。
鋸歯状隔壁 dentate septum 【コモンサンゴ属】 歯 (歯状突起) が莢奥に向かって列生した隔壁。
楔状 cuneiform 群体の形状で、楔状の扁平で太い突起が多方向に伸びて、ドーム型や半球形になるもの。
群体 colony 無性生殖した個体が一まとまりにつながったものでサンゴ体と軟体部を含む。
口間隔壁 interstomatous septa 【クサビライシ科】 複数の口を結ぶ隔壁。クサビライシ科では肋はサンゴ体の裏面に形成されるため、septo-costae ではなくこの用語を用いる。
口周縁出芽 circumstomatous (= circumoral, circumstomadaeal) budding 【クサビライシ科】 口を取り囲む隔壁の一部が嵌入して、その部分に新たな口が形成される出芽方法。この出芽方法も触手環内出芽に含まれる。
口内出芽 intrastomatous (= intra-oral) budding 【クサビライシ科】 口 (通常は初口) を取り囲む隔壁のうち、相対する位置にある一対の隔壁が癒合して仕切りとなり、口が二つに分かれる出芽方法。触手環内出芽に含まれる。
口盤 oral disc ポリプにおける触手環の内側で、口を取り囲む部分。
古参異名 (シニアシノニム) senior synonym 複数の異名の中で、最初に設立されたもの。
個体 individual 個虫に関連する軟体部と骨格。
個体壁 corallite wall サンゴ個体の周りで隆起した壁状構造物で、莢壁 (theca) と同意である場合があるが、莢壁のように構造の形態にこだわらない一般的な呼称。
コリン colline 共骨上の個体間に生じる畝状隆起構造物。
コリンボース状 corymbose 【ミドリイシ属】 群体の形状で、群体中央の固着部から主枝が放射水平状に伸びた後、側枝の先端が垂直方向へ反り上がった群体形。直立枝は卓状よりも長く伸び分枝も見られるため、群体上面はドーム状に盛り上がった形状になる。
コリンボース指状 digitate corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状の群体で、直立枝が指状のもの。直立枝は僅かに分岐することもある。
さ行
細分棘 elaborate spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が3本以上に分岐したもの。
細粒状突起 thin tubercula 【コモンサンゴ属】 共骨由来の微小な突起で、棘よりも明瞭に大きく莢径よりも幅狭い、後に粒状突起や個体壁に成長する。形状は霜柱状突起と区別できない場合があるが、霜柱状突起に比べて分布や大きさ、ならびに形も不均一である。
叉状棘 forked spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が叉状に分岐したもの。
サムナステロイド thamnasteroid 莢壁がなく隔壁と肋の区別がない状態で互いのサンゴ個体がつながった個体配列様式。
サンゴ coral (個々の種を表す場合は可算名詞扱い) 刺胞動物門ヒドロ虫綱および花虫綱に属し、炭酸カルシウム (アラレ石または方解石) の分泌により、連続的な骨格または微小な多数の独立した骨片を形成する種と、黒色で角質のタンパク質性骨軸を形成する種の総称。ヒドロ虫綱サンゴモドキ科の全種とウミヒドラ科の一部の種ならびにアナサンゴモドキ科の全種、花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目の全種、スナギンチャク目の一部の種、ツノサンゴ目の全種、花虫綱八放サンゴ亜綱の全種が含まれる。
サンゴ個体 corallite 個体の骨格部分で共骨は含めない。すなわち、莢壁を含めたポリプが入る器の部分。なお、本図鑑では簡略化のためにサンゴ個体を単に個体と表記する場合がある。
サンゴ個体径 corallite diameter 一般に、莢の中央を通る莢壁外縁間の最大距離。
サンゴ体 corallum (複数 coralla) 単体および群体の骨格部分全体。単体の場合サンゴ個体と同意。
サンゴ体壁 corallum wall 【クサビライシ科】 莢壁にあたる部分で、放射状に配列する隔壁-肋ユニットを底面近くで結びつける構造物。隔壁-肋ユニットの下部とともにサンゴ体の底面を構成する。有孔 (perforated) の場合と無孔 (solid) の場合がある。
三幅対 (さんぷくつい) triplet 【ハマサンゴ属】 12枚の隔壁のうち、腹側方向隔壁とその左右各1枚の側隔壁からなるひとまとまりの隔壁。内端が離れる場合、内端が融合する場合、内端がシナプティキュラでつながり三叉 (trident) 状になる場合の3通りが主に見られる。
シーネンキム coenenchyme 共肉 (coenosarc) と共骨 (coenosteum) の両方の部分。
軸柱 columella (複数 columellae) 中央窩内に見られる針状、杭状、板状もしくはスポンジ状構造物で、トラベキュラや接合した隔壁により形成される。
歯状突起 denticle 隔壁上縁に見られる突起で、ハマサンゴ属などではパリ環と同心円状に形成されることが多い。
シナプティキュラ synapticula (複数 synapticulae) 隔壁や肋、トラベキュラ間を個体の成長軸に対して垂直方向に連結する束 (棒) 状繊維組織。
シナプティキュラ輪 synapticular ring シナプティキュラがつくる同心円状構造で、隔壁内縁部や莢壁近くに見られる。
シナプティキュロテカ synapticulotheca 莢壁の 1 形態で、シナプティキュラの発達によってつくられた壁状構造。
シノニム (異名) synonym 異名の項を参照。
芝草コリンボース状 caespito corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状群体の中で特に分枝が多いもの。水平枝の癒合が弱い群体では根元から折れやすく、破片分散した群体が不定形成長することがある。
芝草樹木状 caespitose-arborescent 【ミドリイシ属】 比較的細い枝が狭い間隔で分岐して長く伸びた群体形。
芝草状 caespitose 【ミドリイシ属】 比較的細い枝が狭い間隔で分枝した群体形。
霜柱状突起 papilla (複数 papillae) 【コモンサンゴ属】 トラベキュラが共骨表面に現れた微小な突起で、一般に棘よりも大きく莢径よりも幅狭い。ドーム状、円柱状など形態は様々で、コモンサンゴ属の一部にみられる。
自由生活体 anthocyathus 【クサビライシ科】 芽体のキノコの傘にあたる部分が柄から分離して自由生活性となった成長段階。
種群 species group / spp. / species complex / complex 以下の複数の意味を持つ。①単なる種の集まり。②同属内の特定の種の集まり (species group)。③同定が未了の同属内の複数種で、属名の後に付けて Montipora spp. のように表記する。④種複合体 (分類学的位置決定が未了の複数の近縁種の集まり (species complex / complex)。
主枝 main branch 付着基部から最初に分かれた主要な枝。
種複合体 species complex / complex 分類学的位置決定が未了の、複数の近縁種 (隠蔽種) をひとくくりにして扱ったもの。特定の種複合体を表す場合には学名の後にこれらの語を続けて Acropora hyacinthus species complex、または A. hyacinthus complex のように表記する。
樹木コリンボース状 arborescent corymbose 【ミドリイシ属】 群体中央部から放射状に伸張した樹木状群体。水平枝の癒合は弱く、板状にならない。
樹木状 arborescent 群体の形状で、樹木のような群体形をなすもの。ミドリイシ属では、比較的太い枝が広い間隔で分岐したもので、鹿角状 (staghorn) とも呼ばれる。
樹木卓状 arborescent table 【ミドリイシ属】 卓状群体の中で特に直立枝が長く伸び分枝もあるもの。水平枝は癒合して板状になる。
準板状隔壁 semi-plate shaped 【コモンサンゴ属】 莢奥に向かって列生した歯 (歯状突起) が部分的に接合して板状になった隔壁。
小瘤状突起 nodule 【コモンサンゴ属】 直径 1 cm 前後の瘤状に盛り上がった小型の突起。
小輻体 (しょうふくたい) radius (複数 radii) 【ハマサンゴ属】 中央窩内に見られる構造で、軸柱とパリまたは隔壁内縁をつなぐ細い放射状の構造物。
触手環外出芽 extratentacular budding 個体の脇から新たなポリプが現れる増殖方法。
触手環内出芽 intratentacular budding 個体が大きくなってくびれるようにして2分裂する増殖方法。
触手葉 tentacular lobe 【クサビライシ科】 隔壁の内縁 (口側の端) に形成される葉状の突起で、触手の位置に対応する。
初口 primary stoma (mouth) 【クサビライシ科】 サンゴ体に最初に形成される口。
新参異名 (ジュニアシノニム) junior synonym 複数の異名の中で、最初に設立された異名を除いたもの。
シンタイプ syntype ある名義種設立の際にホロタイプが指定されなかった場合、その論文中で引用された全ての標本 (原著者が明示して除外した標本や疑問を呈しつつ含めた標本を除く) を指す。また、担名タイプとして同時に指定された複数の標本を指す。一連のシンタイプはひとまとまりで一つの担名タイプを構成する。
唇弁状サンゴ個体 labellate corallite 【ミドリイシ属】 莢壁開口部の外唇が張り出した形状の放射サンゴ個体。
唇弁状サンゴ個体、円形唇 labellate corallite, rounded lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部が肥厚して丸みを帯びたもの。
唇弁状サンゴ個体、水平唇 labellate, horizontal lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部は薄い四角形または半円形になり、高さが水平に揃って張り出す。特に外唇部が大きく広がったものは、張り開き状または朝顔形開口 (flaring lip opening) とも呼ばれる。
唇弁状サンゴ個体、直立唇 labellate corallite, straight lip 【ミドリイシ属】 唇弁状サンゴ個体で、外唇部が上方に長く伸びたもの。
唇弁状サンゴ個体、耳形 labellate, cochleariform 【ミドリイシ属】耳の形状をした唇弁状個体で、莢壁の縁に耳たぶのような膨らみがある。特に外唇部が大きく広がったものは、張り開き状または朝顔形開口 (flaring lip opening) とも呼ばれる。
セプトテカ septotheca 莢壁の 1 形態で、隔壁-肋の一部が肥大して、隣接する隔壁-肋と密着することでつくられた壁状構造。
セリオイド cerioid サンゴ個体が莢壁を共有して互いに接して並ぶ個体配列様式。
洗瓶ブラシ状 hispidose 【ミドリイシ属】 群体の形状で、3次側枝以上が分枝し、瓶を洗うブラ シのような形状になった群体形。
洗瓶ブラシ板状 hispidose plate 【ミドリイシ属】 洗瓶ブラシ状の群体が水平方向に薄く広がったもの。水深が深い場所で見られる。
側隔壁 lateral / lateral septum 【ハマサンゴ属】 12枚の隔壁のうち、方向隔壁以外のもの。
側隔壁対 lateral pair 【ハマサンゴ属】 背側方向隔壁に続く左右各2対の側隔壁。各対を構成する2枚の隔壁の内縁部はふつう融合する。
側枝 sub branch / side branch 群体の樹木状部で分枝した枝を指し、主枝 (main branch) や基部から1次分枝した枝を1次側枝 (primary sub/side branch)、1次側枝から2次分枝した枝を2次側枝 (secondary sub/side branch)、2次側枝から3次分枝した枝を3次側枝 (tertiary sub/side branch) という具合に連続する枝の次数を数える。末端の枝は末枝 (terminal branch) と呼ぶ。ミドリイシ属では分枝前後で枝のサイズまたは形状が異なる枝の次数を数える。洗瓶ブラシ状の種では3次側枝以上が生じ、末枝は低次の枝とはサイズや形状が大きく異なる小枝 (branchlet) となるため放射個体と見間違えやすいが、小枝の側面に小さな放射個体が見られることで区別できる。
側偏棘 laterally flattened spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面にみられる微細な棘で、板状・扁平になったもの。
側偏細分棘 laterally flattened elaborate spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が3本以上に分岐し、板状・扁平になったもの。
た行
第1分岐 primary branching 【ミドリイシ属】 固着部からの分岐を除く1番目の分岐。ただし、被覆状から突出する分岐は第一分岐に数える。第1・第2分岐は共にほぼ同じ長さと角度で軸枝から分岐しており、群体の概観を左右する大きめの枝である。
第2分岐 secondary branching 【ミドリイシ属】 第1分岐を軸枝とする2番目の分岐。第1・第2分岐は共にほぼ同じ長さと角度で軸枝から分岐しており、群体の概観を左右する大きめの枝である。
第3分岐 tertiary branching 【ミドリイシ属】 第2分岐を軸枝とする3番目の分岐。第3分岐あるいはそれ以上の次数の分岐は、第1・第2分岐とは明らかにサイズや形状が不連続で、群体の概観には影響しない小枝である。洗瓶ブラシ状群体は第3分岐以上が発達する群体形の典型。
タイプ産地 type locality ある名義種の担名タイプ (標本) が採集された場所。
タイプ標本 type specimen タイプを構成する標本。狭義では担名タイプ (ホロタイプ、シンタイプ、レクトタイプ、ネオタイプ) の標本を指すが、広義ではパラタイプやパラレクトタイプも含んだ標本を指す。
卓コリンボース状 tabular corymbose 【ミドリイシ属】 コリンボース状の群体が水平方向に平たく成長して、概形が卓状のようになった群体形。水平枝がほとんど癒合しない点が卓状と異なる。
卓状 table / tabular 群体の形状で、基盤から立ち上がった基部を中心に水平方向に放射状に広がる板状の張り出しを持つもの。ミドリイシ属では、群体中央の基盤から立ち上がった幹から放射水平状に張り出した主枝が網目状に分枝・癒合しながら伸びると同時に、側枝の先端が次々と短く直立した群体形。多数の直立枝が短く同じ高さで並ぶため、群体上面が平坦なテーブルのような形状になる。
タクソン taxon (複数 taxa) ある分類階級に位置づけられる、生物の集合のことを指し、学名の有無にかかわらない。分類群もしくは分類学的単位とも呼ばれる。一つのタクソンに与えられた学名が、種名や属名などである。
多口 polycentric 一つのサンゴ個体に複数の口および軸柱を持つ状態。
蛇行細分棘 meandroid elaborate spinule 【ニオウミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、蛇行しながら一列に並んだ細分棘。
多口性 polystonatous of polycentric 【クサビライシ科】 複数の口を持つサンゴ体。
単一鈍端棘 single blunt spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が尖らない単一棘。
単一棘 simple spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が分岐しない単純なもの。
単一尖端棘 single pointed spinule 【ミドリイシ属】 骨格表面に見られる微細な棘で、先端が尖った単一棘。
単口 monocentric 一つのサンゴ個体に一つの口および軸柱を持つ状態。
単口性 monostomatous or monocentric 【クサビライシ科】 単一の口を持つサンゴ体。
単純管状サンゴ個体、円形開口 simple tubular corallite, round opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁は膨らみがなく直線的。開口部は円形で縁は角張っているもの。
単純管状サンゴ個体、欠刻開口 simple tubular corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 単純管状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。大きく欠刻した個体は残った莢壁が棘のように見える。
端帯 edge zone ポリプの一部で、莢壁外縁部に覆いかぶさった部分。
担名タイプ name-bearing type ある名義タクソンの学名の適用を決定することができる客観的な参照基準を提供するもので、科においてはタイプ属、属においてはタイプ種、種においてはホロタイプ・レクトタイプ・一連のシンタイプあるいはネオタイプ。
中央窩 central fossa パリまたは隔壁内縁で囲まれた莢中央部の窪み。
中央サンゴ個体 central corallite サンゴ体中央に位置する他よりも一際大きなサンゴ個体。
中軸サンゴ個体 axial corallite 【ミドリイシ属】 突起 (枝) の頭頂部に位置するサンゴ個体。形状は概ね管状である。
頂球 acrosphere 刺胞動物の触手先端に見られる球状の膨らみ。有藻性イシサンゴ類ではハナサンゴ科、クサビライシ科、ハナヤサイサンゴ科などの多くの種に見られる。
粒状突起 tubercle / tuberculum (複数 tubercula) / tubercula (複数 tuberculae) 【コモンサンゴ属】 莢径よりも大きくおよそ 5 mm 以下の突起で形や大きさは不揃いな場合が多く、しばしば上半面に個体が分布する。
定型成長 determinate 群体が予測可能な形態を持ち、通常は放射相称に成長し、コリンボース状や卓状のように群体の成長方向を示す明白な周辺部を持つ。
同名 (ホモニム) homonym 異なるタクサに与えられた同一の学名もしくは和名のことを指す。
突出型サンゴ個体 exsert type corallite / exsert corallite 【コモンサンゴ属】 共骨面上に突出したサンゴ個体。
トラベキュラ trabecula (複数 trabeculae) 骨格の骨組みとなる石灰質の束 (糸) 状組織で、共骨、莢壁、隔壁、軸柱、付属突起などの形成に関わる。
な行
軟体部 soft body ポリプと共肉。
二次口 secondary stomata (mouths) 【クサビライシ科】 初口の周囲に二次的に形成される口。
ネオタイプ neotype ある名義種を客観的に定義する必要がありながらその担名タイプ (ホロタイプ、全てのシンタイプ、レクトタイプまたはそれ以前に指定されたネオタイプ) が全く存在しないと信じられる場合に、担名タイプとして新たに指定される唯一の標本。
は行
歯 tooth (複数 teeth) /dent 隔壁や肋上に生じる比較的大型の突起。
ハイドノフォロイド hydnophoroid 【イボサンゴ属など】 円錐形または短い尾根状のモンティクルを囲むように個体が配列する様式。特にイボサンゴ属 Hydnophora で顕著にみられる。
ハナガササンゴ型配列 gonioporoid pattern 【ハナガササンゴ属】 ハナガササンゴ属 Goniopora でみられる特有の隔壁配列様式。
鼻状サンゴ個体 nariform corallite 【ミドリイシ属】 開口部が枝に近接し、外側が丸みを帯びて人の鼻の形をした形状の放射サンゴ個体。
鼻状サンゴ個体、円形開口 nariform corallite, round opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部が円形または楕円形のもの。
鼻状サンゴ個体、欠刻開口 nariform corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。
鼻状サンゴ個体、細長開口 nariform corallite, elongate opening 【ミドリイシ属】 鼻状サンゴ個体で、開口部が細長く伸びたもの。
ハマサンゴ型配列 Porites septal pattern 【ハマサンゴ属】 ハマサンゴ属 Porites に特有の隔壁配列様式。
パラタイプ paratype ある名義種設立の際に引用された標本のうち、ホロタイプ以外の標本 (担名タイプではない)。
パリ palus (複数 pali) 隔壁内縁の先に生じる杭状突起で、隔壁とは完全に独立した構造物。主にハマサンゴ属のものを指す。
パリ環 palar ring パリが中央窩を取り囲むように並ぶ円状構造で、特に高く目立つものはパリ冠 (palar crown) ともいう。
パリ状冠 paliform crown 顕著なパリ状葉が軸柱の外側を円状に規則的に囲んだもの。
パリ状葉 paliform lobe 隔壁の一部で、隔壁内縁に生じる葉状突起。隔壁と融合したパリとの区別が難しく、外見で隔壁と融合しているように見える内縁突起はパリ状葉とみなす。ハナガササンゴ属や旧キクメイシ科などで見られる。
板状 plate shaped 群体の形状で、基盤から板状に張り出したもの。ミドリイシ属では、基盤から水平方向に伸びた主枝がほぼ隙間なく癒合して板のように広がった群体形。側枝の先端が立ち上がった直立枝は非常に短いか見られない。
板状隔壁 plate-shaped septum 【コモンサンゴ属】 列状に並んだ歯 (歯状突起) が互いに接合して板状になった隔壁。
半埋没状サンゴ個体 sub-immersed corallite 【ミドリイシ属】 共骨中に埋没するが、莢壁が僅かに突出する放射サンゴ個体。
半有藻性イシサンゴ apozooxanthellate / facultative zooxanthellate scleractinian coral 環境条件によって褐虫藻を持ったり持たなかったりするイシサンゴ。スツボサンゴや一部のセンベイサンゴ属などがこれに該当する。
被覆状 encrusting 群体の形状で、基盤を被覆し、群体長径に対する高さの比が 1/4 未満のもの。
被覆板状 encrusting plate 群体の形状で、被覆状の群体周辺に短い板状の張り出しを持つもの。
被覆指状 digitate encrusting 【ミドリイシ属】 被覆状の付着基部から円筒形や円錐形の指状突起が分枝せずに直立したもの。
標徴 characteristics 分類の指標となる特徴もしくは形質。
ファセロイド phaceroid サンゴ個体が枝状に伸長し、個体同士が著しく離れた個体配列様式。
ファセロ・メアンドロイド phacero-meandroid サンゴ個体はフラベロ・メアンドロイドと同様な配列であるが、ファセロイドの様にサンゴ個体が枝状に伸長する。
不完全隔壁 incomplete septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚全てが揃わない不完全な隔壁。
不規則的隔壁 irregular septum 【コモンサンゴ属】 各次数において6枚の長さが顕著に異なった隔壁。
複合シナプティキュラ compound synapticulae 【クサビライシ科】 隣接する隔壁間を結ぶ一連の棒状の構造物で、クサビライシ科の固有派生形質である。他の多くのイシサンゴ類の科で見られるシナプティキュラ (=単純シナプティキュラ simple synapticulae) と相同ではないとされる。
付着基部 attachment base 群体 (サンゴ体) の中で、海底基盤に付着する底面部分を指す。特に底面からサンゴ体を立ち上げる場合に用いられる。
不定形成長 indeterminate 群体が固有 (内因性) の制約を持たずに成長し、 空間などの外的な要因のみに群体形が制限されている。
フラベロイド flabelloid サンゴ個体が単一の列に並ぶ配列様式。サンゴ体は基部が小さく成長につれて扁平な扇状になる。ふつう単体サンゴに用いられるが、フラベロメアンドロイド型の成長初期の群体に用いられることもある。
フラベロ・メアンドロイド flabello-meandroid サンゴ個体が畝状に並行する莢壁間の谷に並ぶが、隣接する谷の個体と莢壁を共有しない個体配列様式。
プロコイド plocoid サンゴ個体が莢壁を共有せずに互いに独立して離れて並ぶ個体配列様式。
分枝 branching 群体の樹木状部の枝分かれを指し、主枝 (main branch) や基部から分枝することを1次分枝 (primary branching)、1次分枝で生じた枝 (1次側枝) から分枝することを2次分枝 (secondary branching)、2次分枝で生じた枝 (2次側枝) から分枝することを3次分枝 (tertiary branching) という具合に、連続する分枝の次数を数える。ミドリイシ属 Acropora では分枝の前後で枝のサイズまたは形状が異なる分枝の次数を数える。分枝した枝が融合して板状や網目状などの基部を形成した場合は、この基部から再び1次分枝が始まる。
分裂溝 slit, cleft, fragmentation cleft 【クサビライシ科】 隣接する隔壁-肋ユニット間のサンゴ体壁に形成されるスリット状の割れ目。この割れ目に沿ってサンゴ体が分裂 (縦分裂) して複数の扇形の破片が形成されることにより、無性生殖を行う。
方向隔壁 directive / directive septum 1次隔壁の中で個体の左右対称軸上にある1対の隔壁で、特にミドリイシ科やハマサンゴ属では明瞭に判別できる。
放射サンゴ個体 radial corallite 【ミドリイシ属】 突起 (枝) の側面に位置するサンゴ個体。様々な形状があり、種同定の重要な形質の一つである。
ホモニム (同名) homonym 同名の項を参照。
ポリプ polyp 軟体部の個虫の部分を指し、共肉は含めない。
ホロタイプ holotype ある名義種が設立されたときにその担名タイプとして指定されるか、またはその他の方法で固定された唯一の標本。
ま行
マージノテカ marginotheca 単体サンゴの側面や群体サンゴの底面に生じる薄皮状の石灰質組織で、同心円状の皺に見える場合が多い。
埋没型サンゴ個体 immersed type corallite / immersed corallite 【コモンサンゴ属】 共骨面下に埋没したサンゴ個体。
埋没状サンゴ個体 immersed corallite 【ミドリイシ属】 共骨中に完全に埋没し、莢壁が全く突出しない放射サンゴ個体。
末枝 terminal branch 末端に位置する枝。梢。
丸い管状サンゴ個体、円形開口 rounded tubular corallite, round opening 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体で、莢壁は丸く膨らみ、開口部は円形で縁は丸いもの。
丸い管状サンゴ個体、欠刻開口 rounded tubular corallite, dimidiate opening 【ミドリイシ属】 丸い管状サンゴ個体で、開口部内側の一部が欠刻したもの。内側莢壁が完全に欠刻したものは円形唇の唇弁状のように見える。
幹 stem 主枝の中で特に太いもの、または不定形のもの。
密着管状サンゴ個体 appressed tubular corallite 【ミドリイシ属】 管状サンゴ個体の形状で、枝に圧着した管状のもの。
無藻性イシサンゴ azooxanthellate scleractinian coral イシサンゴ目のうち褐虫藻を持たないもの。イシサンゴ目の約半数の種が含まれる。大部分の種は非造礁性であるが、キサンゴ科のナンヨウキサンゴは造礁性である。
無藻性サンゴ azooxanthellate coral サンゴのうち褐虫藻を持たないもの。
メアンドロイド meandroid サンゴ個体が畝状に並行する莢壁間の谷に並び、隣接する谷の個体との間で莢壁を共有する個体配列様式。
名義タクソン nominal taxon ある適格名によって表示されるタクソンという概念。科・属・種の各階級群における名義タクソンは、それぞれある一つの担名タイプに基づいている。
モンティクル monticule (複数 monticulea / monticules) 隣接する個体間に生じる円錐状構造物。イボサンゴ属 Hydnophora のものは hydnophore protuberance または hydnophoroid protuberance とも呼ばれる。
や行
有藻性イシサンゴ zooxanthellate scleractinian coral イシサンゴ目のうち褐虫藻が共生するもの。イシサンゴ目の種の約半数の種が含まれる。大部分は造礁性であるが、一部 (旧ワレクサビライシ属、ムシノスチョウジガイ属、スツボサンゴ属など) は非造礁性である。
有藻性サンゴ zooxanthellate coral サンゴのうち褐虫藻が共生するもの。ヒドロ虫綱アナサンゴモドキ科の全種、花虫綱八放サンゴ亜綱の一部の種、花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目の種の約半分およびスナギンチャク目の一部の種が含まれる。本サンゴ図鑑で扱うのはこの有藻性サンゴである。
指状 digitate 群体の形状で、被覆状ないし板状の基部から円筒形や円錐形の指状の突起が分岐せずに直立したもの。
葉状 foliaceous 群体の形状で、基盤から葉のように薄く幅広く伸びたもの。単葉、複葉、渦巻き状など形状は様々。
ら行
レクトタイプ lectotype 一連のシンタイプを担名タイプとして設立された種において、設立後にシンタイプの中から唯一の担名タイプとして指定された標本。レクトタイプに指定されなかった残りの標本はパラレクトタイプとなる (パラレクトタイプは担名タイプではない)。
肋 costa サンゴ個体の隔壁から莢壁の外側に伸びた畝状の部分。
肋状 costate 【ミドリイシ属】 共骨表面に見られる構造で、隣接する棘間が板状に癒合するが、板上に棘が残っているもの。
執筆者:横地洋之・野村恵一・下池和幸・立川浩之ほか
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2023-11-12 公開