Milleporidae アナサンゴモドキ科
Millepora アナサンゴモドキ属
Millepora platyphylla Hemprich & Ehrenberg, 1834
(Figs. 1-17)
イタアナサンゴモドキ 江口, 1968 (?)
(図1-17)
図1-7. MIY-KK2014-308. 宮古諸島八重干瀬, 水深 12 m. 2014-10-26. 表面が平滑な群体.
図8-12. CMNH-ZG 08654. 奄美大島油井, 水深 3 m. 2017-10-07. 表面に瘤を有する群体。多数のサンゴフジツボの寄生も見られる.
図13-17. KI-AM2017-16. 奄美大島大浜, 水深 11 m. 2017-09-11. 広い被覆状基部をもつ群体.
標本の採集・撮影:図1-6. 梶原健次; 図7-12. 立川浩之; 図13-17. 伊藤馨司.
解説:上方に薄く伸びる板状群体を形成するが、ときに広い被覆状基部をもつことがある。群体表面は平滑な場合や大小の瘤を有する場合がある。本属の他種とは板状の群体形で区別できる。複数の指状個虫孔が栄養個虫孔を取り囲むように配列する円口孔系が明瞭に確認できる。個虫孔は、樹木状種に比べて大きい傾向がある。骨格表面にはサンゴフジツボの寄生が見られる。生時の色彩は黄褐色~褐色。国内ではサンゴ礁域に分布し、礁池や礁縁、礁斜面など様々な環境で見られる。
なお、アナサンゴモドキ属の分類は、伝統的に個虫孔の特徴と群体形外部形態に基づいているが、ITSクレード解析の結果との不整合が指摘されていることから
(Takama et al. 2017)、上述の解説は暫定的なものである。
和名の由来:新称和名の明示がないことから断定はできないが、和名は江口 (1968) の「いたミレポラ」に由来し、板状の群体形にちなんだものと思われる。
なお、白井 (1977) は新称や改称の明示なく「イタアナサンゴモドキ」を用い、のちの白井・佐野 (1985) では「イタアナサンゴモドキ (白井)」と記述している。本稿執筆者の知る限りで「イタアナサンゴモドキ」が用いられたのは白井
(1977) が最初となるが、これは白井のオリジナルではなく、江口 (1968) が記述した「いたミレポラ」からの派生と解するのが適当と思われる。
引用文献:
江口元起 (1968) 相模湾産ヒドロ珊瑚類および石珊瑚類. 生物学御研究所編. 丸善, 東京.
白井祥平 (1977) 原色沖縄海中動物生態図鑑. 新星図書, 那覇.
白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.
Takama O, Fernandez-Silva I, López C, Reimer JD (2018) Molecular phylogeny
demonstrates the need for taxonomic reconsideration of species diversity
of the hydrocoral genus Millepora (Cnidaria: Hydrozoa) in the Pacific. Zoological Science 3: 123-133. [BioOne]
執筆者:梶原健次
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更新履歴:
2023-11-12 公開
2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記