Milleporidae アナサンゴモドキ科
Millepora アナサンゴモドキ属
Millepora tenera Boschma, 1949
(Figs. 1-10)
ヤツデアナサンゴモドキ 内海, 1956
(図1-10)
図1-6. MIY-KK2016-075. 奄美大島油井, 水深 3 m. 2016-10-05. 半球形群体.
図7, 8. CMNH-ZG 06831. 西表島網鳥湾, 水深 3 m. 2014-08-05. 枝が短い群体。白化している.
図9, 10. CMNH-ZG 06801. 西表島網取湾, 水深 3 m. 2014-08-04. 扇状分枝が顕著ではない群体. 白化している.
標本の採集・撮影:図1-6. 梶原健次; 図7-10. 立川浩之.
解説:側偏した枝が扇形に枝分かれする樹木状群体を形成し、大きな群体では半球状を呈する。樹木状群体をつくるアナサンゴモドキ属は、本種の他に Millepora dichotoma アナサンゴモドキ、M. intricata ホソエダアナサンゴモドキの2種が国内に分布するが、本種は枝の癒合は枝の基部付近にとどまり、枝が癒合を繰り返して編目板状となるアナサンゴモドキと区別することができる。ホソエダアナサンゴモドキでは枝の癒合は見られない。骨格表面は平滑である。円口孔系は明瞭でない。生時の色彩は黄褐色。国内ではサンゴ礁域に分布し、礁池や礁縁、礁斜面など様々な環境で見られる。
なお、アナサンゴモドキ属の分類は、伝統的に個虫孔の特徴と群体形外部形態に基づいているが、ITSクレード解析の結果との不整合が指摘されていることから
(Takama et al. 2017) 、上述の解説は暫定的なものである。
和名の由来:内海 (1956) による (M. tenella として)。和名の由来は明示されていないが「掌状の群体」との説明があり、植物のヤツデも葉が掌状と形容されることから、この連想によるものと思われる。なお、白井・佐野
(1988) では M. tenella に対して「ヤツデアナサンゴモドキ (白井)」と記述し、和名が白井によるものとされているが、これは誤り。
引用文献:
白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.
Takama O, Fernandez-Silva I, López C, Reimer JD (2018) Molecular phylogeny
demonstrates the need for taxonomic reconsideration of species diversity
of the hydrocoral genus Millepora (Cnidaria: Hydrozoa) in the Pacific. Zoological Science 3: 123-133. [BioOne]
執筆者:梶原健次
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更新履歴:
2023-11-12 公開
2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記