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Tubiporidae クダサンゴ科
Tubipora クダサンゴ属

Tubipora musica Linnaeus, 1758
(Figs. 1-4)

Tubipora musica Linnaeus, 1758: 789; Wright 1869: 377, pl. 23, figs. 1-10; Hickson 1883: 566, pls. 39, 40; Wright & Studer 1889: 252; Hickson & Hiles 1900: 493; Thomson & Dean 1931: 22, pl. 2, fig. 12; Macfadyen 1936: 26; Utinomi 1956: 224; 1956 11, pl. 6, fig. 4; 1959: 304; Utinomi 1965: 243, 1 fig.; Utinomi 1975: 234, 56, 2 figs.; 1976: 4; Veron 1984: 612, figs. 1, 2, 4; Imahara 1991: 60; Nishihira & Veron 1995: 405, 3 figs.; Veron 2000: vol. 3, 406, figs. 2-5; Nishihira 2019: 130, 7 figs.

クダサンゴ 駒井, 1927
(図1-4)

クダサンゴ 駒井, 1927: 1884, 図3587; 内海 1956: 11, 図版6, 図4; 1965: 243, 1図; 1975: 234, 56, 2図; Utinomi 1976: 4; 白井 1977: 431, 5図; 白井・佐野 1985: 280, 図1; 西平 1988: 230, 4図; 今原 1992: 73, 図版13, 図4, 5; 西平・Veron 1995: 405, 3図; 西平 2019: 130, 7図.

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図1-4. AMO-176. 奄美大島大浜海浜公園, 水深 17 m. 2017-09-14. 下池和幸.

形態:英名の Organ-Pipe Coral が示す通り、垂直方向にパイプが並び、パイプの頂端部には横板と呼ばれる薄い骨格があり、隣り合う横板同士が融合して水平方向にプラットフォームと呼ばれる骨格を形成する。プラットフォーム上から新たなパイプが芽出して、その上面が新たなプラットフォームを形成することにより群体を形成している。パイプもプラットフォームも石灰質で赤色の微小骨片が融合して構成される。群体下部は骨格のみで生体部はなく、石灰藻などが付着し、乾燥すると白色を帯びることもある。パイプの直径は 1~2 mm で一様ではない。

このパイプの先端部に個々のポリプが収まっており、ここから8本の触手を伸長させる。触手を広げた直径は 10 mm 以上にもなり、良く目立つ。触手は八放サンゴ亜綱特有の羽状突起があるが、これが見られない変異群体も稀に存在する。ポリプや触手の色も変異が大きく、白色や褐虫藻の色を帯びた褐色が多くみられるが、緑色、黄色を帯びるもの、口縁部と触手の色が異なるものなども確認されている。

識別点:イシサンゴ類とは、赤い骨格を有することに加えて、ポリプの形態 (8本の触手)、莢の形態 (隔壁等がないこと) などから区別が可能。同じクダサンゴ科に属する種とは、ポリプを開いていると見分けがつきにくいことがあるが、石灰質の骨格の有無で識別は容易である。

分布と生態:インド・太平洋に広く分布し、日本では沖縄本島、八重山、尖閣諸島、小笠原諸島などで見られる熱帯性の強い種類である (Utinomi 1976)。群体は大きくても径 30 cm 程度の群体で、比較的稀な種である。

和名の由来:他のサンゴにはない特徴である、石灰質の赤色の管を有する骨格を持つことから、この和名が付いたと思われる。

備考:本種は Linnaeus (1758) により命名されているが、骨格のみに基く記載であり、Dana (1846) は「生体は知られていない」としている。Tubipora クダサンゴ属には多くの変異があり、それらに種小名が与えられているが、Linnaeus (1758) による本種の骨格の記述は不明瞭で、そもそもどの変異が本種にあたるのかが不明な状態である (Knop 2018)。Knop (2018) はクダサンゴ属に見られるこの多くの表現型変異を整理し、sp. 1~sp. 8 として示し、既知種との対応について述べている。これらはポリプの色彩変異とともに、口縁部や触手の骨片も示し、それぞれに形態の差異があることを示した。しかし骨格の差異は示していない。

McFadden et al. (2023) は本属の有効名として7種を挙げているが (McFadden et al. 2023)、T. musica 以外は日本近海での記録はないためここでは扱わない。ただ、もし出現しても現状では同定は困難である。下記のように、ポリプの形態についての記述がある種もあるが、T. musica の生体の記載がなく担名タイプも確認できていない現状、本種のシノニムである可能性は否定できない。今後の形態及び分子系統学的検討が待たれる。

WoRMS (McFadden et al. 2023) における有効名:採集地は Dana (1846) による。

T. musica Linnaeus, 1758 採集地:Indian Ocean. ポリプ (生体) についての記述は無い (Dana 1846)。

T. chamissonis Ehrenberg, 1834 採集地:Radack Archipelago, Pacific Ocean. East Indies. 「Papillaeが2列に並んでいる」という Dana (1846) の記述があり、Knop (2018) は、触手の羽状突起が2列に並んでいることを示しているのではないかとしている。

T. fimbriata Dana,1846 採集地:Feejee Islands, on the outer reefs. ポリプの円盤は茶色がかった赤、口は黄色、触手は淡い黄色、突起は紫色 (Dana 1846)。

T. hemprichii Ehrenberg, 1834 採集地: Red Sea. 「触手は青または緑がかっており、シンプルである」という Dana (1846) の記述があり、Knop (2018) は、触手の羽状突起が発達しないことを示しているのではないかとしている。

T. reptans Carter, 1880 採集地:Gulf of Manaar (注:図を見る限り、本種は Tubipora ではない)

T. rubeola Quoy & Gaymard, 1833 採集地:New Ireland.

T. syringa Dana, 1846 採集地:The Feejee Islands, in shallow waters along the shores.「Papillaeが平たく一面に配している」という Dana (1846) の記述があり、Knop (2018) は、触手の羽状突起が平たく癒合していることを示しているのではないかとしている。

引用文献:

Imahara Y (1991) Report on the Octocorallia from the Ryukyu Islands of Japan. Bull Inst Ocean Res Dev Tokai Univ 11/12: 59-94.

今原幸光 (1992) クダサンゴ. In 西村三郎 (編著) 原色検索日本海岸動物図鑑 I. 保育社, 大阪, pp 73-74, pl. 13-4, 5.

Hickson SJ (1883) The structure and relations of Tubipora.Q J Microsc Sci s2-23: 556–578, pls. 39-40 [HathiTrust].

Hickson SJ, Hiles IL (1900) The Stolonifera and Alcyonacea collected by Dr. Willey in New Britain, etc. Zoological results based on material from New Britain, New Guinea, Loyalty Islands and elsewhere, collected during the years 1895, 1896, and 1897. 4: 493-508, pls. 50-51. [BHL]

Knop D (2018) Wallflowers of Science: The Genus Tubipora. Part I. Excerpt from Coral Magazine January/February 2017, 15(1). Accessed at: https://www.reef2rainforest.com/2018/01/02/wallflowers-of-science-the-genus-tubipora/ on 2023-09-18.

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Linnaeus C (1758) Systema Naturae per regna tria naturae, secundum classes, ordines, genera, species, cum characteribus, differentiis, synonymis, locis. Editio decima, reformata. Vol. 1. Impensis Direct. Laurentii Salvii, Holmiae [BHL]

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McFadden CS, Cordeiro R, Williams G, van Ofwegen L (2023) World List of Octocorallia. Tubipora Linnaeus, 1758. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=205676 on 2023-09-18.

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Wright EP, Studer T (1889) Report on the Alcyonaria collected by H.M.S. Challenger during the years 1873-76. Report on the Scientific Results of the Voyage of H.M.S. Challenger during the years 1873–76. Zoology 31 (64). [BHL]

執筆者:野中正法

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更新履歴:

2023-11-12 公開