Agariciidae ヒラフキサンゴ科
Leptoseris センベイサンゴ属
Leptoseris glabra Dinesen, 1980
(Figs. 1-17)
Leptoseris glabra Dinesen, 1980: 200, pl. 15, 3 figs., pl. 16, 3 figs. [Great Barrier Reef]; Sugihara 2014: 12, 49, 2 figs.; Sugihara et al. 2015: 66, 3 figs.; Nomura 2016: 32, figs. A-D.
Leptoseris explanata: Veron & Pichon 1980: 42, figs. 76-82; Veron 1986: 302, figs. 1, 2,
1 skeleton fig.; Uchida & Fukuda 1989: 138, 2 figs.; Nishihira &
Veron 1995: 221, 4 figs.; Veron 2000: vol. 2, 208, figs. 1-6, 1 skelton
fig.
センベイサンゴ 内田・福田,1989
(図1-17)
センベイサンゴ 内田・福田, 1989: 138, 2図 (Leptoseirs explanata として); 西平・Veron 1995: 221, 4図 (Leptoseris explanata として); 杉原 2014: 12, 49, 2図; 杉原ら 2015: 66, 3図; 野村 2016: 32, 図A-D.
非 センベイサンゴ:亀田・目崎 2011: 26, 85, 2図 (Leptoseirs explanata として, =ヒラシコロサンゴ)
図1-6. MIY-HM2017-041. 奄美大島知名瀬, 水深 22 m. 2017-09-12.
図7-9. MIY-HM2014-074. 西表島網取湾, 水深 41 m. 2014-06-29. ポリプが比較的まばらな群体.
図10-13. MIY-HM2012-008. 宮古島東平安名崎, 水深 24 m. 2012-08-04. 隔壁-肋が幾何学模様に見える群体.
図14-17. MIY-HM2015-053. 宮古島八重干瀬, 水深 37 m, 2015-06-29.
図の標本採集・撮影は全て松本尚.
形態:群体形は葉状でおおむね円盤状を呈し、大きいものでは長径が 30 cm を超えることがある。群体の周縁部はうねることがある。群体の中心付近以外はほとんど基盤に付着しない。
サンゴ個体は群体の上面のみにあり、同心円状及びサムナステロイド状に配列する。中心付近にサンゴ個体が密に分布する群体では、生時の個体配列がセリオイド状に見えることがある。また隣り合うサンゴ個体が近いときには、しばしばメアンドロイド状に見えることがある。比較的小さな群体には中央サンゴ個体が存在する場合がある。
サンゴ個体は群体周縁に向かって横倒しになるように傾くため、外観は半埋在の円錐型で、開口面は半円形となる。長径 3~8 mm。隔壁は4次まで。1~3次隔壁はよく発達し厚く突出し、軸柱まで達する。4次隔壁は、1~3次隔壁よりも薄く短く、軸柱まで達しない。サンゴ個体の隔壁-肋は、波打つことがしばしばある。軸柱はよく発達し、円形~扁平な板状。
肋は、群体周縁に向かって直線的に形成され、ほとんど枝分かれしたり途切れたりしない。また、サンゴ個体が密にある群体の中心付近以外は、肋が周縁部に対して平行に形成されることはあまりないので、隣り合うサンゴ個体どうしが肋を共有することもほとんどない。群体によっては、サンゴ個体の上部の肋が幾何学模様のように形成されることがある。骨格全体は細かな顆粒状組織で覆われている。
生時は、茶色、ベージュ色が主で、周縁が白いことが多い。まれに緑色の群体が見られる。
識別点:ポリプが小さい群体の場合、Leptoseris hawaiiensis ハワイセンベイサンゴに類似するときがあるが、ハワイセンベイサンゴは、隔壁及び肋の高さ、厚みがほぼ同じであるのに対して本種の隔壁、肋には大小2型があり交互に並ぶことから区別できる。L. scabra (和名なし)、および L. tubulifera ハシラセンベイサンゴとは、本種の肋には鋸歯が見られないことから区別できる。
分布と生態:種子島以南の海域で記録されているが、和歌山県串本で記録された (野村 2016) 以外は種子島~和歌山県間の海域における記録はない。15 m 以深の礁斜面のくぼんだ部分に多く生息し、10 m 以浅の波あたりの弱い場所やオーバーハングした岩礁の奥部にも見られることがある。
和名の由来:白井 in 白井・佐野 (1985) は L. explanate (explanata の誤記と思われる) と同定した標本に対して、ヤベヒラサンゴの和名を提唱した。
新属 Australomussa が Veron (1985) により提唱され、ヒラサンゴがこれに移されると、内田・福田 (1989) は L. explanata の和名をセンベイサンゴに改称した。しかし、その基準とした標本は L. glabra であることから、本種がセンベイサンゴに和名を担い、L. explanata は和名なしとなる。
参考:担名タイプの写真
Leptoseris glabra Dinesen, 1980 ── in Dinesen (1980)
Holotype, BM 1979.4.7.1: pl. 15, Figs. 1, 2 [BHL]
Paratype, ZD 9496: pl. 15, fig. 3 [BHL]
Paratypes, ZD 9496: pl. 16, fig. 1, 2; BM 1979.4.7.5: pl. 16, fig. 3 [BHL]
引用文献:
Dinesen ZD (1980) A revision of the coral genus Leptoseris (Scleractinia: Fungia: Agariciidae). Mem Queensl Mus 20: 181-235. [BHL]
亀田和成・目崎拓真 (2011) 黒島研究所収蔵造礁サンゴ目録. 日本ウミガメ協議会付属 黒島研究所, 竹富町.
西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.
野村恵一 (2016) 串本産有藻性イシサンゴ類図鑑. Ⅰ シズカテマリ亜目. マリンパビリオン 特別号5. [串本海中公園]
篠原雄 (1927) イシサンゴ目. In: 内田清之助ら (編著). 日本動物図鑑. 北隆館, 東京, pp 1884-1894.
杉原薫 (2014) 中城湾サンゴ類標本目録. 琉球大学博物館 (風樹館) 収蔵資料目録第9号. 琉球大学博物館 (風樹館), 西原町. [琉球大学風樹館]
杉原薫・野村恵一・横地洋之・下池和幸・梶原健次・鈴木豪・座安佑奈・出羽尚子・深見裕伸・北野裕子・松本尚・目﨑拓真・永田俊輔・立川浩之・木村匡 (2015) 日本の有藻性イシサンゴ類. 種子島編. 国立環境研究所生物・生態系環境研究センター, つくば. [国立環境研究所]
内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第10巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.
Veron JEN (1986) Corals of Australia and the Indo-Pacific. Angus & Robertson Publication, North Ryde, NSW.
Veron JEN (2000) Corals of the world. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
Veron JEN, Pichon M (1980) Scleractinia of eastern Australia, part III.
Families Agariciidae, Siderastreidae, Fungiidae, Oculinidae, Merulinidae,
Mussidae, Pectiniidae, Caryophylliidae, Dendrophylliidae. Australian Institute
of Marine Science, Townsville. [BHL]
執筆者:松本尚
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更新履歴:
2023-11-12 公開
2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記