Top page科・属リストAgariciidaeLeptoseris

Agariciidae ヒラフキサンゴ科

Leptoseris Milne Edwards & Haime, 1849
センベイサンゴ属 西平, 1988

本属に含まれる日本産種

日本国内では次の13種が知られている。なお Leptoseris papyracea には隠蔽種が含まれる可能性が高い。

Leptoseris amitoriensis Veron, 1990 アミトリセンベイサンゴ

Leptoseris explanata Yabe & Sugiyama, 1941

Leptoseris foliosa Dinesen, 1980 ウスイタセンベイサンゴ

Leptoseris gardineri (van der Horst, 1922) エダセンベイサンゴ

Leptoseris glabra Dinesen, 1980 センベイサンゴ

Leptoseris hawaiiensis Vaughan, 1907 ハワイセンベイサンゴ

Leptoseris incrustans (Quelch, 1886) フトウネセンベイサンゴ

Leptoseris mycetoseroides Wells, 1954 アバタセンベイサンゴ

Leptoseris papyracea (Dana, 1846)

Leptoseris scabra Vaughan, 1907

Leptoseris solida (Quelch, 1886)

Leptoseris striata Fenner & Veron, 2000

Leptoseris tubulifera Vaughan, 1907 ハシラセンベイサンゴ

Leptoseris yabei (Pillai & Scheer, 1976) チヂミセンベイサンゴ

本属の解説

和名の由来:Leptoseris に対する和名提唱者は明確でないが、執筆者の知る限り篠原 (1927) が Leptoseris sp. に対してヒラサンゴの和名をあてたのが最初ではないかと思われる。以後、内海 (1966)、白井 (1977)、白井 in 白井・佐野 (1985) では、Leptoseris に属する種に対して「ヒラサンゴ」を語幹とする和名が提唱されている。

内田 (1988) は、篠原 (1927) に示されたヒラサンゴの図が、莢壁の形状や莢の配列、群体縁辺の特徴が Leptoseris のものではなく、Veron (1985) により記載された Australomussa rowleyensis (現在はハナガタサンゴ属 Lobophyllia に含まれる) であることを指摘している。西平 (1988) は Leptoseris 属3種に対して、内田・福田 (1989) は同属2種に対して、センベイサンゴを語幹とする和名を用いている。

Leptoseris に対してセンベイサンゴ属という和名が初めて明示されたのは西平・Veron (1995) においてである。しかし、西平 (1988) は掲載した Leptoseris 3種全てに対しセンベイサンゴを語幹とする和名を用いたことから、属名の提唱も同著によるものと見なすのが適当である。

ただし、西平 (1988; 1991) は、その序文において「これまでの和名を詳しく検討した内田・福田(印刷中; 1989a, b)に従った。」と述べている (該当箇所の明示はない)。篠原 (1927) のヒラサンゴの図が Leptoseris でないことを指摘したのが内田 (1988) であったこと、西平 (1988) と内田・福田 (1989b) の共通掲載種 L. mycetoseroides アバタセンベイサンゴに対して後者が改称と表記していること、内田・福田 (1989b) が改称と明示して L. explanata にセンベイサンゴの和名を表記していることを考えると、「センベイサンゴ」の原案は内田・福田 (1989b) による可能性が強く示唆される。

なお、センベイサンゴの和名の由来は明示されていない。おそらく、円盤状の群体を煎餅に見立てたことによるものと思われる。

タイプ種:Leptoseris fragilis Milne Edwards & Haime, 1849 (非日本産。長らく担名タイプが失われていたが Benzoni (2022) により複数標本からなるシンタイプが発見され、このうち記載内容と最も合致する標本がレクトタイプとして指定された。)

引用文献:

Benzoni F (2022) Re-discovery of the type material of Leptoseris fragilis (Cnidaria, Anthozoa, Scleractinia) from the upper mesophotic in La Runion, a taxonomic puzzle. Zootaxa. 5178. 596-600. 10.11646/zootaxa.5178.6.8. [ResearchGate]

Milne Edwards H, Haime J (1849) Mémoire sur les polypiers appartenant a la famille des Oculinides, au groupe intermediate des Pseudoastréides et a la famille des Fongides. Comptes rendus hebdomadaires des séances de l'Académie des sciences. 149: 636-637. [BHL]

西平守孝 (1988) フィールド図鑑 造礁サンゴ. 東海大学出版会, 東京.

西平守孝 (1991) フィールド図鑑 造礁サンゴ. 増補版. 東海大学出版会, 東京.

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

篠原雄 (1927) イシサンゴ目. In: 内田清之助ら (編著) 日本動物図鑑. 北隆館, 東京, pp 1884-1894.

白井祥平 (1977) 原色沖縄海中動物生態図鑑. 新星図書, 那覇.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

内田紘臣 (1988) ヒラサンゴについて. マリンパビリオン. 17: 35.

内田紘臣・福田照雄 (1989a) 沖縄海中生物図鑑 第9巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.

内田紘臣・福田照雄 (1989b) 沖縄海中生物図鑑 第10巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.

内海冨士夫 (1966) 紀伊半島沿岸の浅海珊瑚類相の概況. In: (財)日本自然保護協会, 日本自然保護協会調査報告第27号 和歌山県海中公園学術調査報告書, pp 97-102.

Veron JEN (1985) New Scleractinia from Australian coral reefs. Rec West Aust Mus 12: 147-183. [Western Australian Museum]

執筆者: 松本尚・立川浩之・梶原健次

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開