Agariciidae ヒラフキサンゴ科
Leptoseris センベイサンゴ属
Leptoseris hawaiiensis Vaughan, 1907
(Figs. 1-29)
Leptoseris hawaiiensis Vaughan, 1907: 137, pl. 39, figs. 1, 1a, 2 , 2a, pl.40, figs. 1, 2 [Hawaii Island]; Veron & Pichion 1980: 52 (part), figs. 92-94, 97, 98; Shirai & Sano 1985: 219, fig. 3; Dinesen 1990: 193 (part), pl. 4, fig. 4, pl. 5, figs. 1-3, pl. 6, figs. 3, 4, pl. 7, figs. 1-3; Nishihira 1991: 251, 1 fig.; Nishiira & Veron 1995: 223 (part), 1st fig.; Veron 2000: vol. 2, 216 (part), figs. 1, 2, 4, 5, 1 skelton fig.; Sugihara et al. 2015: 67, 3 figs.
not Leptoseris hawaiiensis: Dinesen 1990: 193 (part), pl. 6, fig. 1 (= Leptoseris tubulifera); Nishihira & Veron 1995: 223 (part), 2nd fig. (= Leptoseris incrustance ?); Veron 2000: vol. 2, 216 (part), fig. 3 (= Leptoseris tubulifera).
? Leptoseris hawaiiensis: Veron & Pichion 1980: 52 (part), figs. 95, 96.
ハワイセンベイサンゴ 西平,1991
(図1-29)
ハワイヒラサンゴ 白井 in 白井・佐野, 1985: 219, 図3.
ハワイセンベイサンゴ 西平, 1991: 251, 1図; 西平・Veron 1995: 223 (一部), 1番目の図; 杉原ら 2015: 67, 3図.
非 ハワイセンベイサンゴ:西平・Veron 1995: 223 (一部), 2番目の図 (=フトウネセンベイサンゴ Leptoseris incrustance ?).
図1-6. MIY-HM2014-161. 西表島﨑山湾, 水深 33 m. 2014-08-06. 個体が密に分布する群体.
図7-12. MIY-HM2014-162. 西表島網取湾, 水深 32 m. 2014-08-06. サンゴ個体が同心円状に分布する群体.
図13-18. MIY-HM2014-307. 宮古島狩俣東 (フゥナガル), 水深 22 m. 2014-10-19.
図19-23. MIY-HM2015-026. 宮古島狩俣東 (フゥナガル), 水深 33 m. 2015-06-27. サンゴ個体が不規則に配列する群体.
図24-29. MIY-HM2017-012. 奄美大島和瀬, 水深 6 m. 2017-09-10. 肋が迷路状の幾何学模様に見える群体.
写真30-35. MIY-HM2016-113. 奄美大島実久, 水深 4 m. 2016-10-04. 肋が細かく途切れ, 鋸歯に見える群体.
図の標本採集・撮影は全て松本尚.
形態:群体形は葉状で、大きいもので長径 60 cm 程度にまで成長する。群体の中心部以外はほとんど基盤に付着していない。群体の所々にコブ状の突起が形成されることがある。群体の周縁部はうねることがある。
サンゴ個体は群体の上面にのみに形成されサムナステロイド状に分布するが、サンゴ個体の配列は同心円状または不規則など、群体によって様々である。また群体内においてもサンゴ個体の密度がばらばらである。大半のサンゴ個体は開口面が群体周縁部に向かって傾いているが、開口面がドーム状で口が上を向いていたり、サンゴ個体が埋在していたりとさまざまである。
サンゴ個体は長径 3~5 mm。隔壁は4次まで形成されほぼ同じ厚さ、高さで配列する。隔壁が軸柱付近で急激に落ち込み軸柱に達するため、生時においてはサンゴ個体の口が非常に小さく見える。軸柱はよく発達し、先端が丸く側偏した円柱状または板状。
肋は、群体周縁部に向かって直線的に形成され、ほとんど枝分かれしない。また、横方向に並ぶサンゴ個体どうしが肋を共有することはほとんどない。部分的に肋が細かく途切れることがあるため、鋸歯のように見えることがある。群体によっては、サンゴ個体およびコブの部分に肋が迷路状の幾何学的な模様を形成する場合がある。隔壁及び肋の側面は、針状の細かい顆粒で覆われている。
生時は茶色かベージュ色。まれに深緑色の群体が見られる。
識別点:サンゴ個体が小さい群体の場合、Leptoseris glabra センベイサンゴに類似することがあるが、センベイサンゴは、隔壁、肋は大小2型があり交互に並ぶが、本種は高さ及び厚みともほぼ均一であることから区別ができる。L. tubulifera ハシラセンベイサンゴとは、本種にはチューブ状の柱が形成されないことから区別できる。L. incrustans フトウネセンベイサンゴに類似するが、フトウネセンベイサンゴ はサンゴ個体が不規則な方向に向いて配列しているのに対し、本種はサンゴ個体が群体周縁に向かって傾いていることから区別できる。
分布と生態:種子島以南の海域に分布する。水深 20 m より深い礁斜面のくぼんだ部分に多く生息し、希に 10 m 以浅のオーバーハングした岩礁の奥部や濁りが多く波あたりの弱い場所に見られることがある。
和名の由来:白井 in 白井・佐野 (1985) は L. hawaiiensis に対して、ハワイヒラサンゴの和名を提唱した。和名の由来は説明されていないが、おそらく、種小名に由来すると思われる。Veron (1985)
が新属 Australomussa を提唱し、語幹となっているヒラサンゴがこれに移されると、以後、残った Leptoseris に属する種に対して「センベイサンゴ」を語幹とする改称が行われるようになった。西平 (1991) は、L. hawaiiensis に対しハワイセンベイサンゴを仮称として提唱、西平・Veron (1995) では「仮称」を外してハワイセンベイサンゴと表記した。
参考:担名タイプの写真
Leptoseris hawaiiensis Vaughan, 1907
── Cotypes in Vaughan (1907) pl. 39, figs. 1-2a, pl. 40, figs. 1, 2 [BHL]
── Cotype USNM 20875 in Dinsen (1980) pl. 4, fig. 4 [BHL]
── Syntype, in Veron & Pichon (1980) p.56, figs. 97, 98 [BHL]. 図のキャプションには holotype とあるが、Vaughan (1907) では holotype 指定はされていないので、syntype
が正しい。
引用文献:
Dinesen ZD (1980) A revision of the coral genus Leptoseris (Scleractinia: Fungia: Agariciidae). Mem Queensl Mus 20: 181-235. [BHL]
西平守孝 (1991) フィールド図鑑 造礁サンゴ 増補版. 東海大学出版会, 東京.
西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.
篠原雄 (1927) イシサンゴ目. In: 内田清之助ら (編著) 日本動物図鑑. 北隆館, 東京, pp 1884-1894.
白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.
杉原薫・野村恵一・横地洋之・下池和幸・梶原健次・鈴木豪・座安佑奈・出羽尚子・深見裕伸・北野裕子・松本尚・目﨑拓真・永田俊輔・立川浩之・木村匡 (2015) 日本の有藻性イシサンゴ類. 種子島編.国立環境研究所生物・生態系環境研究センター, つくば. [国立環境研究所]
内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第10巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.
Vaughan TW (1907) Recent Madreporaria of the Hawaiian Island and Laysan. US Natl Mus Bull 59: 1-427. [BHL]
Veron JEN (1985) New Scleractinia from Australian coral reefs. Rec West Aust Mus 12: 147-183. [Western Australian Museum]
Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 2. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
Veron JEN, Pichon M (1980) Scleractinia of eastern Australia, part III.
Families Agariciidae, Siderastreidae, Fungiidae, Oculinidae, Merulinidae,
Mussidae, Pectiniidae, Caryophylliidae, Dendrophylliidae. Australian Institute
of Marine Science, Townsville. [BHL]
執筆者:松本尚
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更新履歴:
2023-11-12 公開
2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記