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Agariciidae ヒラフキサンゴ科
Leptoseris センベイサンゴ属

Leptoseris tubulifera Vaughan, 1907
(Figs. 1-24)

Leptoseris tubulifera Vaughan, 1907: 141, pl. 42, fig. 3, pl. 43, fig. 1 [Hawaii Island]; Veron 2000: vol. 2, 206, figs. 1-3, 1 skelton fig.

Leptoseris colamna: Shirai 1977: 519, 4 figs.

Leptoseris scabra: Veron & Pichon 1980: 48, figs. 85, 89-91; Shirai & Sano 1985: 220, fig. 6; Nishihira 1988: 102 (part), 2nd fig.; Nishihira & Veron 1995: 222 (part), 1st, 2nd figs., 1 skelton fig.

ハシラセンベイサンゴ 西平, 1988
(図1-24)

ハシラヒラサンゴ 白井, 1977: 519, 4図 (Leptoseris colamna として); 白井・佐野 1985: 220, 図6 (Leptoseris scabra として).

ハシラセンベイサンゴ:西平 1988: 102 (一部), 2番目の図; 西平・Veron 1995: 222, 1, 2番目の図と骨格写真 (Leptoseris sacbra として).

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図1-6. MIY-HM2016-040. 奄美大島阿鉄湾, 水深 12 m. 2016-10-02.

図7-9. MIY-HM2016-041. 奄美大島阿鉄湾. 水深 12 m. 2016-10-02.

図10-15. MIY-HM2016-084. 奄美大島白浜南. 水深 23 m. 2016-10-04. 群体のうねりとチューブの形成により枝葉状に見える群体.

図16-21. MIY-HM2016-087. 奄美大島由井小島北, 水深 25 m. 2016-10-05. 比較的多くコブが形成されている群体.

図22-24. MIY-HM2014-141. 西表島網取湾, 水深 37 m. 2014-08-05. 中心ポリプ以外ほとんど見られない群体.

図の標本採集・撮影は全て松本尚.

形態:群体形は葉状で長径 30 cm まで。周縁ほど大きくうねる。群体の所々でチューブ状の柱を形成することがしばしばあり、これが本種の群体形に見られる特徴となっており、ときに枝葉状に見える場合がある。また、群体の所々で楕円形のこぶを形成する。

サンゴ個体は、群体の上面だけにあり、サムナステロイド状に不規則に配列する。大型の群体では中心サンゴ個体が不明瞭になる一方、小型群体では中心サンゴ個体以外のサンゴ個体はないか、不明瞭である。中心サンゴ個体以外のサンゴ個体が明瞭に発達する場合、ドーム状を呈し、群体の周縁に向かって、幾分傾く。群体中心付近でサンゴ個体が密にある場合には不規則な方向を向く。

中心サンゴ個体は長径 10 mm 程度で、それ以外のサンゴ個体は長径 3~5 mm。隔壁は4次まで。1~3次隔壁は軸柱まで達し、4次隔壁よりも突出しかつ隔壁-肋で顕著に厚くなる。肋は、群体周縁に向かってほぼ真っ直ぐにのび、あまり枝分かれしない。隣り合うサンゴ個体同士が肋を共有することはほとんどない。本種に鋸歯はないが、隔壁から肋にかけて所々で途切れ、部分的に細かく途切れるために、鋸歯のように見える。また、隔壁から肋にかけて細かい針状組織に覆われており、1~3次隔壁が4次隔壁よりも顕著で大きい。そのため生時の外観は、群体全体がザラザラした荒い感じに見える。軸柱はよく発達し、先端のまるい円柱形から薄い板状までさまざまな形に形成されるがあまり突出しない。

生時は、茶色か濃いベージュ色をしており、ほとんどの群体は、周縁が白い。

識別点:多くの文献等で本種と Leptoseris scabra(和名なし)を混同しているが、L. scabra は隔壁と肋に鋸歯があるのに対して、本種は隔壁と肋に鋸歯が形成されないことで区別することができる。また本種はチューブ状の柱を欠くこともあるが、逆に L. scabra がそれを形成することはない。

L. hawaiiensis ハワイセンベイサンゴは隔壁や肋の厚さや高さがほぼ同じであるが、本種は1~3次隔壁が4次隔壁よりも突出しかつ隔壁と肋の厚さが異なることから区別できる。

分布と生態:奄美大島以南に分布する。20 m 以深の岩礁に多く生息するが、湾内や波あたりが弱い場所においては、10 m 前後の水深でも見られる。

和名の由来:白井 (1977) は L. colamna と同定した標本に対してハシラヒラサンゴの和名を提唱し、白井 in 白井・佐野 (1985) は L. scabra と同定した標本に同じ和名を与えている。いずれも群体にチューブ状の柱を形成することが和名の由来と思われるが、その特徴ゆえ担名標本は L. tubulifera に同定される。

Veron (1985) が新属 Australomussa を提唱し、語幹となっているヒラサンゴがこれに移されると、以後、残った Leptoseris に属する種に対して「センベイサンゴ」を語幹とする改称が行われるようになった。

改称についての明示はないが、西平 (1988) は L. scabra に対してハシラセンベイサンゴの和名を用い、西平 (1991)、西平・Veron (1995) でも同様である。しかし、これらに掲載された生時と骨格の写真から担名標本は L. tubulifera であることから、本種がハシラセンベイサンゴの和名を担い、L. scabra は和名なしとなる。

参考:担名タイプの写真

Leptoseris tubulifera Vaughan, 1907 ── Cotype, USNM 20991 (?) in Vaughan (1907) pl. 42, fig. 3, pl. 43, fig. 1 [BHL]

引用文献:

西平守孝 (1988) フィールド図鑑 造礁サンゴ. 東海大学出版会, 東京.

西平守孝 (1991) フィールド図鑑 造礁サンゴ 増補版. 東海大学出版会, 東京.

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

篠原雄 (1927) イシサンゴ目. In: 内田清之助ら (編著) 日本動物図鑑. 北隆館, 東京, pp 1884-1894.

白井祥平 (1977) 原色沖縄海中動物生態図鑑. 新星図書, 那覇.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第10巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.

Vaughan TW (1907) Recent Madreporaria of the Hawaiian Island and Laysan. US Natl Mus Bull 59: 1-427. [BHL]

Veron JEN (1985) New Scleractinia from Australian coral reefs. Rec West Aust Mus 12: 147-183. [Western Australian Museum]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 2. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN, Pichon M (1980) Scleractinia of eastern Australia, part III. Families Agariciidae, Siderastreidae, Fungiidae, Oculinidae, Merulinidae, Mussidae, Pectiniidae, Caryophylliidae, Dendrophylliidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

執筆者:松本尚

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更新履歴:

2023-11-12 公開

2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記