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Poritidae ハマサンゴ科
Porites ハマサンゴ属

Porites horizontalata Hoffmeister, 1925
(Fig. 1-10)

Porites (Synaraea) horizontalata Hoffmeister, 1925: 80, pl. 22, figs. 3a, 3b [Pago Pago Harbor, Tutuila, American Samoa].

Porites horizontalata: Nishihira & Veron 1995: 175 (part), 2nd fig.; Veron 2000: vol. 3, 316 (part), fig. 3.

not Porites horizontalata: Shirai & Sano 1985: 238, fig. 5. (= Porites sp.); Sugihara 2014: 28, 78, 2 figs.

? Porites (Napopora) horizontalata: Nishihira 1991: 77, 2 figs.

ウスイタハマサンゴ 新称
(図1-10)

クボミハマサンゴ:西平・Veron 1995: 175, 第2図.

? クボミハマサンゴ:西平 1991: 77, 2図.

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図1. HY-HC14-076. 西表島網取湾ナータ沖, 水深 20 m. 2014-07-01.

図2-5. HY-HC11-017. 竹富島北, 水深 16 m. 2011-06-28.

図6-10. HY-HC14-062. 西表島網取湾シクバ沖, 水深 15 m. 2014-06-30. 図10, 11はステレオ写真.

図の標本採集・撮影は全て横地洋之.

形態:群体は横または斜め上方に広がる薄い板状ないし葉状で緩く波打ち、表面には高さ 2 mm 以下の低い尾根状やイボ状の起伏が見られる。個体は起伏の谷の部分に整列する傾向にあり、周囲からやや凹む。莢径は 0.9〜1.4 mm で、群体内では大きさが比較的揃っているが、群体間ではばらつきが見られる。隔壁は12枚でハマサンゴ型配列がはっきりと認められる。隔壁は莢壁に向かって肥厚し、くさび状を呈する。隔壁間隙は均一で狭く、隔壁厚の半分以下である。三幅対は隔壁先端が融合しているか三叉状である。パリは良く発達し、小さな中央窩を取り囲むパリ環が明瞭に認められる。パリは6〜8本で、三幅対の状態によって変化する。三幅対が融合する場合は三幅対と側隔壁対上の計5本の大きなパリと背側方向隔壁上の小さなパリの計6本が、三叉状の場合は小さなパリが腹側方向隔壁とその両側の側隔壁上に各1本と背側方向隔壁上に1本、大きなパリが側隔壁対上に4本の計8本が認められる。パリから莢壁までの隔壁上には1〜2本の歯状突起が顕著に発達する。軸柱はパリに比べて高さ太さともずっと小さく、ときにこれを欠く。生時の色彩は淡褐色から褐色で、昼間にポリプを大きく伸ばすことはないが、個体中央にわずかに顔を出す触手が白く目立つ。

識別点:本種のITSクレードはⅠ (sensu Forsman et al. 2009) で、Porites lutea コブハマサンゴなど多くの代表的塊状種や P. cylindrica ユビエダハマサンゴと同じグループに属する (Kitano et al. 2016, 北野ら 2017)。このグループは、おしなべてサンゴ個体の構造が端正で、隔壁のハマサンゴ型配列をはっきりと読み取ることが出来る。一方、群体下部に葉状部を持つ樹木状種は、これまでに得た標本はすべてクレードⅧで、P. lichen ベニハマサンゴと同じグループに属する (Kitano et al. 2016, 北野ら 2017)。このグループは、隔壁配列が読み取りにくく全体に荒れた印象を与えるものが多い。本種は P. rus パラオハマサンゴや P. monticulosa サボテンハマサンゴの群体基部の板状部や深所の板状群体と表面観が類似するが、これらの種はサンゴ個体が本種の2/3程度と小さく群体表面の突起上にも分布すること、サンゴ個体が窪まずパリが共骨と同じかそれ以上の高さに達すること、ITSクレードⅢに属すること (Forsman et al. 2009, Kitano et al. 2016, 北野ら 2017) で容易に区別できる。

分布と生態:西表島から奄美大島まで分布する。内湾のやや深いところでは大きな群落を形成することがある。

新称和名の由来:和名は薄い板状の群体形に由来する。和名基準標本は HY-HC11-017 である。

新称和名提唱日:2023-11-12.

備考:担名タイプはアメリカ領サモア、パゴ・パゴ港の水深およそ 15〜33 m から得られており、サンゴ体は横に広がる薄い板状で樹木状部は見られない。学名はこの群体形状に由来する。執筆者の本種標本中にも明らかな樹木状部を持つものはなく、また樹木状種で群体下部に板状部を持つ標本中にも本種に該当するものは今のところ見当たらない。従って、これまで我が国で本種とされてきたもののうち、樹木状部を持つものは別種であり、板状ないし葉状のものは別種または別種混在の可能性がある。

なお、和名クボミハマサンゴは、白井・佐野 (1985) が P. horizontalata に同定した標本に提唱したものであるが、この標本は本種ではなく、この和名を担う種は不明である。

参考:担名タイプの写真

Porites horizontalata Hoffmeister, 1925 ── Holotype in Hoffmeister (1925) pl. 22, figs. 3a, 3b [HathiTrust]

引用文献:

Forsman Z, Barshis D, Hunter C, Toonen R (2009) Shape-shifting corals: Molecular markers show morphology is evolutionarily plastic in Porites. BMC Evol Biol 11: 316. [BioMedCentral]

Hoffmeister JE (1925) Some corals from American Samoa and the Fiji. The Carnegie Institution of Washington, Washington, DC. [HathiTrust]

北野裕子・横地洋之・深見裕伸(2017)日本産ハマサンゴ属(刺胞動物門:イシサンゴ目)の分子系統解析および骨格形態解析. 日本動物分類学会第53回大会, 海洋研究開発機構, 横浜研究所.

Kitano YF, Yokochi H, Tisthammer K, Forsman ZH, Yasuda N, Fukami H (2016) Molecular phylogeny of Porites (Poritidae, Scleractinia, Anthozoa) from Japan. The 22nd International Congress of Zoology and the 87th Meeting of the Zoological Society of Japan Joint Events in Okinawa, Japan, 14–19 Nov. 2016.

西平守孝 (1991) フィールド図鑑 造礁サンゴ 増補版. 東海大学出版会, 東京.

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

杉原薫 (2014) 中城湾サンゴ類標本目録. 琉球大学博物館 (風樹館) 収蔵資料目録第9号. 琉球大学博物館 (風樹館), 西原町. [琉球大学風樹館]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 3. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

執筆者:横地洋之

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開

2024-11-10 図キャプションに標本採集の表記を追記