サンゴ骨格標本の作製と管理
サンゴ骨格標本作製の心構え
言うまでもなくサンゴは重要な海洋生物であるが、安易な気持ちで採集し骨格標本を作製しても、後に役立てられることなくゴミとして捨てられかねない。そのため、サンゴを採集し骨格標本を作製しようと思う人は、以下の心構えを参考にされたい。
1 研究・啓蒙目的であること。
2 ラベルを付け長期にわたってしっかりと管理・利用すること。
3 将来的に博物館等の公共の施設に保管を託し第三者の利用に供すること。
なお、サンゴは多くの自治体において採集規制動物に指定されており、採集にあたっては、管轄する自治体の許可が必要となる。また、管轄する漁協の同意が必要とされる場合がある。さらに,誤分布情報源になりかねないので、不要になったからといって、くれぐれも他海域の標本を海岸に遺棄してはならない。
サンゴ骨格標本の作製方法
サンゴ分類は基本的に骨格標本の形態を基に行われる。サンゴの生時は骨格表面を軟体部が被っているので、骨格標本にするためには軟体部を除去する必要がある。一般的な骨格標本の作製方法は以下の順序で行われる。
1 採集した群体の一部を真水 (水道水) に漬ける。
2 ハイターやブリーチ等の漂白剤を水 1 L 当たり 20 ml 程度注いで半日程度放置する。
3 散水ノズルを用いて強い水流で軟体部を洗い流す。
4 上記2・3を数回繰り返して、完全に軟体部を取り除く。
5 よく乾燥させる。
標本の管理
標本を永久管理するために、紫外線、高温、高湿度、カビ、ほこりの影響ができる限り少ない環境で保管し、劣化を防ぐ必要がある。また、必ず標本にはラベルを付し、紛失の防止や第三者がいつでも利用できる状態に整えておくことが必要とされる。なお、ラベルはピーチコート等の耐水紙を用い、保存性が高い墨汁や鉛筆、もしくはカーボントナー等の顔料で印字を行う必要がある。図1に日本造礁サンゴ分類研究会が推奨するラベルの様式例を以下に示す。
図1. 標本ラベルの例.
なお、本WEB図鑑では種記載において掲載した写真の標本番号が記されている。標本番号の略名の所蔵機関もしくは管理者は以下のとおりである。
AMBL (天草臨海実験所)、BIK (黒潮生物研究所)、CMNH (千葉県立中央博物館付属海の博物館)、GS (鈴木 豪)、GSH (島田剛)、HY
(横地洋之)、IORD (東海大学海洋研究所)、KCA (鹿児島水族館)、KI (伊藤馨司)、KIW (岩尾研二)、KS (下池和幸)、MIY-KK
(梶原健次)、MIY-HM (松本尚)、MUFS (宮崎大学水産学科)、YFK (北野裕子)、SMBL (瀬戸臨海実験所)、SMP (錆浦海中公園研究所)。
執筆者:野村恵一
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更新履歴:
2023-11-12 公開