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Acroporidae ミドリイシ科
Acropora ミドリイシ属

Acropora carduus (Dana, 1846)
(Figs. 1-6)

Madrepora carduus Dana, 1846: 464 [Fiji]; 1849: pl. 36, fig. 2.

Madrepora prolixa Verrill, 1866: 22 [Amami-Oshima].

Acropora prolixa: Verrill 1902: 237, pl. 36, figs. 3, 3a, pl. 36A, figs. 3, 3a, pl. 36F, fig. 14.

ツツミドリイシ 白井 1977 (?)
(図1-6)

ツツミドリイシ 白井, 1977: 487 (一部), 生時写真2枚 (Acropora striata として), ただし誤同定の可能性あり.

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図1-3. SEK180. 石垣島名蔵湾, 水深 5 m. 2016-05-10. 鈴木豪.

図4-6. SEK398. 石垣島名蔵湾, 水深 7 m. 2016-05-10. 鈴木豪.

形態:群体は洗瓶ブラシ状で、主枝は 20~30 cm に達する。根本は、部分的に死亡して骨が露出していることが多い。中軸サンゴ個体は、主枝の先端では直径が 1.5~1.9 mm 程度、分枝の先端では 1.5~1.6 mm 程度である。突出は 1.5 mm 程度。枝径は、先端部 (放射サンゴ個体1列目) で 2~5 mm 程度と変異が大きい。放射サンゴ個体は、幅 0.7~1.5 mm 程度で中軸サンゴ個体よりやや小さい。放射サンゴ個体の形状は、着生管状が多く、中軸サンゴ個体から離れてもあまり筒状に伸長しない。口の形は、円形。色彩は灰褐色で口だけ薄黄色になる群体が多い。

識別点:洗瓶ブラシ状の種は、互いに類似しており、本種の放射サンゴ個体は細かく密であること、口先が薄黄色などから他種と区別することができるが、骨格のみで Acropora echinata トゲヅツミドリイシと区別することは困難な場合が多い。分子系統解析 (ミトコンドリア非翻訳領域) においても、本種は HORRIDA GROUP に含まれ、他の洗瓶ブラシ状種と明確に区別可能である。

分布と生態:主に、内湾の深み (水深 7~20 m) や礁斜面の下部 (水深 15 m 以深) に生息する。沖縄では、あまり大群落はみられない。

和名の由来:末枝が筒状になることに由来すると考えられる。元々、白井 (1977) は A. striata に対してツツミドリイシと新称したが、白井・佐野 (1985) で A. longicyathus をツツミドリイシ、A. carduus をホソヅツミドリイシに見直した。しかし、内田・福田 (1989) によって、白井 (1977) の誤同定が指摘され、生時写真は A. carduus ツツミドリイシ、骨格写真は A. longicyathus オオヅツミドリイシと再整理された。ただし、白井 (1977) に掲載されている生時写真2枚と骨格写真1枚は、いずれも A. carduus とは別種である可能性がある (生時は A. vaughani、骨格は A. longicyathus のように見える)。別種であった場合、和名なしとなるため、現在検討中である。

備考:洗瓶ブラシ状種の和名は、混乱が続いている。本標本は、遺伝子によって他種と明確に区別され、原記載との比較によって、A. carduus と同定したが、白井 (1977) や内田・福田 (1989) で同定された A. carduus についてはDNAサンプルが得られないため、同じ種と判断するのは難しい。

参考:担名タイプの写真等

Madrepora carduus Dana, 1846 ── in Dana (1849) pl. 36, fig. 2 [Smithson Lib]; Syntypes, USNM 277 [Smithson NMNH]; USNM 278 [ditto]

Acropora prolixa (Verill, 1866) ── in Verill (1902) pl. 36A, figs. 3, 3a [BHL], pl. 36F, fig. 14 [ditto]; "Type", USNM 414 in Hoffmeister (1925) pl. 16, 1c [HathiTrust]

引用文献:

Dana JD (1846, 1849) United States exploring expedition during the years 1838, 1839, 1840, 1841, 1842 under the command of Charles Wilkes, U.S.N. Vol. VII. Zoophytes. Lea and Blanchard, Philadelphia. [Smithson Lib: text, plates]

Hoffmeister JE (1925) Some corals from American Samoa and the Fiji. The Carnegie Institution of Washington, Washington, DC. [HathiTrust]

白井祥平 (1977) 原色沖縄海中動物生態図鑑. 新星図書, 那覇.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣

内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第9巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.

Verrill AE (1866) Synopsis of the polyps and corals of the North Pacific Exploring Expedition, under Commodore C. Ringgold and Captain John Rodgers, U.S.N., from 1853 to 1856. Collected by Dr. Wm. Stimpson, Naturalist to the Expedition. With descriptions of some additional species from the west coast of North America. Part III. Madreporaria. Commun Essex Inst 5: 17-50, pls. 1-2. [BHL]

Verrill AE (1902) Notes on corals of the genus Acropora (Madrepora Lam.) with new the descriptions and figures of types, and of several new species. Transactions of the Connecticut Academy of Arts and Sciences 11: 207-266, pls. 10-36F. [BHL]

執筆者:鈴木豪

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更新履歴:

2023-11-12 公開