ミドリイシ科 Acroporida
ミドリイシ属 Acropora
Acropora gemmifera (Brook, 1892)
(Figs. 1-8)
Madrepora gemmifera Brook, 1892: 457 [Rocky Island, Great Barrier Reef]; 1893: 142, pl. 21.
Acropora (Acropora) gemmifera: Veron & Wallace 1984: 170, figs. 395-403; Wallace 1999: 120, pl. 7, figs. A-I.
Acropora gemmifera: Shirai & Sano 1985: 193, fig. 20; Nishihira & Veron 1995: 92 (part), 1st fig.; Veron 2000: vol. 1, 324 (part), figs. 1, 2, 5-7, 1 skeleton fig.; Wallace, Done & Muir 2012: 72, fig. 34.
not Acropora gemmifera: Nishihira & Veron 1995: 92 (part), 2nd fig., 1 skeleton fig. (= Acropora humilis); Veron 2000: vol. 1, 324 (part), figs. 3, 4 (= Acropora digitifera).
オヤユビミドリイシ 白井, 1977
(図1-8)
オヤユビミドリイシ 白井 1977: 499 (一部), 右上の2図 (Acropora humilis として); 白井・佐野 1985: 195, 図25 (Acropora humilis として); 内田・福田 1989: 71, 2図, 78, 2図; 西平・Veron 1995: 92 (一部), 最上段の図.
フトユビミドリイシ:白井・佐野 1985: 193, 図20.
非 オヤユビミドリイシ:錆浦海中公園研究所 1977: 13, 4図 (=ニホンミドリイシ); 白井 1977: 499 (一部), 左上の図と下の2図
(=ツツユビミドリイシ); 西平・Veron 1995: 92 (一部), 2段目の図, 骨格写真(=ツツユビミドリイシ).
図1, 2. MYK-14-111. 八重干瀬アカズー・ミジュキ南, 水深 2 m. 2014-09-06.
図3, 4. TAN-21. 種子島大久保港, 水深 3 m. 2017-11-03.
図5-8. AMO-185. 奄美大島大浜海浜公園, 水深 6 m. 2017-09-14.
図の標本採集・撮影は全て下池和幸.
形態:群体形はコリンボース状または指状で、板状の基部水平面から先細りした枝が上方または斜め上方へと伸長する。直立枝は均等な間隔で林立しており、隣接する枝は基部で密接する。枝の太さは 10~25 mm、枝の長さは 60 mm 以下であるが、波当たりの強い場所ほど丈が短く円錐形になる傾向にある。中軸サンゴ個体はやや大きく、外径は 2.8~4.2 mm、内径は 1.0~1.6 mm である。隔壁は良く発達し、1次隔壁は 3/4R 以下、2次隔壁は 2/3R 以下である。放射サンゴ個体は短い管状または鼻状で欠刻開口。枝の全面を通して大型個体と埋没個体の2型があり、大型個体は枝先から根元に向けて大きくなる傾向にある。大型個体の1次隔壁は 2/3R まで発達するが、2次隔壁は短く 1/4R 以下である。共骨は緻密な網目状で、側偏細分棘が密生し、荒い肋状が密に並ぶこともある。そのため、表面は滑らかな印象を与える。骨格は強固である。
識別点:類似の Acropora humilis ツツユビミドリイシは中軸サンゴ個体がより大きく、放射サンゴ個体は整った管状で開口部の欠刻は僅かである。かつて本種の1タイプとされていた A. japonica は直立枝が円錐形の短い指状で、直立枝間の基部に広い空間があるなどの点が異なる。
分布と生態:西太平洋・インド洋・紅海のサンゴ礁海域に広く分布し、国内では八重山諸島から種子島にかけて分布する。波当たりの強い礁斜面の浅所や礁池でごく普通にみることができるが、北限の種子島では希である。色彩は赤褐色、黄褐色、緑などで、枝の先端部は淡くなることが多い。
和名の由来:本種の和名は、白井 (1977) により与えられたが、由来については述べられていない。慣例としてミドリイシ属の指状群体は人の指に例えることが多く、本種の場合、太い親指のような直立枝の特徴を捉えたものと思われる。かつて、A. humilis にオヤユビミドリイシの和名が与えられていたため、白井・佐野 (1985) は本種にフトユビミドリイシの和名を付して区別した。
参考:担名タイプの写真
Madrepora gemmifera Brook, 1892 ── in Brook (1893) pl. 21 [BHL]. NHM 1892.6.8.114-116 の一つと思われる. Lectotype?
引用文献:
Brook G (1892) Preliminary descriptions of new species of Madrepora in the collection of the British Museum. Part II. Ann Mag Nat Hist 10: 451-465. [BHL]
Brook G (1893) Catalogue of the Madreporarian Corals in the British Museum (Natural History), Vol. 1. The genus Madrepora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]
西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.
錆浦海中公園研究所 (1977) 串本産イシサンゴ類. 串本海中公園センター, 串本.
白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.
内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第9巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.
Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
Wallace CC (1999) Staghorn Corals of the world: A Revision of the Coral Genus Acropora (Scleractinia; Astrocoeniina; Acroporidae) Worldwide, with Emphasis on Morphology, Phylogeny and Biogeography. CSIRO Publishing, Melbourne.
参考:Wallace CC, Done BJ, Muir PR (2012) Revision and Catalogue of Worldwide
Staghorn Corals Acropora and Isopora (Scleractinia: Acroporidae) in the Museum of Tropical Queensland. Queensland
Museum, Brisbane. [ResearchGate]
執筆者:下池和幸
Citation:
更新履歴:
2023-11-12 公開
2023-03-26 引用文献「串本海中公園センター (1977)」を「錆浦海中公園研究所 (1977)」に訂正
2024-11-10 図キャプションに標本採集・撮影の表記を追記