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Acroporidae ミドリイシ科
Acropora ミドリイシ属

Acropora globiceps (1846)
(Figs. 1-7)

Madrepora globiceps Dana, 1846: 454 [Tahiti]; 1849: pl. 34, fig. 3.

Acropora (Acropora) globiceps: Wallace 1999: 118, pl. 6, figs. A-I.

"Acropora globiceps ?": Hayashibara, Seno & Yoneyama 2008: 94, 2 photos in the upper left of fig. 1.

Acropora globiceps: Wallace, Done & Muir 2012: 76, fig. 36.

not Acropora globiceps: Veron 2000: vol. 1, 317, figs. 2-6, 1 skeleton fig. (= Acropora spp.).

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図1-4. AMO-139. 奄美大島大浜海浜公園, 水深 1 m. 2017-09-11. 下池和幸. 中軸サンゴ個体の隔壁は GEMMIFERA GROUP のなかで短い傾向にある (図4).

図5, 6. MIY167. 宮古島保良湾沖礁斜面, 水深 3-4 m. 2014-01-23. 鈴木豪.

図7. 深見ら (2008) のDNA比較に使用した群体. 慶良間諸島阿嘉島, 水深 2 m. 2006-01-19. 林原毅.

形態:群体形は、沖ノ鳥島で見られるものはコリンボース指状で、直立枝は基部の直径が 12~25 mm、長さ 6 cmに達する。一方、琉球諸島で見られるものは、被覆状または板状の付着基部から短い指状の直立枝が伸びる被覆指状である。いずれも直立枝は先細りにならず先端は丸い。中軸サンゴ個体のサイズには変異があるが、放射サンゴ個体と比してあまり大きくならない。突出は僅かだが側面は直立し、開口部はラッパ状に開く (縦断面はM字形) 傾向にある。GEMMIFERA GROUP のなかで隔壁は短い傾向にあり、1次隔壁は 1/2R 以下、2次隔壁は 1/3R 以下である。放射サンゴ個体は開口部の外唇が丸い管状または鼻状で、内唇は僅かに欠刻する。配列は不規則だが外唇はあまり突出しないので、枝の輪郭は凹凸が少なく滑らかに見える。1次隔壁は 1/4R 以下、2次隔壁は棘が見られる程度で、欠くこともある。共骨は側偏細分棘が密生した緻密な網目状で、個体の側面では側偏細分棘が列をなして並び、荒い肋状になることもある。骨格は強固である。

識別点:一般的に本種はこれまで国内で認識されていなかったので、他の種と混同されていた可能性がある。群体形や放射サンゴ個体の形状は Acropora humilis ツツユビミドリイシに似ているが、本種は中軸サンゴ個体が小さく側面が直立し、莢壁が薄く、開口部がラッパ状に開く傾向にあり、隔壁が短いことから識別できる。中軸サンゴ個体が極めて小さい群体は A. monticulosa スボミミドリイシと混同するかもしれないが、スボミミドリイシの放射サンゴ個体は開口部がほとんど欠刻しないのに対して、本種は開口部の内唇が欠刻する点で識別できる。

分布と生態:太平洋中南部・熱帯域の島嶼国を中心に広く分布する。沖ノ鳥島では優占上位種となっているが (Kayanne et al. 2012)、琉球諸島では希である。礁池内の岩礁や礁斜面上部で見られ、色彩は淡褐色である。

備考:深見ら (2008) は、沖ノ鳥島産とグアム産の A. globiceps について遺伝子解析を行った結果、地域による差異は見いだせず、地理的隔離の傍証は得られなかったとしている。また当該学会発表においては、沖縄でも A. humilis に混じって、本種の特徴を有し、遺伝子解析でも沖ノ鳥島産の A. globiceps と一致する群体が見つかり (図7)、A. humilis とは別種であることが強く示唆された。このことから琉球諸島にも A. globiceps が分布すると考えられる。奄美大島と宮古島で得られた標本については遺伝子解析を行っていないが、その形態から A. globiceps である可能性が高い。しかし、沖ノ鳥島では直立枝が長いコリンボース指状の群体形が普通であるのに対して (林原ら 2006)、琉球諸島で見られた群体はいずれも直立枝が短い被覆指状であることから、地域的な固有種か交雑種である可能性も拭いきれない。さらに多くの群体で遺伝学的な検討が必要である。

引用文献:

Dana JD (1846, 1849) United States exploring expedition during the years 1838, 1839, 1840, 1841, 1842 under the command of Charles Wilkes, U.S.N. Vol. VII. Zoophytes. Lea and Blanchard, Philadelphia. [Smithson Lib: text, plates]

深見裕伸・林原毅・石岡昇・北野倫夫・鈴木豪・妹尾浩太郎・Kerr AM (2008) 沖ノ鳥島とその周辺地域のミドリイシ類の遺伝的比較. 日本サンゴ礁学会第11回大会講演要旨集 p 66.

林原毅・妹尾浩太郎・米山純夫 (2006) 沖ノ鳥島礁池内の造礁サンゴ. 東京都水産海洋研究報告 1: 87-95. [AgriKnowledge]

Kayanne H, Hongo C, Okaji K, Ide Y, Hayashibara T, Yamamoto H, Mikami N, Onodera K, Ootubo T, Takano H, Tonegawa M, Maruyama S (2012) Low species diversity of hermatypic corals on an isolated reef, Okinotorishima, in the northwestern Pacific. Galaxea J Coral Reef Stud 14: 73-95. [J-Stage]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Wallace CC (1999) Staghorn corals of the world: A revision of the coral genus Acropora (Scleractinia; Astrocoeniina; Acroporidae) worldwide, with emphasis on morphology, phylogeny and biogeography. CSIRO Publishing, Melbourne.

Wallace CC, Done BJ, Muir PR (2012) Revision and catalogue of worldwide staghorn corals Acropora and Isopora (Scleractinia: Acroporidae) in the Museum of Tropical Queensland. Queensland Museum, Brisbane. [ResearchGate]

執筆者:下池和幸・林原毅

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更新履歴:

2023-11-12 公開