Top page科・属リストAcroporidaeAcroporaAcropora papillare

Acroporidae ミドリイシ科
Acropora ミドリイシ属

Acropora papillare Latypov, 1992
(Figs. 1-12)

Acropora pyramidalis: Shirai 1977: 494, 1 fig.

Acropora papillare Latypov, 1992: 121, fig. 6 [Ba Island, Vietnam]; Latypov 2014: 147, fig. 31(2); Veron 2000: vol. 1, 345 (part), 1 skeleton fig.; Wallace, Done & Muir 2012: 148, 1 fig.; Sugihara et al. 2015: 32, 3 figs.

Acropora indiana Wallace, 1994: 963, fig. 4 [Rowley Shoals, Australia].

Acroopra (Acropora) papillare: Wallace 1999: 244, pl. 39, figs. A-I.

not Acropora papillare: Veron 2000: vol. 1, 345 (part), fig. 5 (= Acropora aspera?).

サンカクミドリイシ 白井, 1977
(図1-12)

サンカクミドリイシ 白井, 1977: 494, 1図 (Acropora pyramidalis として).

タケノコミドリイシ 杉原ら, 2015: 32, 3図.

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

図1, 2. MYK-14-026. 八重干瀬, 水深 2 m. 2014-09-02. 下池和幸. 円錐形の枝を伸ばす群体.

図3, 4. MIY170. 宮古島保良, 水深 1~2 m. 2014-01-23. 鈴木豪. 枝が短く岩盤を被覆するように成長した群体.

図5-8. MIY-KK2016-095. 奄美大島実久, 水深 3 m. 2016-10-06. 梶原健次. 枝の長さが不揃いな群体.

図9-12. AMT-94. 西表島網取湾, 水深 3 m. 2014-07-02. 下池和幸. 枝先端の丸みが強い群体.

形態:群体形は、コリンボース状を基本とし、強固で被覆状に広がる群体基部の上に、底部の直径が 20~40 mm の太い枝が立ち上がる。枝は円筒形や円錐形で先端は丸みを帯び、通常長さは 10 cm 程度まで。同じ群体でも枝の長さが不揃いであることが多い。枝はあまり分岐せず2次分枝まで見られるが、末枝は長く伸びない。

中軸サンゴ個体は突出せず、外径 2~3 mm、内径 1~1.3 mm。1次隔壁の長さは 1/3R 以下である。2次隔壁は 1/4R 以下で発達が悪く、痕跡的になることがある。放射サンゴ個体の形状は、短い外唇が水平方向に張り出す唇弁状、開口は円形状、外径は 1.8mm 以下で、大きさがほぼ揃い密に配列する。1次隔壁の長さは 1/3R 以下である。2次隔壁も 1/3R 以下であるが、発達が悪く 1/4R 程度に留まることが多く、痕跡的になることもある。共骨は、放射サンゴ個体の外側で肋状、放射サンゴ個体間では網目状となり、表面に単一尖端棘または側偏棘が密集する。

識別点:本種は、中軸サンゴ個体が突出しないことで、他のミドリイシ属の種と異なる。群体の外観が Acropora monticulosa スボミミドリイシに似ることがあるが、この種の放射サンゴ個体が管状であるのに対して、本種では放射サンゴ個体が唇弁状で外唇が水平方向に張り出すことで区別できる。

分布と生態:国内では、種子島以南のサンゴ礁域に分布するが、小笠原では確認されていない。主に波あたりが強く、水深の浅い岩盤上に生育する。そのためか、ミドリイシ属としては骨格がきわめて緻密で強固である。生時、褐色から淡褐色を呈す。

和名の由来:杉原ら (2015) は、それまで本種に対する和名がなかったことから、枝の外観がタケノコに似ることにちなんでタケノコミドリイシの和名を与えたが、下池 (2023) は、従来 Acropora mointiculsa の和名とされてきたサンカクミドリイシの担名標本 (白井 1977, A. pyramidalis として) は A. papillare であることを指摘している。よって、A. papillare の和名はサンカクミドリイシとするのが妥当で、タケノコミドリイシは新参異名となる。なお、白井 (1977) はサンカクミドリイシの和名の由来については述べていない。おそらく短い円錐形の枝を横から見たときに三角形のシルエットをなすことにちなんでいるのではないかと思われる。

備考:執筆者は Latypov (1992) および Wallace (1994) を入手することができず読んでいないが、それらで新種記載された A. papillare および A. indiana のホロタイプを確認できたことから、シノニムリストに掲載し、両文献のページ番号と図番号は Wallace (1999) から引用した。

参考:担名タイプの写真

Acropora papillare Latypov, 1992 ── Holotype, IMBR 1/9579 in Latypov (2014) fig. 31(2) [Sci Publ G]

Acropora indiana Wallace, 1994 ── Holotype, MTQ G46445; Paratype, WAM Z902 [W Aus Mus]

引用文献:

Latypov YY (1992) Scleractinian corals of Vietnam. Part II. Acroporidae (In Russian). Nauka, Moscow.

Latypov YY (2014) Scleractinian corals of Vietnam. Science Publishing Group, New York. [Sci Publ G]

白井祥平 (1977) 原色沖縄海中動物生態図鑑. 新星図書, 那覇.

下池和幸 (2023) Acropora monticulosa (Brüggemann, 1879) スボミミドリイシ. 日本造礁サンゴ分類研究会 (編) 日本産有藻性サンゴ類WEB図鑑. Accessed at: https://coralmonogr.jpn.org/Acropora_monticulosa.html on 2023-11-12.

杉原薫・野村恵一・横地洋之・下池和幸・梶原健次・鈴木豪・座安佑奈・出羽尚子・深見裕伸・北野裕子・松本尚・目﨑拓真・永田俊輔・立川浩之・木村匡 (2015) 日本の有藻性イシサンゴ類. 種子島編.国立環境研究所生物・生態系環境研究センター, つくば .[国立環境研究所]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville

Wallace CC (1994) New species and a new species-group of the coral genus Acropora (Scleractina : Astrocoeniina : Acroporidae) from Indo-Pacific locations. Invertebrate Taxonomy 8: 961-988.

Wallace CC (1999) Staghorn corals of the world: A revision of the coral genus Acropora (Scleractinia; Astrocoeniina; Acroporidae) worldwide, with emphasis on morphology, phylogeny and biogeography. CSIRO Publishing, Melbourne.

Wallace CC, Done BJ, Muir PR (2012) Revision and catalogue of worldwide staghorn corals Acropora and Isopora (Scleractinia: Acroporidae) in the Museum of Tropical Queensland. Queensland Museum, Brisbane. [ResearchGate]

執筆者:梶原健次

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開