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Acroporidae ミドリイシ科
Acropora ミドリイシ属

Acropora pulchra (Brook, 1891)
(Figs. 1-8)

Madrepora pulchra Brook, 1891: 468 [Cocos (Keeling) Island]; 1893: 44, pl. 28, figs. A-C.

Acropora (Acropora) pulchra: Veron & Wallace 1984: 272, figs. 659-666; Wallace 1999: 236, pl. 55, figs. A-I.

Acropora pulchra: Shirai & Sano 1985: 199, fig. 37: Uchida & Fukuda 1989: 130, 2 figs.; Nishihira & Veron 1995: 119, 3 figs.; Veron 2000: vol. 1, 344, figs. 1-4, 1 skeleton fig.; Wallace Done & Muir 2012: 162, fig. 79.

? Acropora pulchra: Uchida & Fukuda 1989: 129, 2 figs.

オトメミドリイシ 白井,1985
(図1-8)

オトメミドリイシ 白井 in 白井・佐野, 1985: 199, 図37;内田・福田 1989: 130, 2図;西平・Veron 1995: 119, 3図.

? オトメミドリイシ:内田・福田 1989: 129, 2図.

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写真1-4: MIY-KK2014-131. 西表島網取湾, 水深 2 m. 2014-07-01. 梶原健次. 放射サンゴ個体が比較的発達した群体.

写真5-8: MIY-KK2016-009. 多良間島, 水深 4 m. 2016-02-14. 梶原健次. 放射サンゴ個体の発達が比較的弱い群体.

形態:群体は、ほぼまっすぐ伸びる樹木状で、大きくなると高さが 50 cm を超えるようになる。枝は 2.5~5 cm 程度の間隔で、30°~90° の角度で分枝するが、分枝回数は概ね2回までである。枝は先細りで、太さが安定した部分の直径は 1 cm 前後、群体基部や老成部分では 2 cm 程度までになる。

中軸サンゴ個体は外径 2~3 mm 程度で、2.0~2.5 mm ほど突出する。隔壁の長さは、1次隔壁で 2/3R 以下、2次隔壁で 1/4 以下である。放射サンゴ個体は、大小2タイプに分けられるが大きさはやや不揃いで、大小の個体数比率は一定しない。大型個体は外径 1 mm 前後になる。大型個体は水平唇状開口の唇弁状で、外唇が枝の成長軸に対して直角に近い方向へ 1 mm ほど伸びる。内唇はほとんど発達しない。隔壁の長さは、1次隔壁で 1/2R 以下、2次隔壁で 1/4R 以下であるが、方向隔壁以外は発達が弱いことがある。小型個体は、大型個体の半分以下のサイズで、半埋在する。骨格は多孔質で、個体外壁は肋状、共骨は網目状で偏平棘をともなう。

識別点:本種 Acropora pulchra オトメミドリイシと、A. aspera ヒメマツミドリイシの2種がミトコンドリアの調節領域の配列に基づく系統樹では近縁とされ、これに形態上の類似性から A. teres (和名なし) を加えた3種を本図鑑では ASPERA GROUP としてまとめている。このうち A. teres は放射サンゴ個体の莢壁がほとんど発達しないことから、識別は容易である。一方、オトメミドリイシとヒメマツミドリイシは概観がやや似るが、前者は放射サンゴ個体の莢壁が小さく個体配列が不揃いなのに対し、後者では莢壁がやや長く伸び個体配列はきれいな鱗状となる。

分布と生態:西表島から奄美大島まで、および小笠原のサンゴ礁域に分布する (小笠原の記録は立川ら (1991) と野村 (2017) による)。主に礁原や礁池などで潮下帯から水深 20 m以 浅の静穏環境でみられる。群体は固い基盤上のほか、アマモ場や砂質底の上で生育することも多い。

和名の由来:和名は、白井・佐野 (1985) にて「白井新称」として与えられているが、由来については述べられていない。


参考:担名タイプの写真

Madrepora pulchra Brook, 1891 ── Holotype, NHM 84.2.16.1 in Bernard et al. (1893) pl.28, fig. A [BHL]

引用文献:

Brook G (1893) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 1. Printed by order of the Trustees of the British Museum, London. [BHL]

Brook G (1891) Descriptions of new species of Madrepora in the collections of the British Museum. Ann Mag Nat Hist 8:458-471. [zenodo]

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

野村恵一 (2017) 小笠原諸島の有藻性イシサンゴ群集. In: 東京都小笠原支庁. 平成28年度小笠原諸島海域生態調査委託報告書. 小笠原自然文化研究所, 小笠原, pp 95-179. [小笠原世界遺産センター]

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

立川浩之・菅沼弘行・佐藤文彦 (1991) 父島列島・母島列島の造礁サンゴ類. In: 東京都立大学小笠原研究委員会 (編) 第二次小笠原諸島自然環境現況調査報告書. 東京都立大学, 東京, pp 285-296.

内田紘臣・福田照雄 (1989) 沖縄海中生物図鑑 第9巻 サンゴ. 新星図書出版, 浦添.

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

Wallace CC (1999) Staghorn corals of the world: A revision of the coral genus Acropora (Scleractinia; Astrocoeniina; Acroporidae) worldwide, with emphasis on morphology, phylogeny and biogeography. CSIRO Publishing, Melbourne

Wallace CC, Done BJ, Muir PR (2012) Revision and catalogue of worldwide staghorn corals Acropora and Isopora (Scleractinia: Acroporidae) in the Museum of Tropical Queensland. Queensland Museum, Brisbane. [ResearchGate]

執筆者:梶原健次

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更新履歴:

2023-11-12 公開