Acroporidae ミドリイシ科
Acropora ミドリイシ属
Acropora sp. 1 aff. digitifera
(Figs. 1-6)
コユビミドリイシ隠蔽種
(図1-6)
図1, 2. AMSL-0837. 阿嘉島ヒズシ. 下池和幸. 1994-08-23.
図3. AMSL-0838. 阿嘉島ヒズシ. 林原毅. 1994-08-23.
図4, 5. AMSL-0838? 阿嘉島ヒズシ. 下池和幸. 1994-08-23.
図6. AMSL-120703-3? 座間味島ニタ. 林原毅. 2012-07-03.
形態:群体は強固な板状で、外縁部のごく狭い範囲を除いて水平方向の枝分かれや隙間はない。板状部上面には短い円錐形の直立枝が密にあり、縁辺部ではやや外側に向いている。中央部における直立枝の基部の直径は7~12mm、長さは20mmくらいまで。中軸サンゴ個体は外径 2.0~2.9 mm、内径は 0.6~1.1 mm。隔壁は2サイクルで、1次隔壁は 1/2R 以下、2次隔壁が 1/3R 以下。放射サンゴ個体は短い管状で枝に密着しており、群体によっては長く突出したものが混じったり、同じ大きさのものが列をなす傾向が見られる。管状の放射サンゴ個体の間には半埋没もしくは埋没状の個体が僅かに混じるが、板状部ではそのような個体が占めている。管状の放射サンゴ個体は円形または鼻形開口だが、時に欠刻開口。隔壁は発達が悪く、1次隔壁は 1/2R まで、2次隔壁はほとんど欠く。共骨は網目状で側偏細分棘が密生し、サンゴ個体の側面では側偏細分棘が列をなして並ぶ。
識別点:本種は Carden Wallace 博士が Acropora digitifera と同定したほどで、サンゴ個体の形状においては区別がつかないが、群体形によって比較的容易に判別できる。即ち、A. digitifera は波あたりの強い浅所では板状 (指状) となる傾向があるが基本的にコリンボース状であるのに対し、本種は明らかな板状であり、本種の直立枝は小さく密で、基部から先端にかけて一様に細くなっている
(つまり円錐形) のに対し、A. digitifera ではより長く、基本的に基部近くでは円柱状になっている。
分布と生態:慶良間諸島 (Hayashibara & Shimoike 2002) と沖縄本島 (Nakajima et al. 2012, Ohki et al. 2015) の他に宮古島 (梶原 2019, 梶原ら 2020) でも記録がある。阿嘉島周辺における生息環境としては、ほぼ波あたりの強い大潮時に干出するような浅所に限られている。生時の色は、黄褐色で枝の先端部が青色やピンク色を帯びるものが多いが、一様に紫色のものもある。阿嘉島における本種の産卵期は7~8月で、A. digitifera の産卵期5~6月と重なることがなく、生殖隔離が成立していることから独立種と判断された (Hayashibara & Shimoike
2002)。
引用文献:
Hayashibara T, Shimoike K (2002) Cryptic species of Acropora digitifera. Coral Reefs 21(2): 224-225.
梶原健次(2019)造礁サンゴ.pp.103-132. 宮古島市史編さん委員会(編),宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(本編).宮古島市教育委員会,宮古島市.
梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之(2020)宮古諸島造礁サンゴ目録.p.73-91. 宮古島市史編さん委員会(編),宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊).宮古島市教育委員会,宮古島市.
Nakajima Y, Nishikawa A, Iguchi A, Sakai K (2012) The population genetic approach delineates the species boundary of reproductively isolated corymbose acroporid corals. Molecular Phylogenetics and Evolution 63: 527-531.
Ohki S, Kowalski RK, Kitanobo S, Morita M (2015) Changes in spawning time
led to the speciation of the broadcast spawning corals Acropora digitifera and the cryptic species Acropora sp. 1 with similar gamete recognition systems. Coral Reefs 34: 1189–1198.
執筆者:林原毅
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更新履歴:
2023-11-12 公開
2024-11-10 図キャプションに標本採集・撮影者の表記方法を変更