Top page科・属リストFungiidaeHeliofungia

Fungiidae クサビライシ科

Heliofungia Wells, 1966

Fungia (Heliofungia) Wells, 1966: 239.

Heliofungia: Veron & Pichon, 1980: 125.

パラオクサビライシ属 西平・Veron, 1995

イソギンチャククサビライシ属 白井 in 白井・佐野, 1985: 230.

パラオクサビライシ属 西平・Veron, 1995: 241.

本属に含まれる日本産種

Heliofungia actiniformis (Quoy & Gaimard, 1833) パラオクサビライシ

本属の解説

属の特徴:サンゴ体は非固着性で単口性。 サンゴ体はほぼ円形からわずかに楕円形で、やや厚みのある円盤状。低次隔壁の鋸歯は葉状で強大。肋は低次・高次による大きさの差はほとんどなく、小さい鋸歯に縁どられる。サンゴ体壁は無孔。成長したサンゴ体でも底面中央部に生育初期の付着痕が残る。軟体部は肉厚で、昼間でも長い触手を多数伸ばし、触手先端の頂球は大きく淡色である (注)。

注:Heliofungia は Wells (1966) により Fungia の亜属として Fungia actiniformis Quoy & Gaimard, 1833 をタイプ種として設立された。その後 Veron & Pichon (1980) により属のランクに変更され、H. actiniformis のみから構成される、クサビライシ科の中では形態的に極めて特徴的な属として認識されてきた。しかしながら、Gittenberger et al. (2011: 126) により、分子系統解析の結果を受けて従来は別属とされていた Danafungia fralinae (Nemenzo, 1955) が Heliofungia に移されたため、本属は形態的に大きく異なる2種を含むこととなった (Hoeksema & Cairns 2024 など)。上述の属の特徴は属のタイプ種である H. actiniformis の形質に基づくものである。現在本属に含まれている H. fralinae は、隔壁縁辺に細かい尖った鋸歯 ( 1 cm あたりの鋸歯数は15~25) を持つこと、低次肋は突出し縁辺に長く尖った棘 ( 1 cm あたりの棘の数は8~22) を持つが、高次肋は突出せず縁辺に棘を欠くか棘がある場合も痕跡的であること、生時に触手を伸長させるがその長さはパラオクサビライシより短く、淡褐色半透明で頂球は小さく紫色であることなどの特徴を持つ (Hoeksema 1989)。

タイプ種:Fungia actiniformis Quoy & Gaimard, 1833 [=Fungia (Heliofungia) actiniformis ](原指定 によるタイプ種)

学名の由来:“Gr: helios, sun; L: fungus, mushroom. Describing the shape of the coral and the prominent tentacles, resembling rays of the sun”. ギリシャ語の太陽を意味する helios とラテン語のキノコを意味する fungus より、本属サンゴの形態および顕著な触手の様子を、太陽から放たれる光線に見立てたもの (Wood 1983)。

和名の由来:白井・佐野 (1985) は Heliofungia にイソギンチャククサビライシ属の和名を示し、命名者を (白井) とした。西平・Veron (1995) は Heliofungia にパラオクサビライシ属の和名を与えた。時系列的には前者が早く命名されているが、現在はパラオクサビライシ属が一般的に使用され、イソギンチャククサビライシ属は全く使われていないと考えられるため、和名の安定を図り混乱を避ける観点から、本稿では西平・Veron (1995) の用例に従い、Heliofungia の和名をパラオクサビライシ属とすることを提唱する。

備考:Gittenberger et al. (2011: 125) は分子系統学的な検討の結果 Danafungia fralinae (Nemenzo, 1955) は Danafungia scruposa (Klunzinger, 1879) (Danafungia のタイプ種) よりも Heliofungia actiniformis パラオクサビライシに近縁であるとして、同種を Heliofungia に移し Heliofungia fralinae とした。パラオクサビライシと H. fralinae は隔壁や肋の形状などの巨視的な形質はかなり異なるが、Gittenberger et al. (2011) によると両者の肋の鋸歯の微視的形質は類似するとされる。

引用文献:

Gittenberger A, Reijnen BT, Hoeksema BW (2011) A molecularly based phylogeny reconstruction of mushroom corals (Scleractinia: Fungiidae) with taxonomic consequences and evolutionary implications for life history traits. Contrib Zool 80: 107-132 [ResearchGate]

Hoeksema BW, Cairns S (2024) World List of Scleractinia. Heliofungia Wells, 1966. Accessed through: World Register of Marine Species at: https://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=206539 on 2024-03-19.

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.

Veron JEN, Pichon M (1980) Scleractinia of eastern Australia, part III. Families Agariciidae, Siderastreidae, Fungiidae, Oculinidae, Merulinidae, Mussidae, Pectiniidae, Caryophylliidae, Dendrophylliidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

Wells JW (1966) Evolutionary development in the scleractinian family Fungiidae. In: Rees WJ (ed) The Cnidaria and their evolution. Symp Zool Soc London 16: 223–246, 1 pl. Academic Press.

Wood EM (1983) Corals of the world, biology and field guide. T.F.H. Publications, Hardcover.

執筆者:立川浩之

Citation:

 

更新履歴:

2024-04-06 公開

2024-04-11 Gittenberger et al. (2011) の分子系統学的な検討に関する備考を、パラオクサビライシ(種)のページからこのページに移動。