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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora altasepta Nemenzo, 1967
(Fig. 1)

Montipora altasepta Nemenzo, 1967: 16, pl. 4, figs. 2, 3 [Varadero Point, Puerto Galera, Oriental Mindoro, Philippines]; Nomura & Suzuki 2021: 16, fig. 136.

Montipora samarensis: Nishihira & Veron 1995: 64, 1 fig.

not Montipora altasepta: Nishihira & Veron 1995: 65, upper & middle figs. (= Montipora samarensis), lower fig. (= Montipora porites); Veron 2000: vol. 1, 153, figs. 2, 3 (= Montipora samarensis), fig. 4, 1 skeleton fig. (= Montipora porites); Kameda, Mezaki & Sugihara 2013: 20, 67, 2 figs. (= Montipora porites ?).

コツブエダコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021
(図1)

コツブエダコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021: 16, 図136.

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図1. コツブエダコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora altasepta Nemenzo, 1967.

A-H. SMP-HC 2068. 八重山諸島黒島灯台前礁池, 水深 2 m. 野村恵一: A. サンゴ体内面; B. サンゴ体外面; C. 同, 末枝; D-G. 同, 個体とその周囲, (a) 突出する隔壁, (b) 疣状突起; H. サンゴ体内面, 個体とその周囲. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm.

形態:群体はやや込み入ったブッシュ状を成し、明瞭な付着基部を欠き、高さは 15 cm に達する。分枝次数は4次まで認められる。枝は茂みの中側を向いた面 (内面) と外側を向いた面 (外面) とで表面の構造が異なる二面性があり、外面は内面よりも霜柱状突起が発達する。末枝は先細った円柱状を成し時に側扁し、長さは約 15 mm、基部の太さは約 5 mm である。幹の太さは約 8 mm で、断面は側扁した楕円形を成す。

サンゴ体の枝内面の共骨上では霜柱状突起はごく疎らに分布し、莢壁冠はほとんど形成されない。枝外面では霜柱状突起はやや密に分布し、たいてい莢壁冠が形成されるが、莢壁冠上の霜柱状突起の配列は不均一であり、時に互いに接合して個体を取り囲み不完全な個体壁を形成する。枝の内外面共に霜柱状突起はドーム状を成し、直径は約 0.4 mm で、稀に肥大して疣状突起を形成し、直径が 1 mm を越えると周囲に個体を増やし始め新たな枝の基点となる。また、ごく稀に短いコリンも形成される。

個体はやや密に分布し個体間隔は個体2個分以内、個体は基本的に共骨中に埋没し、枝先を除いて共骨面に対して垂直方向を向く。枝先にある個体の一部は下唇状の個体壁を伴い、枝先方向に傾斜する。莢径は平均 0.5 mm で、個体の大きさは属内では小さい。方向隔壁の長さは 0.7R、たいてい準板状を成し莢開口面よりも上に突出する。1次隔壁はたいてい完全・不規則、長さは 0.5R、鋸歯状か準板状を成し、時に突出する。2次隔壁は不完全・不規則、長さは 0.2R である。軸柱は弱く発達する。莢壁は棘に隠れて不明瞭で、共骨面よりも上には突出しない。裸地帯も不明瞭である。

共骨表面は棘に隠れて概して不明瞭、目合いは平均 0.08 mm で、網目はフレームよりも顕著に幅狭く、肌理は細かい。棘は共骨ならびに小型突起の表面を密に被い、高さは 0.14 mm 以内、太短い棒状、棍棒状もしくは薄片状を成し、上縁はしばしば複数の尖端に分かれ、表面は繊細な顆粒状突起に被われる。

生時の色彩は一様な淡褐色を呈する。

識別点:本種は Montipora digitata エダコモンサンゴや M. samarensis アラエダコモンサンゴと混同されることがあるが、エダコモンサンゴは霜柱状突起を欠く特徴で、アラエダコモンサンゴは霜柱状突起が密生し、均一な莢壁冠を形成する特徴で、それぞれ本種と区別される。

分布と生態:国内では八重山諸島黒島、海外ではフィリピンより知られる。礁池内の浅所に生息する。

和名の由来:莢径とほぼ同じ大きさのドーム状の霜柱状突起がやや密に分布することと、樹木状の群体形を成す特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2068 (八重山諸島黒島産)。

備考:調査標本は既知種の中では M. altasepta の原記載に最も適合した。ただし、著者の手元には標本が1つ (黒島産) しかなく、本種の形態変異幅は把握されていない。なお、本種には国内での記録が他に1つあるが (西平・Veron 1995, M. samarensis として記載)、その産地も黒島の礁池である。

引用文献:

亀田和成・目崎拓真・杉原薫 (2013) 黒島研究所収蔵造礁サンゴ目録第2版. 日本ウミガメ協議会付属 黒島研究所, 竹富町. [日本ウミガメ協議会付属黒島研究所]

Nemenzo F (1967) Systematic studies on Philippine shallow-water scleractinians. VI Suborder Astrocoeniina (Montipora and Acropora). Nat Appl Sci Bull Univ Philipp 20:1-141, 143-223

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(50), 国内産種の紹介36. 霜柱状突起と上方大型突起を持つ種. マリンパビリオン 特別号13. [串本海中公園]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

執筆者:野村恵一・鈴木豪

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開

2024-11-10 図キャプションの標本採集・撮影者の表記法を変更