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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora carinata Nemenzo, 1967
(Figs. 1-3)

Montipora carinata Nemenzo, 1967: 28, pl. 8, fig. 2 [Pinamaungajan, Cebu, Philippines]; Nomura & Suzuki 2021: 14, figs. 132, 133.

Montipora hirsuta Nemenzo, 1967: 23, pl. 7, figs. 2, 3 [Hundred Islands, Pangasinan, Luzon, Philippines] (= homonym of Montipora hirsuta Bernard, 1897); Veron 2000: vol. 1, 159 (part), figs. 4, 5, 1 skeleton fig.

Montipora stellata: Veron 2000: vol. 1, 160 (part), figs. 2, 6.

Montipora cf. stellta sp. 1 sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 4, fig. 2 (19).

アカジマトゲコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021
(図1-3)

トゲエダコモンサンゴ:野村・鈴木・岩尾 2017: 4, 図2 (19) (Montipora cf. stellta sp. 1 として).

アカジマトゲコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021: 14, 図132, 133.

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図1. アカジマトゲコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora carinata Nemenzo, 1967.

A-H. SMP-HC 2459,和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m. 野村恵一: A, B. 群体, 群体は樹木状だが基部や側面に葉状の張り出しを持つ; C. サンゴ体, 外面;D. 同, 内面; E. 同, 末枝外面; F-H. 同, 個体とその周囲. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm.

図2. アカジマトゲコモンサンゴ Fig. 2. Montipora carinata Nemenzo, 1967.

A-D. SMP-HC 2453. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m. 野村恵一; A, B. 群体; C. サンゴ体, 外面; D. 同, 個体とその周囲.

E-H. SMP-HC 2455. マジャノハマ, 水深 1 m. 野村恵一; E. 群体; F. サンゴ体, 内面; G. 同, 様々な成長段階の霜柱状突起; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm.

図3. アカジマトゲコモンサンゴ Fig. 3. Montipora carinata Nemenzo, 1967.

A-D. SMP-HC 2619. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 2 m. 野村恵一; A, B. 群体; C. サンゴ体; D. 同, 個体とその周囲.

E-H. SMP-HC 2874. 宮古諸島宮古島島尻東礁池, 水深 1 m. 野村恵一; E, F. 群体; G. サンゴ体, 内面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: A. 5 cm; D, G. 1 mm.

形態:群体は細い枝が込み入ったブッシュ状を成し、時に薄い被覆板状の付着基部を持ち、長径 30 cm、高さ 15 cm に達する。枝の分枝次数はたいてい2次、最高3次まで。末枝は様々な方向を向き、先細りの円柱状か側扁した円柱状を成し、長さは 10~35 mm、幅は約 5 mm である。幹基部の断面は円形か楕円形を成し、短径は平均 7 mm で 10 mm を越えることはない。しばしば枝同士が接合して部分的に板状を成したり、板状の付着基部の一部が立ち上がって幹となり、そこから扇状に枝を伸ばす場合がある。枝は茂みの中側を向いた面 (内面) と外側を向いた面 (外面) とで表面の構造が異なる二面性があり、外面は内面よりも霜柱状突起や疣状突起がやや発達し個体も多い。

サンゴ体の共骨上には霜柱状突起が分布するが、密度や形状、ならびに大きさは著しく不均一である。形成初期の霜柱状突起は短径が約 0.4 mm でドーム状を成し、成長すると短径は莢径を越え、ドーム状もしくは円柱状の疣状突起を形成し、最大のものは短径 1.5 mm、長さ 2.5 mm に達する。疣状突起は基本的に高さが 2.5 mm を越えると側面に個体が増殖し、新たな枝を形成する。疣状突起は霜柱状突起よりも多く出現し、枝先では時に列生したり、互いに接合して縦肋状の短いコリンを形成する。霜柱状突起はしばしば不規則な莢壁冠を形成する。また、莢壁冠を構成する霜柱状突起は互いに接合し、管状や下唇状もしくは接着管状の個体壁を形成するが、個体は顕著には突出しない。

個体は枝外面ではやや密生し、個体密度は個体2個分以内である。枝の内外両面共に個体の多くは共骨面に対して垂直方向を向く。ただし。個体の枝基部側に下唇状や密着管状の個体壁を伴う場合は個体は枝先端方向に傾く。莢径は平均 0.8 (範囲 0.7~0.9) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。方向隔壁の長さは1次隔壁とほぼ同じかわずかに長く、準板状もしくは鋸歯状を成し、莢開口面からわずかに突出する。1次隔壁は完全・規則的、長さは平均 0.6 (範囲 0.5~0.8) R、鋸歯状を成しやや突出する。2次隔壁は不完全・不規則で、1次隔壁よりも明瞭に短い。軸柱は発達しないか弱く発達する。莢壁は明瞭でたいてい共骨面からわずかに突出し、裸地帯は部分的に認められる。

共骨表面の目合いは平均 0.10 mm で、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く肌理は細かい。棘はやや疎らに分布し、短い棒状か細い薄片状を成し、上縁は顆粒に被われる。

生時の色彩は共肉が褐色もしくは淡褐色で、小型突起と枝の先端は明色をなす場合が多い。

識別点:本種は Montipora stellata シゲミコモンサンゴや M. sp. HOSOTOGE ホソトゲコモンサンゴに外見が酷似する。シゲミコモンサンゴは個体がしばしば管状を成して顕著に突出することで、ホソトゲコモンサンゴは莢壁が不明瞭でほぼ突出せず、疣状突起やコリンはほとんど形成されないことで、それぞれ本種と区別される。

分布と生態:国内では慶良間諸島,宮古諸島ならびに八重山諸島、海外ではフィリピンより知られる。礁池内の浅所 (出現深度範囲は 1~2 m) に生息する。

和名の由来:トゲコモンサンゴに群体形が似ることと慶良間諸島阿嘉島が国内初産地であることに因む。和名基準標本は SMP-HC 2459 (阿嘉島産)。

備考:アカジマトゲコモンサンゴの和名を与えた国内の標本群は、M. carinata の原記載とは以下の形態的相違点が認められるが、本図鑑では野村・鈴木 (2021) に従って M. carinata の種内変異とみなした。M. carinata のホロタイプでは、末枝の多くはあまり先細りせず先が平坦であるのに対しアカジマトゲコモンサンゴは顕著に先細りする;ホロタイプでは枝先に大きさの等しい疣状突起が枝と垂直に列生するのに対しアカジマトゲコモンサンゴの枝先に列生する疣状突起は大きさが不均一で概して枝先端方向に傾斜する。ただし、M. carinata の原記載や掲載されたホロタイプの写真からは詳細な形態情報が得られないため、アカジマトゲコモンサンゴの分類学的位置に関してはさらなる検討が必要とされる。

参考:

Montipora carinata Nemenzo, 1967 ── Holotype, UP C-903 [Nmenzo Species List]

Montipora hirsuta Nemenzo, 1967 ── Holotype, UP C-968 [Nmenzo Species List]

引用文献:

Bernard HM (1897) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 3. The genus Montipora, the genus Anacropora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]

Nemenzo F (1967) Systematic studies on Philippine shallow-water scleractinians. VI Suborder Astrocoeniina (Montipora and Acropora). Nat Appl Sci Bull Univ Philipp 20: 1-141, 143-223.

野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(50), 国内産種の紹介36. 霜柱状突起と上方大型突起を持つ種. マリンパビリオン 特別号13. [串本海中公園]

野村恵一・鈴木豪・岩尾研二 (2017) 阿嘉島のコモンサンゴ類. みどりいし28, supplement. [阿嘉島臨海研究所]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

執筆者:野村恵一・鈴木豪

Citation:

 

更新履歴:

2023-11-12 公開

2024-10-24 和名表題部の提唱者訂正

2024-11-10 図キャプションの標本採集・撮影者の表記法を変更