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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora crassituberculata Bernard, 1897
(Figs. 1-4)

Montipora crassi-tuberculata Bernard, 1897: 141, pl. 25, fig. 1, pl. 34, fig. 7 [Houtman's Abrolhos Island, West Australia].

Montipora crassituberculata: Veron & Wallace 1984: 119, figs. 312-318; Veron 1986: 121, 1 skeleton fig.; Veron 2000: vol. 1, 78 (part), fig. 1; Kajiwara et al. 2020: 76, fig. 1; Nomura & Suzuki 2021: 5, fig. 104.

アツコモンサンゴ 梶原ら, 2020
(図1-4)

アツコモンサンゴ 梶原ら, 2020: 76, 図1; 野村・鈴木 2021: 5, 図104.

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図1. アツコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora crassituberculata Bernard, 1897.

A-H. MIY-KK2014-297 (SMP-HC 2792), 和名基準標本. 宮古諸島八重干瀬, 水深 27 m: A. 円板状群体; B. 群体上面; C-E. サンゴ体上面; F, G. 個体とその周囲; H. サンゴ体下面. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: A, B. 梶原健次撮影; A, B以外, 野村恵一撮影.

図2. アツコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora crassituberculata Bernard, 1897.

A. SMP-HC 2222, 板状群体. 八重山諸島竹富島北, 水深 12 m.

B, C. SMP-HC 2226. 竹富島北, 水深 12 m; B. 被覆板状群体; C. サンゴ体上面.

D, E. SMP-HC 2235, 瘤状突起を持った被覆板状群体. 竹富島北, 水深 12 m.

F. SMP-HC 2242, 瘤状突起を持った被覆板状群体. 竹富島北, 水深 12 m.

G. SMP-HC 2254, 被覆板状群体. 竹富島北, 水深 12 m.

H. SMP-HC 2814, ほぼ被覆状の群体. 宮古諸島八重干瀬, 水深 7 m.

定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. アツコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora crassituberculata Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 2704. 宮古諸島大神島西, 水深 13 m; A, B. ほぼ被覆状の群体; C, D. サンゴ体上面, 個体と付属突起.

E-H. SMP-HC 2877. 宮古諸島宮古島島尻東, 水深 2 m; E. 瘤状突起を持つ板状群体; F. サンゴ体上面、周縁部の網目状コリン; G. 同, 瘤状突起; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図4. アツコモンサンゴ. Fig. 4. Montipora crassituberculata Bernard, 1897.

A-H. BMNH 1895-10-9-186, M. crassituberculata の holotype, サンゴ体上面. 西オーストラリアHoutman's Abrolhos 諸島. 定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体はたいてい板状もしくは平坦な単葉状、時に被覆板状や被覆状を成し、被覆板状群体では長径が 1 m を越える。板状部は厚みがあり、厚さは末縁で 2 mm、末縁から 10 cm の距離で約 1 cm である。上面は大型突起を欠いてほぼ平滑か、大小の瘤状突起が不規則に分布する。

サンゴ体上面では共骨上に霜柱状突起が比較的密生するが、形や大きさは様々で、しばしば不均一・不規則な莢壁冠を形成する。莢壁冠上の霜柱状突起はしばしば肥大して疣状突起に発達し、さらに側扁・接合して短いコリンを形成する。また、しばしば複数のコリンが個体を取り巻いて不規則な個体壁を形成する。霜柱状突起の短径は平均 0.5 mm、疣状突起は最大で短径・高さ共に 2 mm に達する。板状部周縁ではたいてい短くてやや細い放射状のコリンが列生し、時に水平方向にも連結して不規則な網目状を成す。コリンは直立し、幅は平均 0.8 mm、最大で 1.2 mm、高さ 5 mm にそれぞれ達する。なお、コリンは個体後方 (サンゴ体基部側) で鼻筋状に伸びることは稀である。

個体は基本的に共骨面より下に埋没し、時に莢壁の伸長に伴いわずかに突出する。また、一部の個体は莢壁冠や他の霜柱状突起と共に筒状に隆起して粒状突起を形成する。粒状突起の一部はさらに成長して瘤状突起に発達する場合がある。個体の分布は不均一で、密生またはやや密生し、個体間隔は個体3個分以内である。個体はたいてい共骨面に対して垂直方向を向くが、サンゴ体周縁部では周縁方向に傾斜する場合がある。莢径は平均 1.0 (範囲 0.8~1.1) mm で、個体の大きさは属内では大きい。

方向隔壁は他の1次隔壁と区別できない場合が多い。1次隔壁はほぼ完全・規則的、長さは平均 0.6R、鋸歯状か準板状、稀に板状を成し、莢開口面よりも上には突出しない。2次隔壁は不完全・不規則、長さは 0.4R 以下で、たいてい1次隔壁よりも短い。軸柱は弱く発達する。莢壁は部分的に明瞭で、時に共骨面よりも上にやや突出する。裸地帯は部分的に認められる。

共骨表面の目合いは平均 0.10 mmで、網目はたいていフレームよりも幅狭く、肌理は細かい。棘は細かく、繊細な顆粒に被われる。

サンゴ体下面ではエピテカがほぼ縁まで被い、個体はあってもごく疎らに分布し、かつ小さい。

生時の色彩は共肉が一様な褐色、淡褐色もしくは赤褐色を成し、たいてい群体の縁は明色に染め分けられ、ポリプは朱色もしくは紫褐色を呈する。

識別点:本種の板状群体と霜柱状突起を持つ特徴は他の複数のコモンサンゴ類と共有するが、本種は板状部が厚いこと、個体が大きいこと、莢壁冠上の霜柱状突起は太く時に肥大して疣状突起を形成すること、莢壁冠を形成する霜柱状突起の一部が側扁・接合して短いコリンを形成しそれらが個体を取り巻き不規則な個体壁を形成すること、板状部周縁ではたいてい短くてやや細い放射状のコリンが列生し、時に同心円方向にも連結して不規則な網目状を成すことの複数の特徴の組み合わせによって他種と区別される。本種の複雑に入り組んだコリンや瘤状突起を持つ特徴は Montipora prolifera スジコモンサンゴに酷似する場合があるが、本種の霜柱状突起は比較的密生し、莢壁冠がしばしば形成され、莢壁や隔壁は伸長しないのに対し、スジコモンサンゴの霜柱状突起は疎らに分布し、莢壁冠は基本的に形成されず、莢壁や隔壁はやや伸長することで両種は区別される。

分布と生態:国内では宮古諸島以南、海外ではオーストラリア (グレートバリアリーフ、Houtman's Abrolhos 諸島) ならびにベトナム。主にサンゴ礁水路部の斜面上の浅所からやや深所 (国内における平均出現水深は 12 m、水深範囲は 2~27 m) に生息する。

和名の由来:肥厚した霜柱状突起と厚みのある群体板状部に因む。

備考:本種の個体を取り巻くコリンや瘤状突起の発達度合いにはサンゴ体により大きな変異が認められ、担名タイプはそれらがあまり発達しないタイプである。

引用文献:

Bernard HM (1897) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 3. The genus Montipora, the genus Anacropora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]

梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.

野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(48), 国内産種の紹介34. 霜柱状突起と葉状・板状群体を持つ種. マリンパビリオン 特別号12. [串本海中公園]

Veron JEN (1986) Corals of Australia and the Indo-Pacific. Angus & Robertson Publication, North Ryde, NSW.

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2023-11-12 公開