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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora delicatula Veron, 2000
(Figs. 1-3)

Montipora delicatula Veron, 2000: vol. 1, 70, figs. 1-4; 2002: 7, figs. 1-4; Nomura, Naruse & Yokochi 2017: 6 (part), figs. 2A, B, E, F, 3J, K, M-O; Nomura & Suzuki 2021: 9, fig. 107.

ホソスジコモンサンゴ 野村・成瀬・横地, 2017
(図1-3)

ホソスジコモンサンゴ 野村・成瀬・横地, 2017: 6 (一部), 図2A, B, E, F, 3J, K, M-O (図1A-F, 2C, D, 3A-I, Lは Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI ツブホソスジコモンサンゴ); 野村・鈴木 2021: 9, 図107.

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図1. ホソスジコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora delicatula Veron, 2000.

A-H. SMP-HC 3258, 和名基準標本. 八重山諸島西表島船浮湾, 水深 17 m: A. 複葉状群体; B-D. サンゴ体上面; E, F. 同, 個体とその周囲; G. サンゴ体下面; H. 同, 個体と末縁方向に突出した疣状突起. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. ホソスジコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora delicatula Veron, 2000.

A-H. SMP-HC 3260. 八重山諸島西表島船浮湾, 水深 14 m: A-C. 複葉状群体; D, E. サンゴ体上面; F. 同, 放射状コリン列と霜柱状突起の並び; G. 同, 個体とその周囲; H. サンゴ体下面, 個体や疣状突起ならびに粒状突起の分布. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. ホソスジコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora delicatula Veron, 2000.

A-D. RUMF-ZG-4388 (SMP-HC 3258と同じ群体). 八重山諸島西表島船浮湾, 水深 17 m: A. 複葉状群体; B, C. サンゴ体上面; D., 同, 霜柱状突起ならびに個体壁と共に隆起した個体.

E, 複葉状群体. 船浮湾, 水深 10-20 m.

F. 複葉状群体. 船浮湾, 水深 10-20 m.

G, H. 複葉状群体. 船浮湾, 水深 10-20 m.

定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体は渦を巻いて斜め上方に立ち上がった薄い複葉状を成し、厚さは末縁で 1.5 mm、末縁から 10 cm の距離で約 5 mm、長径は 40 cm に達する。群体上面は一切の大型突起を欠く。

サンゴ体上面では共骨上にドーム状の霜柱状突起が概して密に分布する。霜柱状突起の大きさはやや揃い、たいてい莢壁冠を形成し、その一部は肥大して莢径よりも大きな疣状突起を形成する。時に莢壁冠を形成する霜柱状突起同士が接合して個体壁を形成する。霜柱状突起の平均短径は 0.5 mm、肥大した疣状突起は最大で短径 1.5 mm に達する。霜柱状突起は互いに接合して放射状のコリン列を形成するが、その発達度合いはサンゴ体により変異がある。コリン列は直立して破線状に並び、幅は平均 0.7 mm、高さは最大で 2 mm に達する。

個体は疎らに分布し、個体間隔は個体5個分以内である。個体は共骨中に埋没するか莢壁の伸長に伴ってわずかに隆起し、時に莢壁冠を形成する霜柱状突起と共に管状に隆起して粒状突起を形成する。また、個体後方 (サンゴ体基部方向) にフード状の小さな隆起がしばしば認められるが発達はせず、鼻筋状のコリンは形成しない。フード状の隆起を伴う個体はサンゴ体末縁方向に傾斜し、それ以外は共骨面に対して垂直方向を向く。莢径は平均 0.6 (範囲 0.5~0.8) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。

方向隔壁の長さは 0.7R で、準板状か鋸歯状を成し、莢開口面より上にやや突出する。1次隔壁は完全・規則的か完全・不規則、長さは 0.6R、鋸歯状を成し上方にはほとんど突出しない。2次隔壁はたいてい完全・不規則で、長さは 0.3R である。軸柱は認められないか弱く発達する。莢壁はやや明瞭か不明瞭でしばしば共骨面よりも上にわずかに突出し、裸地帯は認められないか部分的に認められる。

共骨表面の目合いは平均 0.10 mm で、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は細かい。棘は細かく顆粒に密に被われる。

サンゴ体下面ではエピテカは発達しないか弱く発達する。個体は疎らに分布し、たいてい共骨中に埋没するが、時に共骨と共にわずかに隆起し、莢径は上面よりもやや小さい。時に長さが 4 mm に達する末縁方向に傾斜した円錐状の疣状突起が形成され、稀に疣状突起の上半部に個体が生じて粒状突起に発達する場合があるが、瘤状突起を形成することはない。

生時の色彩は共肉が淡褐色、ポリプは青色を呈する。

識別点:本種と Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI ツブホソスジコモンサンゴは形態が酷似し、しかも同所的に生息するため混同されやすいが、本種は多くの個体が直立し、霜柱状突起は全面にわたってほぼ密生するのに対し、ツブホソスジコモンサンゴは個体がほぼ周縁方向に傾斜し、霜柱状突は少なくともサンゴ体基部付近では不明瞭であることで両者は区別される。また、本種は M. minuta ウスコモンサンゴにも酷似するが、ウスコモンサンゴの霜柱状突起は形が著しく不揃いで、個体後方のフード状の突起や鼻筋状の突起がしばしば発達することで本種と区別される。

分布と生態:国内では西表島船浮湾のみから知られる。海外ではインドネシアとフィリピンから報告されている。国内では内湾域のやや深所 (水深範囲は 10~20 m) に生息し、大きな群落は形成しない。

和名の由来:群体上面に分布する細かい放射状のコリン列に因む。和名基準標本は SMP-HC 3528 である。

備考:野村・成瀬・横地 (2017) は M. delicatula ホソスジコモンサンゴを国内で初めて記録したが、この報告に使用された標本には2種 (ホソスジコモンサンゴとツブホソスジコモンサンゴ) が含まれていることが、後に形態学的ならびに分子系統学的解析によって確認された。西表島船浮湾では両者は同所的に分布する。

参考:担名タイプの写真

Montipora hodgsoni Veron, 2000 ── Lectotype, G55805 in Veron (2002) p.8, figs. 1-4 [AIMS]. Corals of the Worldにも原記載と同じ骨格写真3枚 (キャプションに "Type specimen" と表記) が掲載されている.

引用文献:

野村恵一・成瀬貫・横地洋之 (2017) 八重山諸島で採集された花冠状群体を形成するコモンサンゴ類 (イシサンゴ目ミドリイシ科) 2種. Fauna Ryukyuana 35: 5–15. [琉球大学学術リポジトリ]

野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(48), 国内産種の紹介34. 霜柱状突起と葉状・板状群体を持つ種. マリンパビリオン 特別号12. [串本海中公園]

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN (2002) New species described in corals of the world. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [AIMS]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2023-11-12 公開