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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora granulata Bernard, 1897
(Figs. 1, 2)

Montipora granulata Bernard, 1897: 129, pl. 34, fig. 1 [Torres Strait]; Wells 1954: 439, pl. 148, fig. 3; Nomura et al. 2021: 42, fig. 1; Nomura & Suzuki 2022: 12, figs. 150.

? Montipora informis: Veron & Wallace 1984: 106, figs. 281-287.

イシダタミコモンサンゴ 野村・鈴木・立川・藤井, 2021
(図1, 2)

イシダタミコモンサンゴ 野村ら, 2021: 42, 図1; 野村・鈴木 2022: 12, 図150.

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図1. イシダタミコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora granulata Bernard, 1897.

イシダタミコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora granulata Bernard, 1897. A-H. KAUM-CN-20. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 14 m; A, B. 群体; C, D. サンゴ体上面; E-G. 同, 個体とその周囲; H. サンゴ体下面, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: A, B. 1 cm, E-H. 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. イシダタミコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora granulata Bernard, 1897.

A-H. BMNH 1897-3-9-202-205, M. granulata のホロタイプ. オーストラリアトレス海峡: A-D. サンゴ体; E-H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: A. 3 cm, G. 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:調査したのは群体長径が約 10 cm、基盤の厚さは 1 cm に満たない薄い被覆板状をした1標本である。板状部は短く、末縁の厚さは 1.5 mm である。群体表面はほぼ平坦で、不明瞭・不規則な起伏が認められるが顕著な大型突起を欠く。

サンゴ体上面の共骨表面は、ほぼ同形同大の霜柱状突起に密に被われる。霜柱状突起はドーム状を成し、時にやや側扁し、成長した霜柱状突起の短径は平均 0.4 mm、最大 0.5 mm、長さは平均 0.3 mm、最大 0.4 mmである。莢壁冠は稀に形成されるが、不明瞭である。また、稀に霜柱状突起同士が部分的に接合して不完全な個体壁を形成したり、ごく短いコリンを形成する。

個体は疎らに分布し、個体間隔は個体5個分以内である。個体はたいてい共骨面下に埋没し、霜柱状突起の中にやや埋もれるように分布するが、時に莢壁もしくは個体壁と共にわずかに突出する。莢径は平均 0.7 mmで、個体の大きさは属内では中程度である。

方向隔壁の長さは平均 0.8R、準板状か鋸歯状を成し、たいてい莢開口面より突出する。1次隔壁は完全・やや規則的、長さは平均 0.7R、たいてい鋸歯状を成し突出しない。2次隔壁は不完全・不規則、長さは 0.3R 以下で、1次隔壁よりも明瞭に短い。軸柱は稀に弱く発達する。莢壁は明瞭で時にわずかに突出し、裸地帯は部分的に明瞭である。

共骨表面の目合いは 0.13 mmで、網目はフレームよりも幅狭く、肌理は細かい。棘はやや長く、長さは平均 0.16 mm、針状、棒状もしくは細い薄片状をなし、先端は時に分岐し、表面は細かな顆粒状突起に被われる。

サンゴ体板状部の下面はエピテカが不均一に被い、エピテカに被われない部分は霜柱状突起を欠き表面は滑らかである。個体は小形でやや密に分布し、莢壁が筒状に突出する。

生時の共肉は褐色、 ポリプと霜柱状突起の先端は淡黄緑色を呈する。

識別点:本種は被覆板状群体を成すこと、共骨表面はほぼ同形同大の霜柱状突起に密に被われること、霜柱状突起の短径は約 0.4 mmであること、個体はたいてい霜柱状突起の中にやや埋もれる様に分布することの複数の特徴の組み合わせで、他のコモンサンゴ類と区別される。本種は特にMontipora grisea グリセアコモンサンゴや M. corbettensis Veron & Wallace, 1984 によく似るが、前者は個体の多くが明瞭に突出する特徴で、後者は莢径とほぼ同径 (約 0.7 mm) の大型の霜柱状突起を持つ特徴で、それぞれ本種と区別される。

分布と生態:国内では奄美大島、海外ではトレス海峡ならびにビキニ環礁より知られる。国内唯一である奄美産の標本は、内湾域のやや深所 (水深 14 m) から採集された。

和名の由来:丈の低い霜柱状突起が均一に密生する様が石畳を連想させることに因む。和名基準標本は KAUM-CN-20 (奄美大島産) である。

備考:奄美産の標本の形態は M. granulata のタイプ標本 (図2H) とよく一致した。なお、Veron & Wallace (1984) が M. informis として記載したタクソンは M. granulata である可能性が持たれる。

引用文献:

Bernard HM (1897) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 3. The genus Montipora, the genus Anacropora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]

野村恵一・鈴木豪 (2022) コモンサンゴ類の同定の話(51) , 国内産種の紹介37. 霜柱状突起を持ち、被覆状・塊状群体を成し、瘤状突起以外の大型突起を欠く種. マリンパビリオン 特別号14. [串本海中公園]

野村恵一・鈴木豪・立川浩之・藤井琢磨 (2021) 奄美諸島から採集された国内初記録の4種のコモンサンゴ類 (イシサンゴ目ミドリイシ科). Fauna Ryukyuana 63: 41–52. [琉球大学学術リポジトリ]

Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]

Wells JW (1954) Recent corals of the Marshall Islands. United States Department of the Interior, Geological Survey, Washington, DC. [USGS Publ WH]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2024-06-16 公開