Top page科・属リストAcroporidaeMontiporaMontipora grisea

Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora grisea Bernard, 1897
(Figs. 1–7)

Montipora variabilis Bernard, 1897: 114 [Warrior Island, Great Barrier Reef].

Montipora annularis Bernard, 1897: 115, pl. 23, fig. 4, pl. 33, fig. 15 [New Guinea].

Montipora grisea Bernard, 1897: 123 [Tongatabu]; Veron & Wallace 1984: 98, figs. 253-261; Shirai & Sano 1985: 211, fig. 12; Veron 1986: 116, 2 figs.; Veron 2000: vol. 1, 94 (part), fig. 3; Kameda, Mezaki & Sugihara 2013: 21, 70, 2 figs.; Nomura 2016: 20, fig. A-F; Nomura 2017: 106, fig. 1 (6); Nomura, Suzuki & Iwao 2017: 6, fig. 2 (31); Yokochi et al. 2019: 42; Kajiwara et al. 2020: 77; Nomura & Suzuki 2022: 10, figs. 148, 149.

Montipora cf. informis: Sugihara et al. 2015: 54, 3 figs.

Montipora informis: Nomura, Suzuki & Iwao 2017: 7, fig. 2 (32).

not Montipora grisea: Nishihira & Veron 1995: 71, 4 figs. (= Montipora composita); Pillay et al. 2002: 104, figs. 1-4 (= Montipora sp.); Dai & Horng 2009: 26, 3 figs. (= Montipora sp.).

グリセアコモンサンゴ 白井, 1985
(図1-7)

グリセアコモンサンゴ 白井 in 白井・佐野, 1985: 211, 図12; 亀田・目崎・杉原 2013: 21, 70, 2図; 野村 2016: 20, 図A-F; 野村 2017: 106, 図1 (6); 野村・鈴木・岩尾 2017: 6, 図2 (31); 横地ら 2019: 42; 梶原ら 2020: 77; 野村・鈴木 2022: 10, 図148, 149.

ノリコモンサンゴ: 野村・鈴木・岩尾 2017: 7, 図2 (32).

非 グリセアコモンサンゴ: 西平・Veron 1995: 71, 4図 (=セノビコモンサンゴ).


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図1. グリセアコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora grisea Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 2419. 和歌山県串本町潮岬, 水深 14 m; A. 群体; B. サンゴ体上面; C, D. 同, 個体とその周囲; E-H. SMP-HC 3529. 大隅諸島屋久島春田浜, 水深 7 m; E. 群体; F, G. サンゴ体上面, 個体とその周囲; H. サンゴ体板状部下面; 定規の目盛り, 1 mm. スケールバー: A. 1 cm, E. 5 cm, C, D, F, G. 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. グリセアコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora grisea Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 2470. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 3 m; A, B. 群体; C, D. サンゴ体上面, 個体とその周囲; E-H. SMP-HC 3645. 奄美諸島加計呂麻島島須子茂離, 水深 12 m; E, F. 群体; G, H. サンゴ体上面, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: F. 1 cm, D, H. 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. グリセアコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora grisea Bernard, 1897.

A. SMP-HC 2735. 宮古諸島八重干瀬, 水深 8 m; B, C. SMP-HC 2737. 八重干瀬, 水深 8 m; B. 群体; C. サンゴ体上面, 個体とその周囲; D, E. SMP-HC 2770. 八重干瀬, 水深 5 m; D. 群体; E. サンゴ体上面, 個体とその周囲; F-H. SMP-HC 2824. 八重干瀬, 水深 5 m; F. 群体; G. サンゴ体上面; H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図4. グリセアコモンサンゴ.Fig. 4. Montipora grisea Bernard, 1897.

A. SMP-HC 2105, サンゴ体. 八重山諸島西表島鹿ノ川中瀬, 水深 10 m; B. SMP-HC 2236, 群体. 八重山諸島竹富島北, 水深 12 m; C, D. SMP-HC 2239. 竹富島北, 水深 12 m; C. 群体; D. サンゴ体上面, 個体とその周囲; E-H. SMP-HC 2310. 八重山諸島石垣島浦底湾, 水深 3 m; E, F. 群体; G, H. サンゴ体上面, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: C. 5 cm, D, H. 1 mm. 写真: E, F. 鈴木豪撮影, A-D, G, H. 野村恵一撮影.

図5. グリセアコモンサンゴ.Fig. 5. Montipora grisea Bernard, 1897.

AA, B. SMP-HC 3170. 小笠原諸島妹島ブルーリボン, 水深 15 m; A. 群体; B. サンゴ体上面, 個体とその周囲. C, D. SMP-HC 3193. 小笠原諸島母島イナリズシ根, 水深 12 m; C. 群体; D. サンゴ体上面, 個体とその周囲; E-H. SMP-HC 3443. 小笠原諸島父島二見岩, 水深 23 m; E, F. 群体; G. サンゴ体上面; H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: B, H. 1 mm, E. 5 cm, F. 1 cm. 写真: 野村恵一撮影.

図6. グリセアコモンサンゴ.Fig. 6. Montipora grisea Bernard, 1897.

A-D. BMNH 1891-3-6-117 (a), M. grisea のシンタイプ. トンガタプ; A, B. サンゴ体上面; C, D. 同, 個体とその周囲; E-H. BMNH 1891-3-6-117 (c), M. grisea のシンタイプ. トンガタプ; E. サンゴ体上面; F-H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: B. 2 cm; F. 1 cm. 写真: 野村恵一撮影.

図7. グリセアコモンサンゴ.Fig. 7. Montipora grisea Bernard, 1897.

A-D. BMNH 1961-12-8-1, M. annularis のホロタイプ. ニューギニア; A, B. サンゴ体上面; C, D. 同, 個体とその周囲; E-H. BMNH 1892-12-1-275, M. variabilis のホロタイプ. グレートバリアリーフウオーリアー島; E. サンゴ体上面; F-H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体は被覆状を成し、時に周縁が板状に張り出したり、上面に不規則・不明瞭な瘤状突起を備える。群体は小形で、長径は最大でも 40 cm程である。

サンゴ体上面の共骨表面には霜柱状突起が分布し、ドーム状もしくは細長いドーム状を成し、時に側扁し、同一のサンゴ体内ではその分布や大きさは揃う傾向がある。霜柱状突起は莢壁冠を形成するが、共骨上の霜柱状突起と比べてやや発達する程度である。莢壁冠を構成する霜柱状突起はしばしば互いに接合したり、莢壁と一体化して個体壁を形成する。稀にごく短いコリンが認められるが、疣状突起は形成しない。莢壁冠を構成する霜柱状突起の短径は平均 0.3 mm、最大 0.6 mm、長さは平均 0.5 mm、最大 1.3mm である。

個体はやや疎らに不均一に分布し個体間隔は個体3個分以内であるが、時に部分的に密集して短い列を成して並ぶことがある。個体は多かれ少なかれ突出し、時に莢壁冠が完全に接合した個体壁を伴って頂端粒状突起を形成する。頂端粒状突起は著しくは突出せず、成長した単体粒状突起の大きさや高さは同一のサンゴ体内では揃う傾向があり、短径は平均 1.5 mm、最大 2.5 mm、高さは平均 0.9 mm、最大 2.0 mmである。莢径は平均 0.7 (範囲 0.6~1.0) mmで、個体の大きさは属内では中程度である。

方向隔壁の長さは平均 0.9 (範囲 0.6~1.0) R、板状もしくは準板状、まれに鋸歯状を成し、莢開口面から強く突出するかわずかに突出する。1次隔壁は完全・規則的、長さは平均 0.7 (範囲 0.5~0.7) R、鋸歯状もしくは準板状を成し、たいてい突出しない。2次隔壁はたいてい完全・不規則、長さは平均 0.4 (範囲 0.3~0.5) R で、1次隔壁よりも明瞭に短い。軸柱はたいてい認められない。莢壁は明瞭で多かれ少なかれ共骨面から突出し、裸地帯は部分的に明瞭である。

共骨表面の目合いは平均 0.11 mm で、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は細かい。棘は基本的に霜柱状突起上に分布し、長さはサンゴ体によって変異が大きく、平均 0.12 (範囲 0.07~0.20) mm、針状、棒状もしくは薄片状を成し、先端は時に分岐し、表面にはたいてい細かい顆粒状突起が発達する。

サンゴ体板状部の下面におけるエピテカの発達度合いはサンゴ体によって様々である。エピテカに被われない部分は霜柱状突起を欠き、表面は滑らかで、小型の個体が疎らに分布する。

生時の色彩は一様な褐色、淡褐色もしくは赤褐色で、時にポリプが共肉とは異なった紫色を呈する。

識別点:本種は以下の特徴を併せ持つことによって他のコモンサンゴ類と区別される:群体は基本的に被覆状で瘤状突起以外の上方大型突起を欠く;霜柱状突起はたいていドーム状をなし、分布や大きさはほぼ均一、莢壁冠上の霜柱状突起の短径は平均 0.4 mm、疣状突起を形成しない;個体はやや疎らに分布し密生しない;個体 (単体粒状突起) は著しく長く突出せず (高さは 2 mm 以下)、成長したものの高さは同一のサンゴ体内ではほぼ揃う。本種は Montipora composita セノビコモンサンゴに外見が似る場合があるが、この種の霜柱状突起は分布も大きさも概して不揃いで時に肥大して疣状突起を形成すること、個体の一部が異常に突出 (高さ 3 mm 以上) すること、個体の高さや向きが不揃いであること、の特徴を持つことによって本種と区別される。

分布と生態:国内では和歌山以南の暖海に広く分布し、海外ではニューギニア、グレートバリアリーフならびにトンガから知られる。比較的浅い岩礁もしくはサンゴ礁域 (平均出現水深は 9 m、水深範囲は 3~23 m) に生息する。

和名の由来:ラテン語の学名 griseus (= gray) に由来し、原記載では色彩は青灰色 (blue-gray) とある。

備考:シンタイプ (図6) はトンガタプ島産の3つの板状標本破片群から構成され、基本的な形態は国内の調査標本とほぼ一致した。Bernard (1897) が M. grisea と同時に新種として提唱した M. annularisM. variabilis は互いに異名関係にあり、これらの中から M. grisea が古参異名として採択された (野村・鈴木 2022)。

引用文献:

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執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2024-06-16 公開