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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora mactanensis Nemenzo, 1979
(Figs. 1-5)

Montipora mactanensis Nemenzo, 1979: 38, fig. 2 [Mactan Island, Cebu (Province)]; Nishihira & Veron 1995: 57, 2 figs.; Veron 2000: vol. 1, 134 (part), figs. 1-4, 1 skeleton fig.

Montipora verruculosus: Veron 2000: 136 (part), fig. 3; 2002: 20 (part), figs. 28, 29.

ホウシャコモンサンゴ 新称
(図1-5)

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図1. ホウシャコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora mactanensis Nemenzo, 1979.

A-H. SMP-HC 4235, 和名基準標本. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 20 m. 2024-10-04: A-C. 群体; D. サンゴ体上面; E, F. 同, 個体とその周囲; G. サンゴ体下面; H. 同, 個体とその周辺.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. ホウシャコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora mactanensis Nemenzo, 1979.

A-H. SMP-HC 2173. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 12 m. 2011-06-29: A-C. 群体; D. サンゴ体上面; E, F. 同, 個体とその周囲; G. 同, 共骨表面; H. サンゴ体下面, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. ホウシャコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora mactanensis Nemenzo, 1979.

A-H. SMP-HC 2188. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 15 m. 2011-06-29: A. サンゴ体上面; B-F. 同, 個体とその周囲; G. 同, 共骨断面; H. サンゴ体下面, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図4. ホウシャコモンサンゴ. Fig. 4. Montipora mactanensis Nemenzo, 1979.

A-H. SMP-HC 2313, 八重山諸島石垣島浦底湾, 水深 8 m, 2011-05-18: A-C. 群体; D. サンゴ体上面; E-H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: A-C. 鈴木豪撮影; D-H. 野村恵一撮影.

図5. ホウシャコモンサンゴ. Fig. 5. Montipora mactanensis Nemenzo, 1979.

A-H. SMP-HC 2317, 八重山諸島石垣島浦底湾, 水深 15 m. 2011-06-23: A-C. 群体; D. サンゴ体上面; E, F. 同, 個体とその周囲; G. 同, 疣状突起側面; H. サンゴ体下面, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: A-C. 鈴木豪撮影; D-H. 野村恵一撮影.

形態:群体は渦を巻いた単葉もしくは複葉の花冠状を成し、上面は大型突起を欠き、長径は 1 m に達する。葉状部は水平からおよそ 45 度の角度で立ち上がり、やや薄く厚さは縁で約 2.5 mm、縁から 5 cm の距離で約 4.5 mm である。

サンゴ体上面では共骨は霜柱状突起を含む微小突起を欠く。共骨上には小型突起 (疣状突起と疣状突起同士が接合したコリン) が密生する。コリンと疣状突起はサンゴ体の縁から中央まで続く破線状の長い放射列を形成する。放射列の縁側前半部はコリンが優占し、中央側後半部は疣状突起が優占する傾向がある。なお、コリンは必ず放射方向に並び、同心円方向には形成されない。疣状突起はドーム状もしくは頭の丸い円柱状を成すが、成長が進むに連れて側扁する。疣状突起の平均短径は 2.2 mm、最大短径は 3.2 mm、平均高は 2.3 mm、最大高は 3.6 mmである。疣状突起の高幅比 (平均高/平均短径) は 1.2 で、高さは短径よりもやや大きい。コリンの平均幅は 1.8 mm、平均高は 2.6 mm、隣接するコリンとの正中線間の距離は約 3 mm、長さは最長で 30 mm である。個体壁は基本的に形成されない。

個体は小型突起間に分布し、平行するコリン間では1列もしくは2列に並び、個体間隔はたいてい個体1個分である。個体の突出度合いはサンゴ体によって異なり、共骨中にやや窪む場合もあればわずかに突出する場合もある。莢径は平均 0.9 (最大 1.0) mm で、個体の大きさは属内では大きい。隔壁は準板状か鋸歯状を成し、しばしば莢開口面からやや突出する。方向隔壁ならびに1次隔壁の一部は莢奥中心で互いに接近するか、時に接合して弱い軸柱を形成する。各隔壁の長さは方向隔壁が平均 1.0R、1次隔壁が平均 0.8R で、2次隔壁は痕跡的な場合が多い。莢壁は明瞭で、サンゴ体によっては共骨面よりわずかに突出する。裸地帯はやや明瞭である。

共骨表面の目合いは平均 0.17 mm でフレーム幅よりも顕著に広く、表面の肌理は中程度である。棘はたいてい短い棒状を成し、長さは平均 0.1 (最長 0.15) mm で、上縁は顆粒状突起が発達する。

サンゴ体下面ではエピテカは発達せず、共骨は小型突起を欠くか不明瞭な疣状突起が疎らに分布する。個体は共骨中に埋没するかやや突出し、疎らに分布し、莢径は平均 0.6 mm である。

生時の色彩は群体の縁が明色でそれ以外は一様な褐色か、共肉が褐色で縁と小型突起は明色を成す。ポリプは青みがかる場合が多い。

識別点:本種の重要な分類形質 (群体は葉状、霜柱状突起を含む細粒状突起を欠く、疣状突起やコリンの小型突起が密生する) は Montipora palawanensis メイズコモンサンゴと共有し、両者の外見は互いに酷似する。本種は小型突起の放射列がサンゴ体中央まで続き、コリンは同心円方向には形成されないのに対し、メイズコモンサンゴは小型突起の放射列がサンゴ体縁部に限られ、コリンが放射方向のみならず同心円方向にも形成されることで、両者は区別される。

分布と生態:国内では八重山諸島 (西表島ならびに石垣島)、海外ではフィリピン、パプアニューギニアならびにインドネシアに産する。内湾域のやや深所 (平均出現水深は 13 m、水深範囲は 8-15 m) に生息する。

和名の由来:サンゴ体中央まで達する破線状の放射列を持つ特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 4235 (石垣島産)。

和名提唱日:2025-05-04.

備考:調査標本は M. mactanensis のタイプ標本と比べてコリンが細くコリン間の溝が広い形態差が認められたが、これは種内変異であると判断された。西平・Veron (1995) ならびに Veron (2000) で掲載された M. mactanensis の写真の形態は、調査標本とよく一致した。なお、Veron (2000) ならびに Veron (2002) で M. verruculosus として掲載された一部の写真の標本は、小型突起が放射状に長く連なる特徴から本種に同定された。

引用文献:

Nemenzo F (1979) Astrocoeniid and faviid reef corals from Central Philippines. Kalikasan Philip J Biol 8: 37-50.

西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.

Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.

Veron JEN (2002) New species described in corals of the world. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [AIMS]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2025-05-04 公開