Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora minuta Bernard, 1897
(Figs. 1-4)
Montipora minuta Bernard, 1897: 124, pl. 23, fig. 3, pl. 33, fig. 19 [Macclesfield Bank, South China Sea]; Nomura & Suzuki 2021: 3, figs. 102, 103.
Montipora circinata Bernard, 1897: 155 [Palm Islands, Australia].
Montipora foliosa: Eguchi 1965: 274, 2 figs.; Utinomi & Suzuki 1975: 70, 2 figs.; Shirai 1977: 513, 4 figs.; Veron & Wallace 1984: 110 (part), fig. 290; Uchida & Fukuda 1989: 226, 2 figs.; Uchida & Soyama 1994: 43, figs. 9, 10; Dai & Horng 2009: 23 (part), 1 fig. on p. 23.
Montipora aequituberculata: Shirai & Sano 1985: 208, fig. 1; Nishihira 1988: 34, 3 figs.; Nishihira & Veron 1995: 79, 4 figs.
Montipora hodgsoni: Veron 2000: vol. 1, 72 (part), figs. 1, 4 (fig. 2 = Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki 2021, fig. 3 = Montipora prolifera); 2002: 9 (part), fig. 6; Nomura, Suzuki & IWAO 2017: 5, fig. 2 (23).
Montipora sp. MOMEN sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 5, fig. 2 (21).
ウスコモンサンゴ 江口, 1965
(図1-4)
ウスコモンサンゴ 江口, 1965: 274, 図363; 内海・鈴木 1975: 70, 2図; 白井 1977: 513, 4図; 白井・佐野 1985: 208, 図1; 内田・福田 1989: 226, 2図; 内田・楚山 1994: 43, 図9, 10; 野村・鈴木 2021: 3, 図102, 103.
チヂミコモンサンゴ 西平, 1988: 34, 3図.
チヂミウスコモンサンゴ:西平・Veron 1995: 79, 4図.
モメンコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 5, 図2 (21).
チリメンコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 5, 図2 (23).
非 ウスコモンサンゴ:西平 1988:33, 3図 (= Montipora prolifera スジコモンサンゴ); 内田 1993: 73, 1図 (= Montipora prolifera スジコモンサンゴ); 西平・Veron 1995: 77, 3図 (上段と下段は Montipora prolifera スジコモンサンゴ, 中段は Montipora confusa ミダレアミメコモンサンゴ); 野村・鈴木・岩尾 2017: 6, 図2 (30) (= Montipora prolifera スジコモンサンゴ); 梶原ら 2020: 77 (= Montipora prolifera スジコモンサンゴ).
図1. ウスコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora minuta Bernard, 1897.
A-H. SMP-HC2484, チリメンコモンサンゴ和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m: A, B. 複葉状群体; C, D. サンゴ体上面; E. 同, 個体後方に鼻筋状に伸びるコリン; F, G. 同, 不完全な莢壁冠を持つ個体; H. サンゴ体下面. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. ウスコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora minuta Bernard, 1897.
A, B. SMP-HC2028. 吐噶喇列島中之島港, 水深 3 m: A. 複葉状群体; B. サンゴ体上面,直線状のコリン列と個体の分布.
C-H. SMP-HC2423, モメンコモンサンゴ和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島クシバル, 水深 1 m: C, D. 波の影響で歪な形状となった複葉状群体; E, F. サンゴ体上面; G. 同, 個体とその周囲; H. サンゴ体下面の個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. ウスコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora minuta Bernard, 1897.
A. SMP-HC2454, 複葉状群体. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m.
B. SMP-HC2480, 単葉もしくは板状群体. 阿嘉島マジャノハマ, 水深 5 m.
C, D. SMP-HC2483. 阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m: C. 小群落; D. サンゴ体上面の個体とその周囲.
E. SMP-HC2616, ほぼ単葉の群体. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 5 m.
F-H. SMP-HC2658. 西表島網取湾, 水深 2 m: F. 複葉状群体; G. サンゴ体上面,同個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図4. ウスコモンサンゴ.Fig. 4. Montipora minuta Bernard, 1897.
A. SMP-HC2732, 被覆板状群体. 宮古諸島八重干瀬, 水深 5 m.
B. SMP-HC2837, 複葉状群. 八重干瀬, 水深 2 m.
C. SMP-HC2876. 宮古島島尻東, 水深 1 m.
D. CMNH-ZG 08541, 複葉状群体. 奄美大島大浜, 水深 6 m. 立川浩之撮影.
E-H. MIY-KK2014-298. M. prolifera スジコモンサンゴとの中間的な標本. 八重干瀬, 水深5m. 梶原健次撮影. E. ほぼ板状群体; F. 群体周縁部の網目状コリン; G. サンゴ体上面の個体とその周囲; H. 同, 網目状のコリン.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真A-C, E, G: 野村恵一撮影.
図5. ウスコモンサンゴ.Fig. 5. Montipora minuta Bernard, 1897.
A-C. BMNH 1892-10-17-137 (b), M. minuta の syntype. Macclesfield Bank, South China Sea, 13 fms.
DE. BMNH 1892-10-17-137 (a), M. minuta の syntype. Macclesfield Bank, South China Sea, 13 fms.
F-H. BMNH 1892-12-1-1, M. circinata Bernard, 1897 の holotype. Palm Islands, Australia.
定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
形態:群体は単葉もしくは複葉状、稀に被覆板状を成し、基本的に上面は大型突起を欠く。葉状部の厚さは比較的薄く、縁で約 2 mm、縁から 10 cm の距離で 3~5 mm であるが、被覆板状群体の場合はより厚みがある。長径は 50 cm に達する。
サンゴ体の共骨上には霜柱状突起が基本的に密に分布するが、大きさや形は不均一である。霜柱状突起はしばしば莢壁冠を形成し、平均短径は 0.4 mm で、莢壁冠上や個体後方
(サンゴ体基部側) で発達する傾向があり、よく肥大したものは莢径を越え短径 1 mm 程の疣状突起を形成する。霜柱状突起同士が接合した細い放射状のコリン列を持つが、その発達度合いはサンゴ体によって著しい変異が認められる。コリンはしばしば破線状を成して直線的に並び、直立し、上縁は波打ち、幅は平均 0.5 mm、最大で 2.0 mm、高さは最大で 2.0 mm にそれぞれ達する。
個体密度は粗密があるが、概して疎らに分布し、個体間隔は個体5個分以内である。個体はたいてい共骨の伸長に伴い共骨面よりもやや突出し、個体によっては莢壁冠や他の霜柱状突起と共に単体で隆起して短い管状の粒状突起を形成する。サンゴ体周縁部の個体は周縁方向に向かって傾斜し、それよりも内側では直立する傾向が認められるが、個体後方にフード状の突起や鼻筋状に長く伸びるコリンを伴う場合は必ず周縁方向に傾斜する。サンゴ体によっては、個体後方のフード状隆起が発達して立ち上がり、かつ隣同士と連結して同心円状の短いコリンを形成する場合があり、このようなコリンが多数形成されるとコリンは格子状になる。莢径は平均 0.7
(範囲 0.6~0.8) mm である。
方向隔壁はやや不明瞭、長さは 0.7R、準板状か鋸歯状、稀に板状を成す。1次隔壁はほぼ完全・規則的で、長さは 0.6R、鋸歯状もしくは準板状を成し、しばしば方向隔壁と共に斜め上方に突出して低いドームを形成する。2次隔壁はほぼ完全・不規則で長さは 0.4R、たいてい1次隔壁よりも短い。軸柱は欠くか弱く発達する。莢壁は明瞭でたいてい共骨面からわずかに突出し、裸地帯は部分的に認められる。
共骨表面の目合いは平均 0.10 mm で、網目はフレームよりも幅狭く、肌理は細かい。棘は細かく表面には顆粒が発達する。サンゴ体下面ではたいていエピテカは未発達で、個体は疎らに分布し、周囲の共骨と共に単体でドーム状もしくは管状に突出し、稀に小型の霜柱状突起が散見される。
生時の色彩は共肉・ポリプ共に褐色、淡褐色もしくは緑褐色で、しばしば群体の縁は淡紫色に染め分けられる。
識別点:本種は Montipora aequituberculata チヂミウスコモンサンゴや M. prolifera スジコモンサンゴと混同されることが多いが、チヂミウスコモンサンゴは短径 2 mm 程の粒状突起がほぼ均一に密に分布する特徴で、スジコモンサンゴはより太い放射状コリン列
(幅は約 1.0 mm) を持つ特徴で、それぞれ本種と区別される。
和名の由来:江口 (1965) の M. foliosa ウスコモンサンゴは本種に再同定されるが、ここで掲載されている図は杉山 (1947) の M. foliosa「こもんさんご」と同一である。ただし、和名「こもんさんご」は既に篠原 (1927) が別種に対し提唱している。シノニムリスト示してあるように、本種は
M. aequituberculata チヂミウスコモンサンゴや M. prolifera スジコモンサンゴとの著しい混乱が認められる。チヂミコモンサンゴ (西平 1988)、チリメンコモンサンゴ (野村・鈴木・岩尾 2017) ならびにモメンコモンサンゴ
(野村・鈴木・岩尾 2017) は異名である。なお、本種の和名は群体が薄い葉状を成すことに因む。
備考:これまで本種と M. aequituberculata チヂミウスコモンサンゴ、ならびに M. prolifera スジコモンサンゴの3種は混同され、大きな混乱を招いていた。本種の分類学的位置については野村・鈴木 (2021) に従った。なお、Veron
& Wallace (1984) ならびにその見解に従った Hoeksema & Cairns (2023) は M. minuta を M. foliosa のシノニムとして扱っているが、両者はそれぞれ実在する別種である (本図鑑ならびに野村・鈴木 (2021) における M. prolifera の備考を参照)。
引用文献:
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梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会 (編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.
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Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
[BHL]
執筆者:野村恵一・鈴木豪
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更新履歴:
2023-11-12 公開