Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora nodosa (Dana, 1846)
(Figs. 1–7)
Manopora nodosa Dana, 1846: 501, pl. 46, fig 2 [Fiji].
Montipora nodosa: Bernard 1897: 117; Veron 1986: 114, 1 fig.; Nomura & Suzuki 2022: 8, figs. 145-147; Nomura, Baird & Suzuki 2023: 45, figs. 3A, B; National Museum of Natural History, Smithsonian Institute 2024: 3 figs. of lectotype.
Montipora amplectens Bernard, 1897: 143, pl. 34, fig. 8 [probably South China Sea].
Montipora willeyi Bernard, 1897: 183 [Sandal, Lifu, Loyalty Islands].
Montipora berryi Hoffmeister, 1925: 54, pl. 7, figs. 4a, 4b [Pago Pago Harbor, Tutuila, Samoa].
Montipora sp. IWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 6, fig. 2 (26).
Montipora sp. MUSHIKOBU sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 6, fig. 2 (27).
not Montipora nodosa: Veron 2000: vol. 1, 110, figs. 1-4, 1 skeleton sketch (= Montipora sp.).
イワトゲコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017
(図1-7)
イワトゲコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 6, fig. 2 (26); 野村・鈴木 2022: 8, 図145-147; Nomura, Baird & Suzuki 2023: 45, 図3A, B.
ムシコブコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 6, fig. 2 (27).
図1. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A-H. SMP-HC 2486, 和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m; A, B. 群体; C. 同, ポリプ; D. サンゴ体; E. 同, 個体とその周囲, 虫瘤状に変形した個体 (a); F. 同, 個体とその周囲; G. 突出した個体; H. 莢壁冠を形成する霜柱状突起とその表面に分布する棘; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A-C. SMP-HC 2458, ムシコブコモンサンゴ和名基準標本. ケラマ諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 1 m; A. 群体 (大半の個体が虫瘤状に変形); B. サンゴ体; C. 同, 虫瘤状に変形した個体; D, E. SMP-HC 2164. 八重山諸島西表島崎山湾, 水深 5 m; D. 群体; E. サンゴ体; F. 群体. 和歌山県串本町錆浦, 水深 3 m; G, H. SMP-HC 2516. 大隅諸島種子島大原, 水深 6 m; G. 群体; H. サンゴ体; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A-C. SMP-HC 3644. 奄美諸島加計呂麻島須子茂離南, 水深 12 m; A, B. 群体; C. サンゴ体, 個体とその周囲; D, E. SMP-HC 3649. 須子茂離南, 水深 9 m; D. 群体; サンゴ体, 個体とその周囲; F-H. SMP-HC 3655. 奄美諸島奄美大島嘉鉄, 水深 8 m; F, G. 群体; H. サンゴ体, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図4. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 4. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A, B. SMP-HC 2575. 宮古諸島宮古島上野, 水深 3 m; A. 群体; B. サンゴ体; C, D. SMP-HC 2748. 宮古島諸島八重干瀬, 水深 3 m; C. 群体; D. サンゴ体, 個体とその周囲; E, F. SMP-HC 2766. 八重干瀬, 水深 6 m; E. 群体; F. サンゴ体, 個体とその周囲; G, H. SMP-HC 2813. 八重干瀬, 水深 7 m; G. 群体; H. サンゴ体, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図5. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 5. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A-C. SMP-HC 2780. 宮古諸島八重干瀬, 水深 2 m; A. 群体; B. サンゴ体; C. 同, 個体とその周囲; D. SMP-HC 4059, 群体. 宮古島諸島宮古島世渡崎東, 水深 5 m; E, F. SMP-HC 2836. 八重干瀬, 水深 2 m; E. 群体; F. サンゴ体, 個体とその周囲; G, H. SMP-HC 3977. 宮古諸島大神島南西, 水深 2 m; G. 群体; H. サンゴ体; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図6. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 6. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A-C. SMP-HC 3148. 小笠原諸島向島オービーチ, 水深 10 m; A, B. 群体; C. サンゴ体, 個体とその周囲; D. SMP-HC 3433, 群体. 小笠原諸島父島宮之浜, 水深 2 m; E, F. SMP-HC 3283. 小笠原諸島聟島北, 水深 10 m; E. 群体; F. サンゴ体, 個体とその周囲; G, H. SMP-HC 3291. 聟島小花湾, 水深 10 m; G. 群体; H. サンゴ体, 個体とその周囲; スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図7. イワトゲコモンサンゴ.Fig. 7. Montipora nodosa (Dana, 1846).
A. USMN 316 (H 85768), Montipora berryi のホロタイプ, サンゴ体. アメリカ領サモアトゥトゥイラ島パゴパゴ港; B-D. BMNH 1884-2-26-24, Montipora amplectens のホロタイプ. 南シナ海?; B, C. サンゴ体; D. 同, 個体とその周囲; E-H. BMNH 1884-2-26-24, Montipora willeyi のホロタイプ. ニューカレドニアリフー島; E-G. サンゴ体; H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. 写真:
A. Hoffmeister (1925) より引用, B-H. 野村恵一撮影.
形態:群体は被覆状か塊状、稀に被覆板状を成し、最大長径は 1 m に達し、表面には大きさも分布も不揃いな瘤状突起が散在する。
サンゴ体の共骨上には霜柱状突起が分布し、たいてい分布も大きさも不均一であるが、サンゴ体によっては均一に密生する。霜柱状突起はドーム状か円柱状、もしくは側扁した円柱状を成し、たいてい個体周囲のものはより伸長して莢壁冠を形成する。莢壁冠を構成する霜柱状突起の短径は平均 0.4 mm、最大 0.8 mm、長さ平均 0.8 mm、最大 1.8 mm で、特に肥大成長することはなく、疣状突起は形成しない。霜柱状突起はしばしば互いに接合して不完全な個体壁や短いコリンを形成する。
個体はたいてい共骨中に埋没するが、時に莢壁や莢壁冠の伸長に伴ってやや突出する。莢壁冠を含む突出個体の短径ならびに高さは最大でも 1.5 mm 程度である。個体は密集して均一に分布するか、やや疎らに不均一に分布し、個体間隔は個体3個分以内である。莢径は 0.8
(範囲 0.7~1.0) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。なお、サンゴ体によっては、個体の一部もしくは大半が、直径 2 mm 程の球状
(虫瘤状) に変形する場合がある。
方向隔壁は準板状か鋸歯状を成し、長さは平均 0.8 (範囲 0.5~1.0) R で、たいてい莢開口面より突出する。1次隔壁は完全・規則的で、長さは平均 0.6 (範囲 0.4~0.8) R、2次隔壁は完全・不規則もしくは不完全・不規則で、長さは平均 0.3R である。軸柱は認められないか弱く発達する。莢壁は明瞭で、たいてい共骨面よりわずかに突出する。裸地帯は認められないか、部分的に明瞭である。
共骨表面の目合いは平均 0.13 mm で、網目はフレームよりも幅狭く、肌理は細かい。棘は基本的に霜柱状突起上に分布し、たいてい細長く、長さは平均 0.19 mm で、針状、棒状もしくは薄片状を成し、時に先は複数の尖端に分かれ、たいてい表面には顆粒状突起がほとんど認められない。
生時の色彩は一様な褐色、淡褐色、緑褐色、赤褐色、紫褐色、明色と褐色の斑模様等様々で、時にポリプが共肉とは異なった明色や緑色になる場合がある。
識別点:本種は以下の特徴の組み合わせによって他のコモンサンゴ類と区別される:群体は被覆状~塊状で、瘤状突起以外の大型突起を欠く;霜柱状突起の分布や大きさは基本的に不均一、たいてい莢壁冠を形成し、それを構成する霜柱状突起の平均短径は 0.4 mm で、疣状突起を形成しない;
個体は突出しても著しく伸長しない (高さは 1.5 mm を越えない);莢径は平均 0.8 mm である。
本種の外見はイワトゲコモンサンゴ種群の他種と類似し、区別が難しい場合がある。Montipora composita セノビコモンサンゴと Montipora sp. ONE オネグリセアコモンサンゴは個体の一部が著しく高く突出する (高さが 2 mm を越える) ことで、Montipora sp. OKINAWATOGE オキナワトゲコモンサンゴと Montipora peltiformis ムラサキコモンサンゴは本種に比べて霜柱状突起が著しく細い (短径 0.2~0.3 mm) ことで、Montipora trabeculata フトトゲコモンサンゴは霜柱状突起の一部が異常に肥大し疣状突起を形成することで、Montipora grisea グリセアコモンサンゴとMontipora granulata イシダタミコモンサンゴは霜柱状突起の大きさや分布がほぼ均一であることで、それぞれ本種と区別される。
分布と生態:国内では和歌山県以南の暖海に広く分布し、海外では南シナ海 (?)、グレートバリアリーフ、ニューカレドニア、フィジー、アメリカ領サモアから知られる。サンゴ礁域の比較的浅所
(平均出現水深は 5 m、水深範囲は 1~12 m) に生息する。
和名の由来:主に塊状群体を成すことと霜柱状突起を持つ特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2486 (阿嘉島産) である。ムシコブコモンサンゴは異名。
備考:本種の特徴はこれといった明瞭な形態形質を持たないことである。これまで記載された名義名の中で、本種の形態と合致するものとして、Montipora nodosa (Dana, 1848)、M. amplectens Bernard, 1897、M. willeyi Bernard, 1897、ならびに M. berryi Hoffmeister, 1925 が挙げられ、これらは異名関係にあると判断され、提唱年が最も古い M. nodosa が古参異名として選択された (野村・鈴木 2022)。また、国内から報告された Montipora sp. IWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017 ならびに Montipora sp. MUSHIKOBU sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017 も M. nodosa の異名として扱われた (野村・鈴木 2022)。
引用文献:
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執筆者:野村恵一・鈴木豪
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更新履歴:
2024-06-16 公開