Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora palawanensis Veron, 2000
(Figs. 1-6)
Montipora palawanensis Veron, 2000: vol. 1, 132, figs. 2-4, 1 skeleton fig. [type not designated]; Veron 2002: 18, figs. 23-26; Nomura & Suzuki 2021: 33, fig. 4.
Montipora danae: Veron 2000: vol. 1, 140 (part), fig. 1.
メイズコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021
(図1-6)
メイズコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021: 33, 図4.
図1. メイズコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A-H. SMP-HC 2628. 和名基準標本. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 20 m. 2014-07-01: A, B. 群体; C. サンゴ体上面; D-F. 同, 個体とその周囲;G. 同, 疣状突起側面; H. サンゴ体下面, 個体とその周辺.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. メイズコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A-H. SMP-HC 2626. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 22 m. 2014-07-01: A-D. 群体; E, F. サンゴ体上面; G, H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. メイズコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A-H. SMP-HC 2771. 宮古諸島八重干瀬, 水深7m. 2014-10-26: A-C. 群体; D, E. サンゴ体上面; F. 同, 疣状突起とコリン; G, H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図4. メイズコモンサンゴ. Fig. 4. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A, B. SMP-HC 4264, 群体. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 20 m. 2024-10-05.
C-E. SMP-HC 4265. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 20 m. 2024-10-05: C, D. 群体; E. サンゴ体上面, 個体とその周囲.
F-H. SMP-HC 4267. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 19 m. 2024-10-05: F, G. 群体; H. サンゴ体上面.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図5. メイズコモンサンゴ. Fig. 5. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A. SMP-HC 4263, 群体. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 21 m. 2024-10-05.
B-E. SMP-HC 4270. 八重山諸島石垣島名蔵湾, 水深 18 m. 2024-10-05: B, C. 群体; D, E. サンゴ体上面, 個体とその周囲.
F-H. SMP-HC 4305. 八重山諸島石垣島桜口, 水深 19 m. 2024-10-06: F, G. 群体; H. サンゴ体上面.
スケールバー: 1 mm。写真: F, G. 鈴木豪撮影; それ以外,野村恵一撮影。
図6. メイズコモンサンゴ. Fig. 6. Montipora palawanensis Veron, 2000.
A-H. SMP-HC 4315. 八重山諸島石垣島浦底湾, 水深 15 m. 2024-10-07: A, B. 群体; C, D. サンゴ体上面; E, F. 同, 個体とその周囲; G. サンゴ体下面; H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
形態:群体形は板状部を持つ被覆状、円盤状、渦を巻いた単葉状もしくは複葉状を成し、板状部 (葉状部も含む) の上面は平坦もしくは上方に不規則に湾曲し、大型突起を欠く。広い被覆状部を持つ群体では大型の瘤状突起を持つことがある。群体の長径は 150 cm に達し、板状部はやや厚く厚さは末縁で約 5 mm、末縁から 5 cm の距離で約 10 mm である。
サンゴ体板状部上面では、共骨は霜柱状突起を含む微小突起を欠く。共骨上には小型突起 (疣状突起ならびに疣状突起が接合したコリン) が密生し,コリンは疣状突起よりも優占する場合が多い。板状部の縁からサンゴ体中心に向かって 10 cm 程の距離まではコリンならびに疣状突起が破線状の放射列を形成する場合があるが、それよりも内側では放射列は認められない。コリンは短く長さは 15 mm 以内、放射方向のみならず同心円方向にも生じ、時に疣状突起と共に迷路模様を形成する。コリンの平均短径は 2.4 mm、平均高は 3.0 mm、隣接するコリンとの正中線間の距離は約 4 mm である。疣状突起はたいてい側扁し、平均短径は 2.8
(最大は4.3) mm、平均高は 3.2 (最高は6.5) mm、高幅比 (平均高/平均短径) は平均 1.2 で高さは幅よりもやや大きい。個体壁は基本的に欠くが、板状部の縁部で形成される場合がある。
個体は小型突起間に分布し、平行するコリン間では1列に並ぶ。分布密度は変異があるが、個体間隔はたいてい個体1個分以内である。個体は共骨中にやや窪む場合があり、基本的に突出しない。莢径は平均 1.0
(範囲は0.7-1.3) mmで,個体の大きさは属内では大きい。隔壁は長く準板状か鋸歯状を成し、ほぼ垂直方向に並び、基本的に莢開口面から突出しないが時に斜め上方に突出してドーム状に莢開口面を被う。軸柱は認められないか弱く発達する。方向隔壁の長さは平均 0.9R、1次隔壁は完全・規則的で長さは平均 0.8R、2次隔壁はたいてい不完全・不規則で長さは平均 0.5R である。莢壁はやや明瞭か不明瞭、基本的に共骨面より突出しない。裸地帯は不明瞭である。
共骨表面の目合いは平均 0.22 mm で、基本的に肌理は粗いがサンゴ体によっては細かい場合がある。棘は小型突起上で発達し、針状か薄片状を成し、後者の場合は上縁が複数の尖端に分かれる場合が多い。長さは平均 0.22
(範囲は0.10-0.41) mm で、棘の長さは共骨の目合いの大きさに比例し、肌理が細かい場合は棘が短く肌理が粗い場合は長い。棘上縁の顆粒状突起は発達が弱い場合が多い。
サンゴ体板状部下面ではエピテカの発達が悪く、共骨表面は基本的に小型突起を欠き滑らかである。個体は共骨中に埋没するかやや突出し、疎らに分布し、莢径は平均 0.7 mm で、サンゴ体上面の個体に比べて顕著に小さい。
生時の色彩は一様な褐色、黄褐色、もしくは青褐色を呈し、板状部縁部は青みを帯びる場合がある。
識別点:本種が持つ重要な分類形質 (群体は葉状もしくは被覆板状,霜柱状突起を欠く,疣状突起やコリンの小型突起が密生する) は M. mactanensis ホウシャコモンサンゴと共有し、両者の外見は互いに酷似する。本種は小型突起の放射列がサンゴ体縁部に限られ、コリンが放射方向のみならず同心円方向にも形成されるのに対し、ホウシャコモンサンゴは小型突起の放射列がサンゴ体中央まで続くこととコリンは同心円方向には形成されないことで、両者は区別される。
分布と生態:国内では宮古諸島 (八重干瀬) ならびに八重山諸島 (石垣島、西表島)、海外ではフィリピンならびにパプアニューギニアに産する。内湾環境のやや深所
(平均水深は 18 m、範囲は 7-22 m) に生息する。
和名の由来:サンゴ体上面の一部において、コリンならびに疣状突起が迷路模様を形成する特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2628 (西表島産)
である。
備考:M. palawanensis は原記載においてホロタイプ指定が為されなかったが、名義タクソンは適格であると裁定された (ICZN 2011)。また、Veron (2002)
において M. palawanensis のホロタイプ指定が試みられたが、ホロタイプ指定は原記載でしか行えないので (ICZN 1999)、この試みは無効とされる。従って、本名義タクソンにはいかなるタイプも存在せず、タクソンの分類学的位置を特定することが出来ない。そのため本稿では、Veron
(2002) において M. palawanensis のホロタイプ指定が試みられた標本 (MSI-3009-CO) をレクトタイプに見立て、それと調査標本とを照合して同定を試みた。従って、本稿における種同定は暫定的なものである。
引用文献:
ICZN (International Commission on Zoological Nomenclature) (1999) International Code of Zoological Nomenclature. Fourth Edition. The International Trust for Zoological Nomenclature, c/o National History Museum, London. [BHL]
ICZN (International Commission on Zoological Nomenclature) (2011) Coral taxon names published in ‘Corals of the world’ by J.E.N. Veron (2000): potential availability confirmed under Article 86.1.2. Bull Zool Nomencl 68: 162–166. [Corallosphere]
野村恵一・鈴木豪(2021)西表島網取湾から採集された3種のコモンサンゴ類 (イシサンゴ目ミドリイシ科). Fauna Ryukyuana 59: 27-34 [琉球大学学術リポジトリ]
Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine Science, Townsville.
Veron JEN (2002) New species described in corals of the world. Australian
Institute of Marine Science, Townsville. [AIMS]
執筆者:野村恵一・鈴木豪
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更新履歴:
2025-05-04 公開