Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora samarensis Nemenzo, 1967
(Figs. 1-3)
Montipora samarensis Nemenzo, 1967: 29, pl. 9, fig. 3 [Guiuan, Samar, Philippines]; Nomura & Suzuki 2021: 11, figs. 127, 128.
Montipora altasepta: Nishihira & Veron 1995: 65 (part), upper & middle figs.; Veron 2000: vol. 1, 153 (part), figs. 2, 3.
Montipora sp. ARAEDA sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 5, fig. 2 (25); Kajiwara et al. 2020: 78.
not Montipora samarensis: Nishihira & Veron 1995: 64, 1 fig. (= Montipora altasepta); Veron 2000: vol. 1, 156, figs. 1-4 (= Montipora digitata); Kameda, Mezaki & Sugihara 2013: 21, 71, 2 figs. (= Montipora digitata).
? Montipora samarensis: Veron 2000: vol. 1, 156, figs. 1-4.
アラエダコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017
(図1-3)
アラエダコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 5, 図2 (25) (Montipora sp. ARAEDAとして); 梶原ら 2020: 78 (Montipora sp. ARAEDAとして); 野村・鈴木 2021: 11, 図127, 128.
図1. アラエダコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora samarensis Nemenzo, 1967.
A, B. SMP-HC 2069. 八重山諸島黒島キャングチ, 水深 2 m: A. サンゴ体; B. 同, 個体とその周囲.
C, D. SMP-HC 2070. 黒島仲本礁池, 水深 2 m: C. サンゴ体; D. 同, 個体とその周囲.
E-H. SMP-HC 2422. 慶良間諸島阿嘉島クシバル, 水深 1 m: E. 群体; F. サンゴ体; G, H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. アラエダコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora samarensis Nemenzo, 1967.
A-D. SMP-HC 2443. 和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 3 m: A. 群体; B. サンゴ体; C, D. 同, 個体とその周囲.
E-H. SMP-HC 2872. 宮古諸島宮古島島尻東礁池, 水深 1 m: E, F. 群体; G. サンゴ体; H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. アラエダコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora samarensis Nemenzo, 1967.
A-D. SMP-HC 4027. 宮古諸島八重干瀬ヒグマラ, 水深 2 m: A, B. 群体; C. サンゴ体; D. 同, 個体とその周囲.
E-H. SMP-HC 4035. ヒグマラ, 水深 2 m: E, F. 群体; G. サンゴ体; H. 同, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
形態:小型の樹木状群体を形成し、明瞭な付着基部を欠き、長径は 30 cm、高さは 15 cm 以内である。枝の分枝次数はたいてい3次、稀に4次、分岐は平面状
(扇状) に展開する傾向がある。枝は内面と外面の両面性があり、外面は莢壁冠や個体壁が内面よりもやや発達する。末枝は先細った円錐状を成すが時に側扁し、長さは約 20 mm、基部の太さは約 4 mm である。幹は側扁し断面は楕円形を成し、基部の短径は約 8 mm である。
サンゴ体共骨上では、個体周囲を霜柱状突起が被い莢壁冠を形成する。莢壁冠を構成する霜柱状突起の全てもしくは一部は接合して個体壁を形成する。霜柱状突起の形状はドーム状、円柱状、薄片状等の変異が認められるが、形状や大きさは同一のサンゴ体内では均一性がある。霜柱状突起の短径は平均 0.4 mm で、最大で短径 0.6 mm、高さ 0.7 mm に達する。疣状突起は基本的に形成されないが、末枝の基点として出現する場合がある。また、複数の霜柱状突起が連結して短いコリンを形成する場合がある。
個体は密生し個体間隔は個体1個分以内、基本的に共骨中に埋まり共骨面から突出せず、たいてい共骨面に対して垂直方向を向く。莢径は平均 0.6 (範囲は 0.6~0.7)
mm で、個体の大きさは属内では中程度である。方向隔壁の長さは平均 0.7R で、たいてい準板状をなし、莢開口面から突出する。1次隔壁は完全・不規則、長さは 0.5R で、鋸歯状か準板状を成し、たいていやや突出する。2次隔壁は不完全・不規則、長さは 0.2R である。軸柱は時に弱く発達する。莢壁は明瞭で、稀にわずかに莢壁面から盛り上がる。裸地帯は部分的に明瞭である。
共骨表面の目合いは 0.11 mm で、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は細かい。棘は細長く、棒状もしくは薄片状を成し、長さは平均 0.15 mm 、表面には顆粒が弱く発達する。
生時の色彩は共肉が褐色もしくは淡褐色で、たいてい小型突起と枝の先端は明色を成す。
識別点:本種はエダコモンサンゴ Montipora digitata やコツブエダコモンサンゴ M. altasepta と混同されることがあるが、本種は大きさや形状が均一な霜柱状突起が個体周囲を被う特徴でこれら2種と容易に区別される。また、大きさや形状が均一な霜柱状突起を持つ特徴はトゲコモンサンゴ
M. hispida と共有するが、本種の霜柱状突起は莢壁冠を形成し、莢壁冠はたいてい個体壁に発達し、個体は密生するのに対し、トゲコモンサンゴは基本的に莢壁冠や個体壁を形成せず、個体もやや疎らに分布することで両者は区別される。
和名の由来:エダコモンサンゴ M. digitata に似るが、表面が粗い (霜柱状突起を持つ) 特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2443 (阿嘉島産) である。
備考:国内で採集された標本群は、既知種の中では M. samarensis の原記載に最も適合する。上述したように、本種はエダコモンサンゴ M. digitata やコツブエダコモンサンゴ M. altasepta との混乱が認められる。
参考:担名タイプの写真
Montipora samarensis Nemenzo, 1967── Holotype, UP C-1260 [Nmenzo Species List]
引用文献:
梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.
亀田和成・目崎拓真・杉原薫 (2013) 黒島研究所収蔵造礁サンゴ目録第2版. 日本ウミガメ協議会付属 黒島研究所, 竹富町. [日本ウミガメ協議会付属黒島研究所]
Nemenzo F (1967) Systematic studies on Philippine shallow-water scleractinians. VI Suborder Astrocoeniina (Montipora and Acropora). Nat Appl Sci Bull Univ Philipp 20:1-141, 143-223.
西平守孝・Veron JEN (1995) 日本の造礁サンゴ類. 海游社, 東京.
野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(50), 国内産種の紹介36. 霜柱状突起と上方大型突起を持つ種. マリンパビリオン 特別号13. [串本海中公園]
野村恵一・鈴木豪・岩尾研二 (2017) 阿嘉島のコモンサンゴ類. みどりいし28, supplement. [阿嘉島臨海研究所]
Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine
Science, Townsville.
執筆者:野村恵一・鈴木豪
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更新履歴:
2023-11-12 公開