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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora sp. FUCHIMURA sensu Nomura, 2017
(Figs. 1, 2)

Montipora sp. FUCHIMURA Nomura, 2017: 124, fig. 1 (14).

フチムラサキイボコモンサンゴ 野村, 2017
(図1, 2)

フチムラサキイボコモンサンゴ 野村, 2017: 124, 図1 (14).

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図1. フチムラサキイボコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora sp. FUCHIMURA sensu Nomura, 2017.

A-G. SMP-HC 3105, 和名基準標本. 小笠原諸島母島群島母島大崩湾ウエントロ, 水深 20 m, 2016-02-14: A-C. 群体; D. サンゴ体板状部上面; E.同, 個体とその周囲; F. サンゴ体板状部下面; G. 同, 個体とその周辺.

H. SMP-HC 3216, 群体. 小笠原諸島母島群島母島猪熊湾イワシ根, 水深 16 m. 2016-02-21.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. フチムラサキイボコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora sp. FUCHIMURA sensu Nomura, 2017.

A-D. SMP-HC 3308. 小笠原諸島聟島群島聟島北, 水深 11 m. 2016-09-24: A, B. 群体; C. サンゴ体板状部上面; D. 同, 個体とその周囲.

E-G. SMP-HC 3361. 小笠原諸島聟島群島嫁島東, 水深 21 m. 2016-09-29: E, F. 群体; G. サンゴ体板状部上面.

H. 群体. 小笠原諸島母島群島母島猪熊湾イワシ根, 水深 16 m. 2016-02-21.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体は被覆板状もしくは丸いテーブル状を成し、板状部はたいてい大きくて水平に広がり、長径は最大で 2 m に達する。板状部はやや厚く、厚さは縁で約 4 mm、縁から 10 cm の距離で約 10 mm である。上面には直径 1 cm 程の瘤状突起が散在し、時に高さ 5 cm 程の柱状突起を備える。

サンゴ体上面では共骨は霜柱状突起を含む微小突起を欠く。共骨上には全面にわたって疣状突起が密生するが、密度はやや不均一である。疣状突起はしばしば互いに接合して短いコリンを形成し、特に板状部縁部で顕著である。また板状部の縁から数cmの幅にわたってコリンと疣状突起とが破線状に並んだ放射肋が認められる。さらに、縁近くには1~2条の同心円状の盛り上がりが認められる。コリンは基本的に放射状方向に並ぶが、稀に同心円状方向にも形成される。疣状突起はドーム状もしくは頭の丸い円柱状を成し、成長と共に側扁する。疣状突起の平均短径は 2.1 mm、最大短径は 2.9 mm、平均高は 2.7 mm、最大高は 3.9 mm である。疣状突起の高幅比 (平均高/平均短径) は 1.3 で、高さは短径よりも大きい。コリンの平均短径は 2.1 mm、平均高は 2.7 mm、最大高は 5 mmである。コリンは高さが 5 mm を超えると上半部にも個体が生じ、成長が進むに連れて瘤状突起や柱状突起へと発達する場合がある。個体壁は基本的に欠くが、稀に板状部縁部で形成される。

個体は疣状突起ならびにコリン間に分布し、分布密度には粗密があるがたいてい個体間隔は個体1~2個分である。個体は時に共骨面よりもやや突出し、莢径は平均 0.9 (範囲は 0.8-1.0) mmで、個体の大きさは属内では大きい。隔壁は不完全・不規則か完全・不規則で、鋸歯状もしくは準板状を成してほぼ垂直に並び、最上縁のものは莢開口面からやや突出する傾向がある。軸柱は弱く発達する。各隔壁の平均長は方向隔壁が 0.9R、1次隔壁が 0.6R、2次隔壁が 0.4R であるが,方向隔壁は不明瞭な場合が多く,1次隔壁と2次隔壁はしばしば亜等長を成す。莢壁は明瞭で、時に弱く突出し、上縁には棘が分布する。裸地帯はやや不明瞭である。

共骨表面の目合いは平均 0.23 mm で、表面の肌理は粗い。棘はやや長く平均長は 0.23 (最長0.35) mm、針状か棒状もしくは薄片状を成し、時に上縁は複数の尖端に分かれる。棘上縁は顆粒状突起を欠くか、弱く発達する。

サンゴ体板状部下面ではエピテカは発達せず、共骨表面は小型突起を欠くか、稀に疣状突起が散在する。個体は疎らに分布し、たいてい莢壁の伸長に伴ってやや突出し、莢径は約 0.7 mm である。

生時の色彩は共肉が褐色もしくは緑褐色で、群体は青紫色もしくは紫色で縁取りされる。ポリプは共肉と同色で、触手は白色を呈する。

識別点:本種の重要な分類形質 (群体は広い板状部を持つ、霜柱状突起を欠く、小型 (短径約 2 mm) の疣状突起が密生する、共骨表面の肌理は荒い) は Montipora verruculosa とも共有する。この種は疣状突起がひしめくように著しく密生することと、個体が小さい (平均莢径 0.7 mm) 特徴で、本種と区別される。

分布と生態:小笠原諸島以外では確認されていない。サンゴ礁域のやや深所 (平均出現水深は 17 m、水深範囲は 11-21 m) に生息する。

和名の由来:群体が紫色で縁取りされる特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 3105 (母島産)。

備考:本種は既知種の中に該当するものが見当たらないことから、小笠原諸島固有の未記載種である可能性が持たれる。

引用文献:

野村恵一 (2017) 小笠原諸島の有藻性イシサンゴ群集. In: 東京都小笠原支庁, 平成28年度小笠原諸島海域生態調査委託報告書. 小笠原自然文化研究所, 小笠原, pp 95-179. [小笠原世界遺産センター]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2025-05-04 公開