Top page科・属リストAcroporidaeMontiporaMontipora sp. FUTOTOGESUJI

Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora sp. FUTOTOGESUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021
(Figs. 1, 2)

Montipora sp. FUTOTOGESUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021: 11, fig. 109.

フトトゲスジコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021
(図1, 2)

フトトゲスジコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021: 11, 図109.

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図1. フトトゲスジコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora sp. FUTOTOGESUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.

A-H. SMP-HC 3758, 和名基準標本. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 25 m: A. 複葉状群体; B. 同, 上面; C-E. サンゴ体上面; F. 同, コリンと個体後方に生じた鼻筋状の疣状突起; G. 同, 個体とその周辺; H. サンゴ体下面. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. フトトゲスジコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora sp. FUTOTOGESUJI sensu Nomura & Suzuki 2021.

A-C. SMP-HC 3789. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 17 m: A. 平坦な複葉状群体; B. サンゴ体上面, 個体とその周辺; C. サンゴ体下面.

D-H. SMP-HC 3790. 奄美大島阿鉄湾, 水深 17 m: D, E. 平板状もしくは被覆板状群体上面; F. サンゴ体上面; G. 同, 個体とその周囲; H. 同, 末縁側面における個体の分布.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体は複葉状か板状もしくは被覆板状を成し、上面は瘤状突起以外の上方大型突起を欠き、長径は 50 cm に達する。葉状部はやや厚く、厚さは末縁で約 3 mm、末縁から 10 cm の距離で約 5 mm である。

サンゴ体上面では共骨上に歪なドーム状をした霜柱状突起が密生し、短径は平均 0.6 mm である。莢壁冠は認められるがたいてい不明瞭である。霜柱状突起はしばしば肥大して莢径よりも大きな疣状突起を形成、その短径は最大で 2 mm に達する。個体後方 (サンゴ体基部側) に位置する疣状突起は、時にカップ状や鼻筋状の突起を形成する。また、大型の疣状突起は時に上半部に個体や霜柱状突起を増やして粒状突起や小瘤状突起に発達する。サンゴ体周縁部には細く短い放射状のコリン列が形成され、各列は破線状を成し、直立し、太さは約 1 mm、高さは最大で 1.5 mm に達する。また、サンゴ体周縁近くには、個体後方の隆起が発達して同心円状に連なった破線状列が認められる。

個体は疎らに分布し、個体間隔は個体10個以内である。個体の向きは一定せず、様々な方向を向く。個体は共骨中に埋没するか莢壁の伸長によってわずかに突出する。また、しばしば莢壁冠や莢壁冠を形成する霜柱状突起同士が接合した個体壁と共にドーム状もしくは円錐状に隆起して粒状突起を形成する。サンゴ体の縁の側面にも個体が窪んで分布し、そのために縁は凹凸とする。莢径は平均 0.9 (範囲 0.8~1.0) mm で、個体の大きさは属内では大きい。

方向隔壁はやや不明瞭で、長さは 0.8R、鋸歯状か準板状を成す。1次隔壁は完全・規則的で長さは 0.7R、鋸歯状か準板状を成し、たいてい方向隔壁と共に斜め上方に弱く突出して低いドームを形成する。2次隔壁はほぼ完全・不規則で、長さは 0.5R、たいてい1次隔壁より短い。軸柱は認められないかか弱く発達する。莢壁、裸地帯共にほぼ不明瞭である。

共骨表面の目合いは平均 0.14 mmで、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は細かい。棘は細かく、表面は微小な顆粒状突起に被われる。

サンゴ体下面ではエピテカが発達して縁近くまでを被い、個体は疎らに分布して共骨中に埋没し、莢径は 0.4 mm で、共骨表面は滑らかである。

生時の色彩は共肉が淡緑褐色か淡褐色で、ポリプは緑色を呈する場合が多い。

識別点:霜柱状突起の大きさが著しく不均一で、かつ太い特徴は Montipora trabeculata フトトゲコモンサンゴや M. crassifolia アツバコモンサンゴと共有する。フトトゲコモンサンゴは基本的に塊状群体を成し放射状コリン列を欠くことで本種と区別される。アツバコモンサンゴは本種と同様の葉状群体を成すが、この種は莢壁冠が接合した特徴的なリング状の個体壁を形成するのに対し、本種の個体壁は顕著なリング状を成さない点で両者は区別される。

分布と生態:分布記録は奄美大島阿鉄湾のみである。内湾のやや深所 (平均出現水深は 20 m、水深範囲は 17~25 m) に生息する。

和名の由来:和名は太い霜柱状突起と放射状コリン列を持つ特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 3758 である。

備考:該当する既知種が見当たらないため、未記載種と思われる。

引用文献:

野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(48), 国内産種の紹介34. 霜柱状突起と葉状・板状群体を持つ種. マリンパビリオン 特別号12. [串本海中公園]

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2023-11-12 公開