Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017
(Figs. 1–6)
Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 7, fig. 2 (35); Yokochi et al. 2019: 43; Kajiwara et al. 2020: 78; Nomura & Suzuki 2021: 9, fig. 125; Nomura, Baird & Suzuki 2023: 45, Fig. 3C, D.
Montipora sp. ONE: Nomura 2017: 140, fig. 1 (22).
オキナワトゲコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017
(図1-6)
オキナワトゲコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 7, 図2 (35); 横地ら 2019: 43; 梶原ら 2020: 77; 野村・鈴木 2021: 9, 図125; Nomura, Baird & Suzuki 2023: 45, Fig. 3C, D.
オネグリセアコモンサンゴ: 野村 2017: 140, 図1 (22).
図1. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A-H. SMP-HC 2433, 和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 3 m; A. 群体; BC. 同, 柱状突起部; D. サンゴ体上面, 柱状突起部; E. 同, 個体側面と霜柱状突起; F-H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A. SMP-HC 2194, 群体. 八重山諸島竹富島タケルンジュ, 水深 2 m; B, C. SMP-HC 2457. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 1 m; B. 群体; C. サンゴ体上面, 個体とその周囲; D-G. SMP-HC 2489. マジャノハマ, 水深 2 m; D. 群体; E. 同, 柱状突起部; F. サンゴ体上面, 柱状突起部; G. 同, 個体とその周囲; H. SMP-HC 2634, 群体. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 3 m; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A, B. SMP-HC 2607. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 7 m; A. 群体; B. サンゴ体上面, 個体とその周囲; C, D. 群体, SMP-HC 2622. 網取湾, 水深 3 m; E-H. SMP-HC 2654. 網取湾, 水深 2 m; E, F. 群体; G. サンゴ体上面, 個体周囲の細長い霜柱状突起; H. 同, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図4. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 4. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A-D. SMP-HC 3375. 小笠原諸島嫁島東, 水深 16 m; A, B. 群体; C. サンゴ体上面, 個体とその周囲; D. 同, 個体側面; E-G. SMP-HC 3692. 奄美諸島奄美大島手安, 水深 2 m; E, F. 群体; G. サンゴ体上面, 個体とその周囲; H. SMP-HC 3727, 群体. 奄美大島白浜, 水深 7 m; スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図5. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 5. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A. SMP-HC 3746, 群体. 奄美諸島奄美大島アヤマル岬, 水深 5 m; B, C. 大東諸島南大東島ヤギミチ, 水深 18 m; B. 群体; C. サンゴ体上面, 個体とその周囲; D-F. SMP-HC 3959. 南大東島海軍棒沖, 水深 17 m; D, E. 群体; F. サンゴ体上面, 個体とその周囲; G. SMP-HC 3983, 群体. 宮古諸島大神島東, 水深 2 m; H. SMP-HC 3991, 群体. 大神島南西, 水深 2 m; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図6. オキナワトゲコモンサンゴ.Fig. 6. Montipora sp. OKINAWATOGE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A. SMP-HC 4001, 群体. 宮古諸島大神島東, 水深2 m; B-G. SMP-HC 4003. 大神島南西, 水深2 m;
B. 群体; C. 同, 板状部; D. サンゴ体, 板状部上面; E. 同, 個体とその周囲; F. サンゴ体, 板状部下面; G. 同,
個体とその周囲; H. SMP-HC 4030, 群体. 宮古諸島八重干瀬, 水深 3 m; 定規の目盛り: 1 mm.
スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
形態:群体はたいてい塊状、時に被覆状もしくは被覆板状を成し、長径は最大で 150 cm に達する。群体上面には様々な大きさの瘤状突起や指状突起が分布し、しばしばこれらの突起が束になった柱状突起もしくは樹木状突起を形成する。樹木状突起の分枝次数は1次まで、末枝は瘤状である。
サンゴ体上面の共骨上には霜柱状突起が分布し、密度や長さは部位やサンゴ体によって様々である。霜柱状突起は個体の周囲でより発達して莢壁冠を形成する。莢壁冠を形成する霜柱状突起はサンゴ体内では大きさがほぼ揃い、著しく細くてやや側扁し、長さは平均で 1.2 mm、最大で 2.0 mm、短径は平均で 0.2 mm、最大で 0.4 mm である。霜柱状突起は時に個体間で互いに接合してごく短いコリンを形成するが、疣状突起は形成しない。
個体は莢壁の伸長に伴ってしばしば筒状に長く伸長し、長さは最大で 2 mm に達する。突出個体の莢壁側面は霜柱状突起もしくは霜柱状突起同士が接合した共骨によって被われるが、莢壁は部分的に露出するため個体壁は不完全であり、頂端粒状突起は形成されない。個体はやや不均一にかつやや疎らに分布し、個体間隔は概して個体2個分以内である。個体は基本的に共骨面に対し垂直方向を向く。莢径は平均 0.75
(範囲 0.6~0.8) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。
隔壁はほぼ垂直に並び、軸柱は発達しないか弱く発達する。方向隔壁は長さが平均 0.9 (範囲 0.7~1.0) R、板状か準板状もしくは鋸歯状を成し、たいてい莢開口面から突出する。1次隔壁は完全・規則的で、長さが平均 0.6
(範囲 0.5~0.7) R、鋸歯状もしくは準板状を成し、時に弱く突出する。2次隔壁はたいてい完全・不規則、長さが平均 0.3R で1次隔壁よりも短い。莢壁は明瞭で、裸地帯は不明瞭か部分的に認められる。
共骨表面の目合いは平均 0.15 mm で、網目はフレームとほぼ同幅である。棘は基本的に霜柱状突起上に分布し、長さは平均 0.14 mm で細長く、針状か棒状もしくは薄片状を成し、時に上縁が複数の尖端に分かれ、顆粒状突起は発達しないか弱く発達する。
サンゴ体板状部下面では、エピテカの発達度合いはサンゴ体によって異なり、共骨表面は小型突起を欠き滑らかで、個体は疎らに分布し、やや突出し、莢径は平均 0.6 mm である。
生時の色彩は共肉が一様な褐色か淡褐色、緑褐色、黄褐色もしくは赤褐色で、ポリプや霜柱状突起は白色か明色を呈する。
識別点:本種は霜柱状突起が著しく細い (短径は約 0.2 mm) ことで類似した群体形を有する他のコモンサンゴ類と区別される。顕著に突出した個体を持つ標本は、Montipora sp. ONE オネグリセアコモンサンゴによく似る。この種はしばしば個体が著しく長く突出すること (高さ 2 mm 以上)、個体は小型であること
(莢径の平均短径は 0.7 mm)、霜柱状突起はやや太いこと (平均短径は 0.4 mm、最大短径は 0.6 mm)
の特徴によって、本種と区別される。
分布と生態:琉球列島 (奄美諸島、慶良間諸島、宮古諸島、八重山諸島)、大東諸島、ならびに小笠原諸島から知られる。概して波の穏やかな比較的浅いサンゴ礁域 (平均出現水深は 6 m、水深範囲は 1~18 m)
に生息する。
和名の由来:初産地が沖縄 (慶良間諸島) であることと、霜柱状突起 (トゲ) を持つ特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2433 (阿嘉島産)。
備考:本種は既知種の中では該当するものが見当たらないため、未記載種と思われる。
引用文献:
梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.
野村恵一 (2017) 小笠原諸島の有藻性イシサンゴ群集. In: 東京都小笠原支庁, 平成28年度小笠原諸島海域生態調査委託報告書. 小笠原自然文化研究所, 小笠原, pp 95-179. [小笠原世界遺産センター]
Nomura K, Baird AH, Suzuki G (2023) First record in 135 years since the original description of a zooxanthellate scleractinian coral, Montipora stalagmites Ortmann, 1888 collected from Minami-Daitojima Island (Okinawa, Japan), and the Montipora fauna of this Island. Fauna Ryukyuana 68: 41-51. [琉球大学学術リポジトリ]
野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(50), 国内産種の紹介36. 霜柱状突起と上方大型突起を持つ種. マリンパビリオン 特別号13. [串本海中公園]
野村恵一・鈴木豪・岩尾研二 (2017) 阿嘉島のコモンサンゴ類. みどりいし28, supplement. [阿嘉島臨海研究所]
横地洋之・下池和幸・梶原健次・野村恵一・北野裕子・松本尚・島田剛・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・山本広美・座安佑奈・木村匡・河野裕美 (2019)
西表島網取湾の造礁サンゴ類. 西表島研究 2018, 東海大学沖縄地域研究センター所報 36-69.
執筆者:野村恵一・鈴木豪
Citation:
更新履歴:
2024-06-16 公開