Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora sp. ONE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017
(Figs. 1–3)
Montipora nodosa: Veron & Wallace 1984: 94, figs. 242-252.
Montipora sp. ONE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 6, fig. 2 (28); Nomura & Suzuki 2022: 4, figs. 139, 140.
Montipora sp. SHIWA sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 6, fig. 2 (29).
Montipora sp. ONEGRISEA sensu Yokochi et al., 2019: 43; Kajiwara et al. 2020: 78.
Montipora sp. SHIWATOGE sensu Yokochi et al., 2019: 43.
not Montipora sp. ONE: Nomura 2017: 140, fig. 1 (22) (= Montipora sp. OKINAWATOGE).
オネグリセアコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017
(図1-3)
オネグリセアコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 6, 図2 (28); 横地ら 2019: 43 (Montipora sp. ONEGRISEAとして); 梶原ら 2020: 78 (Montipora sp. ONEGRISEA として); 野村・鈴木 2022: 4, 図139, 140.
シワトゲコモンサンゴ 野村・鈴木・岩尾, 2017: 6, 図2 (29) (Montipora sp. SHIWA として); 横地ら 2019: 43 (Montipora sp. SHIWATOGE として).
非オネグリセアコモンサンゴ 野村 2017: 140, 図1 (22) (=オキナワトゲコモンサンゴ).
図1. オネグリセアコモンサンゴ.Fig. 1. Montipora sp. ONE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A-H. SMP-HC 2472, 和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 3 m; A, B. 群体; C. サンゴ体上面; D-F. 同, 個体とその周囲; G. 同, 突出した個体; H. 同, 突出した個体, 側面; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. オネグリセアコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora sp. ONE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A, B. SMP-HC 896. 和歌山県串本町潮岬, 水深 15 m; A. 群体; B. サンゴ体上面, 突出した個体; C, D. SMP-HC 2196. 八重山諸島竹富島タケルンジュ, 水深 2 m; C. 群体; D. サンゴ体上面, 個体とその周囲; E, F. SMP-HC 2214. 八重山諸島竹富島東, 水深 4 m; E. 群体; F. サンゴ体上面, 個体とその周囲; G, H. SMP-HC 2621. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 3 m; G. 群体; H. サンゴ体上面, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. オネグリセアコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora sp. ONE sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017.
A-D. SMP-HC 2446, シワトゲコモンサンゴ和名基準標本. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 4 m;
A-C. 群体; D. サンゴ体上面, 突出した個体; E-H. SMP-HC 2703. 宮古諸島大神島西, 水深 7 m;
E, F. 群体; G. サンゴ体上面, 個体とその周囲; H. サンゴ体板状部下面, 個体とその周囲; 定規の目盛り: 1 mm.
スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
形態:群体はたいてい厚みのある被覆状、時に被覆板状もしくは塊状を成し、長径は 60 cm に達する。群体表面には大きさも分布も不均一な瘤状突起が散在するか密生する。
サンゴ体上面の共骨上には霜柱状突起が不均一に分布し、たいてい個体周囲で発達して莢壁冠を形成する。莢壁冠を構成する霜柱状突起は細く、ドーム状もしくは先の丸い円柱状を成し、時に側扁し、太さは群体内ではほぼ揃い、著しく肥大することはなく疣状突起は形成しない。また、莢壁側面では筋状の列を形成する傾向がある。霜柱状突起は時に個体間で互いに接合して短く不規則なコリンを形成する。莢壁冠を構成する霜柱状突起の短径は平均 0.4 mm、最大 0.6 mm、長さは平均 1.0 mm、最大 1.4 mm である。
個体は不均一に分布し個体間隔は概して個体2個分以内、基本的に共骨面に対し垂直方向を向く。個体はしばしば筒状を成して顕著に突出する。莢壁側面は霜柱状突起もしくは霜柱状突起同士が接合した共骨によって被われるが、莢壁は部分的に露出するため個体壁は不完全であり、頂端粒状突起は形成されない。個体は時に連結して列を成して不規則に並び、尾根状の隆起を形成する。莢壁冠を含む個体の短径は平均 1.4 mm、最大 1.8 mm、長さは平均 1.7 mm、最大 2.5mm である。莢径は平均 0.7
(範囲 0.5~0.8) mmで、個体の大きさは属内では中程度である。
隔壁はやや短く準板状か鋸歯状を成し、たいてい莢開口面よりわずかに突出する。また、隔壁は莢奥で互いに接近するか稀に部分的に接合して小さな軸柱を形成する。方向隔壁の長さは平均 0.8R である。1次隔壁はほぼ完全・規則的で、長さは平均 0.5R、2次隔壁は不規則・不完全で、長さは1次隔壁よりも明瞭に短いかやや短い。莢壁は明瞭で、多かれ少なかれ共骨面から突出する。裸地帯は不明瞭か、部分的に認められる。
共骨表面の目合いは 0.12 mm で、網目はフレーム幅よりも幅狭く、肌理は細かい。棘は細長く、長さは平均 0.17 mm で、針状もしくは棒状を成し、時に上縁は複数の尖端に分かれ、顆粒状突起を欠くか弱く発達する。
生時の色彩は一様な淡褐色か赤褐色もしくは淡黄褐色を成し、時に霜柱状突起の先端が明色を呈する場合がある。
識別点:本種の特徴である筒状に顕著に突出した個体を持つ特徴は、Montipora composita セノビコモンサンゴや M sp. OKINAWATOGE オキナワトゲコモンサンゴと共有し、これらとの区別が難しい場合がある。セノビコモンサンゴは時に疣状突起や頂端粒状突起を形成すること、個体は様々な方向を向くことによって、オキナワトゲコモンサンゴは霜柱状突起が著しく細いこと
(平均短径は 0.2 mm)、個体の長さは 2 mm を超えないこと、ポリプはたいてい白色であることの特徴によって、それぞれ本種と区別される。
分布と生態:国内では和歌山県 (串本) と沖縄県 (慶良間諸島、宮古諸島、八重山諸島)、海外ではグレートバリアリーフに産する。水深 2~15 m
(平均 5 m) のやや浅い岩礁~サンゴ礁域に生息する。
和名の由来:時に個体 (粒状突起) が連結して尾根状の連なりを形成する特徴に因む。和名基準標本は SMP-HC 2472 (阿嘉島産)。シワトゲコモンサンゴは異名。
備考:本種は既知種の中では該当するものが見当たらないため、未記載種と思われる。
引用文献:
梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.
野村恵一 (2017) 小笠原諸島の有藻性イシサンゴ群集. In: 東京都小笠原支庁, 平成28年度小笠原諸島海域生態調査委託報告書. 小笠原自然文化研究所, 小笠原, pp 95-179. [小笠原世界遺産センター]
野村恵一・鈴木豪 (2022) コモンサンゴ類の同定の話(51) , 国内産種の紹介37. 霜柱状突起を持ち、被覆状・塊状群体を成し、瘤状突起以外の大型突起を欠く種. マリンパビリオン 特別号14. [串本海中公園]
野村恵一・鈴木豪・岩尾研二 (2017) 阿嘉島のコモンサンゴ類. みどりいし28, supplement. [阿嘉島臨海研究所]
Veron JEN, Wallace CC (1984) Scleractinia of eastern Australia, part V. Family Acroporidae. Australian Institute of Marine Science, Townsville. [BHL]
横地洋之・下池和幸・梶原健次・野村恵一・北野裕子・松本尚・島田剛・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・山本広美・座安佑奈・木村匡・河野裕美 (2019)
西表島網取湾の造礁サンゴ類. 西表島研究 2018, 東海大学沖縄地域研究センター所報 36-69.
執筆者:野村恵一
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更新履歴:
2024-06-16 公開