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Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属

Montipora stellata Bernard, 1897
(Figs. 1-5)

Montipora stellata Bernard, 1897: 120 [Rochy Island, Great Barrier Reef]; Veron & Wallace 1984: 100, figs. 262-271, 1130, 1131; Uchida & Fukuda 1989: 193, 2 figs.; Nishihira 1991: 239, 1 fig.; Nishihira & Veron 1995: 73 (part), upper & middle figs.; Veron 2000: vol. 1, 160 (part), figs. 1, 4, 1 skeleton sketch; Dai & Horng 2009: vol. 1, 34, 3 figs.; Kajiwara et al. 2020: 77; Nomura & Suzuki 2021: 12, figs. 129-131.

Montipora fimbriata Bernard, 1897: 151 [Warrior Island, Great Barrier Reef].

Montipora viridis Bernard, 1897:99, pl. 33, fig. 10 [Solomon Islands].

Montipora angularis Crossland, 1952: 197, pl. 25, fig. 3, pl. 28, fig. 3 [Great Barrier Reef].

Montipora strigosa: Shirai 1977: 507, 4 figs.

Montipora hirsuta: Veron 2000: vol. 1, 159 (part), figs. 6.

Montipora cf. stellata sp. 2 sensu Nomura, Suzuki & Iwao, 2017: 7, fig. 2 (34).

Montipora stellata complex: Yokochi et al. 2019, 43.

not Montipora stellata: Uchida & Fukuda 1989: 203, 2 figs., 222, 2 figs. (= Montipora hispida); Uchida & Soyama 1994: 42, fig. 8 (= Montipora sp.); Veron 2000: vol. 1, 160 (part), figs. 2, 5, 6 (= Montipora sp. AKAJIMA), fig. 3 (= Montipora sp. HOSOTOGE); Kameda, Mezaki & Sugihara 2013: 21, 72, 2 figs. (= Montipora hispida).

? Montipora stellata: Shirai & Sano 1985: 214, fig. 21; Veron 1986: 117, figs. 1, 2, 1 skeleton fig.

シゲミコモンサンゴ 白井, 1977
(図1-5)

シゲミコモンサンゴ 白井, 1977: 507, 4図 (Montipora strigosaとして); 野村・鈴木・岩尾 2017: 7, 図2 (34) (Montipora cf. stellata sp. 2として); 野村・鈴木 2021: 12, 図129-131.

トゲエダコモンサンゴ:西平 1991: 239, 1図; 内田・福田 1989: 193, 2 図; 内田・楚山 1994: 42, 図8 (= Montipora sp.); 西平・Veron 1995: 73 (一部), 上段と中段の図; 横地ら 2019: 43 (Montipora stellata complexとして); 梶原ら 2020: 77.

? シゲミコモンサンゴ:白井・佐野 1985: 214, fig. 21.

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図1. シゲミコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora stellata Bernard, 1897.

A-E. SMP-HC 2205, 八重山諸島竹富島タケルンジュ, 水深 3 m: A, B. 群体; C. サンゴ体外面; D, E. 同, 個体とその周囲.

F-H. SMP-HC 2279. 竹富島タケルンジュ, 水深 3 m: F. 群体; G. サンゴ体外面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図2. シゲミコモンサンゴ.Fig. 2. Montipora stellata Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 2444. 慶良間諸島阿嘉島マジャノハマ, 水深 2 m: A, B. 群体; C. サンゴ体外面; D. 同, 個体とその周囲.

E-H. SMP-HC 2445. 阿嘉島マジャノハマ, 水深 3 m: E, F. 群体; G. サンゴ体外面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図3. シゲミコモンサンゴ.Fig. 3. Montipora stellata Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 2636. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 2 m: A, B. 群体; C. サンゴ体外面; D. 同, 個体とその周囲.

E-H. SMP-HC 3709. 奄美諸島加計呂麻島知之浦, 水深 1 m: E, F. 群体; G. サンゴ体外面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図4. シゲミコモンサンゴ. Fig. 4. Montipora stellata Bernard, 1897.

A-D. SMP-HC 3793. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 3 m: A, B. 群体; C. サンゴ体外面; D. 同, 個体とその周囲.

E-H. SMP-HC 4042. 宮古諸島宮古島世渡崎東沖, 水深 3 m: E, F. 群体; G. サンゴ体外面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

図5. シゲミコモンサンゴ.Fig. 5. Montipora stellata Bernard, 1897.

A-D. BMNH 1873-5-30-1, Montipora viridis Bernard, 1897 のホロタイプ, ソロモン諸島: A. サンゴ体外面; B-D. 同, 個体とその周囲.

E, F. BMNH 1892-12-1-274, Montipora fimbriata Bernard, 1897 のホロタイプ, グレートバリアリーフウォリアー島: E. サンゴ体外面; F. 同, 個体とその周囲.

G, H. BMNH 1934-5-14-391, Montipora angularis Crossland, 1952 のシンタイプ、サンゴ体外面, グレートバリアリーフ: G. サンゴ体外面; H. 同, 個体とその周囲.

定規の目盛り: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.

形態:群体はブッシュ状を成して付着基部を欠き、長径は 40 cm、高さは 15 cm に達する。枝先は様々な方向を向き、分枝次数は4次まで、時に枝同士が接合し部分的に板状を成す場合がある。枝は外面と内面とがあり、外面は霜柱状突起や疣状突起が内面よりもわずかに発達する。末枝は先がやや丸みを帯びた円錐状もしくは側扁した円錐状を成し、長さは平均 16.2 mm、基部の短径は平均 3.7 mmである。幹の断面は円形か側扁し、基部の短径は平均 7.8 mm である。

サンゴ体の共骨表面には平均短径が 0.3 mm の未発達な霜柱状突起が少なくとも枝外面においては密生する。霜柱状突起は不明瞭な莢壁冠を形成し、その内の1個 (たいてい個体の枝基部側) が時に肥大伸長して疣状突起を形成し、最大のものは短径 1.2 mm、高さ 2 mm に達する。疣状突起は高さが 2 mm を超えると側面に個体が増殖し、新たな枝を形成する。疣状突起は枝先で発達する傾向があり、時に側扁・列生して尾根状の隆起 (コリン) を形成する場合がある。

個体はやや疎らにかつ不均一に分布し、個体間隔は個体3個分以内である。個体の多くは莢壁冠や個体周囲の共骨 (個体壁) と共に単体で顕著な筒状に隆起し、個体の高さは最大で 3 mm に達する。個体は枝軸面に対して垂直方向か枝先方向を向くが、たいてい後者が優占する。莢径は平均 0.8 (範囲 0.6~0.9) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。方向隔壁の長さは平均 0.8R、準板状を成し、共骨面よりも上に突出しないものが多い。1次隔壁は完全・規則的で長さは平均 0.7R、鋸歯状か準板状を成し、たいてい突出しない。2次隔壁は不完全・不規則で、長さは平均 0.3R、概して発達が悪く、1次隔壁よりも明瞭に短い。軸柱はたいてい認められない。莢壁は明瞭で共骨面よりも上にやや突出し、裸地帯は部分的に認められる。

共骨表面の目合いは平均 0.12 mm、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は細かい。棘は霜柱状突起上で密生し、長さは平均 0.20 (範囲 0.14~0.24) mm、棒状か薄片状もしくは頭が平たい棍棒状を成し、上縁は全縁か複数の尖端に分かれ、細かな顆粒状突起がよく発達する。

生時の色彩は共肉が褐色もしくは淡褐色で、枝先、小型突起ならびにポリプは明色を呈する。

識別点:本種と Montipora sp. AKAJIMA アカジマトゲコモンサンゴならびに Montipora sp. HOSOTOGE ホソトゲコモンサンゴの2種は互いに外見がよく似ているため混同しやすい。本種は個体がしばしば単体で管状を成して顕著に突出する特徴で、他の2種と区別される。

分布と生態:国内では小笠原諸島を除く奄美諸島以南、海外ではフィリピン、ソロモン諸島ならびにグレートバリアリーフより知られる。波の影響の少ない内湾もしくは礁池内の浅所 (平均出現水深は 3 m、水深範囲は 1~4 m) に生育する。

和名の由来:灌木状の群体形に因む。

備考:M. stellata のホロタイプは小型の板状片より成り、上方に伸びる樹木状の大型突起を欠く。しかしながら、Vellon & Wallace (1984) は本種の群体形には「板状、板状の付着基部を持つ樹木状、付着基部のない樹木状の3型がある」として、群体形の種内形態変異幅の解釈を大きく拡大させた。著者が調査した国内産の標本群は全て樹木状の群体形を成し板状の付着基部を欠いたが、付着基部を持たないことを除けば Vellon & Wallace (1984) の M. stellata の記載に形態がほぼ合致した。Vellon & Wallace (1984) の M. stellata の種解釈には無理があるように思われるが、彼らはホロタイプを調べた上での判断であるので (著者は大英自然史博物館においてホロタイプを探し出せなかった)、本稿では彼らの解釈に従った。

引用文献:

Bernard HM (1897) Catalogue of the madreporarian corals in the British Museum (Natural History). Vol. 3. The genus Montipora, the genus Anacropora. Trustees of the British Museum, London. [BHL]

Crossland C (1952) Madreporaria, Hydrocorallinae, Heliopora and Tubipora. Scientific Report Great Barrier Reef Expedition 1928-29 6: 85-257. [BHL]

Dai CF, Horng C (2009) Scleractinia fauna of Taiwan I. The complex group. National Taiwan University, Taipei.

梶原健次・北野裕子・木村匡・座安佑奈・島田剛・下池和幸・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・出羽尚子・野村恵一・松本尚・山本広美・横地洋之 (2020) 宮古諸島造礁サンゴ目録. In: 宮古島市史編さん委員会(編) 宮古島市史第3巻自然編第1部宮古の自然(別冊). 宮古島市教育委員会, 宮古島市, pp 73-91.

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西平守孝 (1991) フィールド図鑑 造礁サンゴ 増補版. 東海大学出版会, 東京.

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横地洋之・下池和幸・梶原健次・野村恵一・北野裕子・松本尚・島田剛・杉原薫・鈴木豪・立川浩之・山本広美・座安佑奈・木村匡・河野裕美 (2019) 西表島網取湾の造礁サンゴ類. 西表島研究 2018, 東海大学沖縄地域研究センター所報 36-69.

執筆者:野村恵一・鈴木豪

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更新履歴:

2023-11-12 公開