Fungiidae クサビライシ科
Herpolitha Eschscholtz, 1825
Herpolitha Eschscholtz, 1825: 746.
Haliglossa Ehrenberg, 1834: 250.
Herpetolithas Leuckart, 1841: 51.
キュウリイシ属 白井・佐野, 1985
キュウリイシ属 白井・佐野 1985: 230.
非 キュウリイシ [属] 江口, 1975: 57 (=ナマコイシ属).
本属に含まれる日本産種
Herpolitha limax (Esper, 1797) キュウリイシ (属のタイプ種)
本属の解説
属の特徴:サンゴ体は非固着性で多口性。成長したサンゴ体は長い楕円形で、上面正中線上にサンゴ体のほぼ全長にわたる溝があり、その中に初口の口内出芽に由来する口が列状に並ぶ。サンゴ体の上面~側面には、口周縁出芽に由来する二次口が分布する。隔壁上縁は尖った細かい鋸歯を備え、隔壁側面には隔壁縁辺と直交する顆粒列がある。肋の縁辺にはやや尖った突起が並ぶ。サンゴ体壁にはスリット状の穴が開く。
タイプ種:Fungia limacina Lamarck, 1801 [= Herpolitha limax (Esper, 1797)] (Milne Edwards & Haime, 1850 の後指定によるタイプ種).
学名の由来: “Gr: herpo, to creep; Gr: lithos, stone. Referring to the elongate, flattened
appearance of this coral”. ギリシャ語の匍匐するを意味する herpo と石を意味する lithos より、本属サンゴに見られる長く伸びた平たい形に由来する名前
(Wood 1983) 。
和名の由来:白井・佐野 1985は Herpolitha limax (Houttuyn, 1722) キュウリイシを石垣島から報告するにあたり、Herpolitha Eschscholtz, 1825 の和名キュウリイシ属の命名者を杉山とした (H. limax の学名の命名者については本ウェブ図鑑のキュウリイシのページを参照)。しかしながら、杉山 (1947) は H. limax にキュウリイシの和名を与えたが属の和名には言及しておらず、またこれ以外に同著者によるイシサンゴ類の和名を用いた報告は知られていないため、本稿ではキュウリイシ属の和名の提唱者は白井・佐野
(1985) であると判断した。なお、江口 (1975) は Polyphyllia Blainville, 1830 にキュウリイシ [属] の和名を充てているが、これは明らかに Herpolitha Eschscholtz, 1825 との誤認によるものと考えられる (ナマコイシ属のページを参照)。
備考:Gittenberger et al. (2011: 126) によると、Herpolitha Eschscholtz, 1825 キュウリイシ属、Polyphyllia ナマコイシ属、Ctenactis Verrill, 1864 トゲクサビライシ属の3属は、分子系統学的な情報から、互いに非常に近縁な関係にあると推定されている。
引用文献:
江口元起 (1975) 珊瑚と珊瑚礁. 郵政 27(7): 54-57.
Ehrenberg CG (1834) Beiträge zur physiologischen Kenntnis der Corallenthiere im allgemeinen und besonderen des rothen Meeres, nebst einem Versuche zur physiologischen Systematik derselben. Abh Königl Akad Wiss Berlin 1: 225-380. [BHL]
Eschscholtz JF von (1825) Bericht über die zoologische Ausbeute während der Reise von Kronstadt bis St. Peter und Paul. Isis von Oken. 1825(6): 733–747, plate V. [BHL]
Gittenberger A, Reijnen BT, Hoeksema BW (2011) A molecularly based phylogeny reconstruction of mushroom corals (Scleractinia: Fungiidae) with taxonomic consequences and evolutionary implications for life history traits. Contrib Zool 80: 107-132. [ResearchGate]
Leuckart FS (1841) Observations zoologicae de Zoophytis coralliis, speciatim de genere Fungia. Emmerling, Friburgi Brisigavorum. [BHL]
白井祥平・佐野芳康 (1985) 石垣島周辺海域サンゴ礁学術調査報告書. 太平洋資源開発研究所, 石垣.
杉山敏郎 (1947) 石珊瑚目. In: 内田清之助ら (編著) 日本動物図鑑改訂増補版. 北隆館, 東京, pp 1565-1586.
Wood EM (1983) Corals of the world, biology and field guide. T.F.H. Publications,
Hardcover.
執筆者:立川浩之
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更新履歴:
2024-06-29 公開
2024-10-17 和名の由来の項にナマコイシ属へのページリンク追加