Acroporidae ミドリイシ科
Montipora コモンサンゴ属
Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021
(Figs. 1-5)
Montipora hodgsoni: Veron 2000: vol. 1, 72 (part), fig. 2.
Montipora delicatula: Nomura, Naruse & Suzuki 2017: 6 (part), figs. 1A-F, 2C, D, 3A-I, L.
Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021: 12, fig. 110.
ツブホソスジコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021
(図1-5)
ホソスジコモンサンゴ:野村・成瀬・横地 2017: 6 (一部), 図1A-F, 2C, D, 3A-I, L (M. delicatula として).
ツブホソスジコモンサンゴ 野村・鈴木, 2021: 12, 図110.
図1. スツブホソスジコモンサンゴ. Fig. 1. Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.
A-H. SMP-HC 2170, 和名基準標本. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 17 m: A, B. 複葉状群体; C. サンゴ体上面; D, E. 同, 個体とその周囲; F. 同, 周縁方向に傾斜した個体 (側面); G. サンゴ体下面; H. 同, 個体と疣状突起. 定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図2. ツブホソスジコモンサンゴ. Fig. 2. Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.
A-C. SMP-HC 2172. 八重山諸島西表島網取湾, 水深 16 m: A. 小群落; B. サンゴ体上面; C. 同, 個体とその周囲.
D-G. SMP-HC 2189. 西表島網取湾, 水深 15 m: D. 複葉状群体; E. サンゴ体上面; F. 同, 個体とその周囲; G. サンゴ体下面と細長く突出した疣状突起.
H. SMP-HC 2191. 西表島網取湾, 水深 5-15 m. サンゴ体上面, 個体とその周囲.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図3. ツブホソスジコモンサンゴ. Fig. 3. Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.
A-D. SMP-HC 2318. 八重山諸島石垣島浦底湾, 水深 15 m: A. 複葉状群体; B. サンゴ体上面; C. 同, 個体とその周囲; D. サンゴ体下面.
E-H. SMP-HC 3251A. 八重山諸島西表島船浮湾, 水深 26 m: E. 複葉状群体; F. 群体葉状部; G. サンゴ体上面, 個体と鼻筋状隆起; H. サンゴ体下面.
スケールバー: 1 mm. 写真: A, 鈴木豪撮影; A以外, 野村恵一撮影.
図4. ツブホソスジコモンサンゴ. Fig. 4. Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.
A, B. SMP-HC 3251B. 八重山諸島西表島船浮湾, 水深 26 m: A. 複葉状群体; B. 群体葉状部上面.
C-F. SMP-HC 3259. 西表島船浮湾, 水深 16 m: C. 渦を巻いた単葉状群体; D. 群体葉状部上面; E. サンゴ体上面; F. 同, 個体とその周囲.
G, H. SMP-HC 3801, 群体葉状部上面. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 14 m.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: 野村恵一撮影.
図5. ツブホソスジコモンサンゴ. Fig. 5. Montipora sp. TSUBUHOSOSUJI sensu Nomura & Suzuki, 2021.
A-E. SMP-HC 3797. 奄美諸島奄美大島阿鉄湾, 水深 14 m: A. 複葉状群体; B. 群体葉状部上面; C. サンゴ体上面; D. 同, 個体とその周囲; E. サンゴ体下面.
F-H. CMNH-ZG 08218. 奄美大島阿鉄湾, 水深 20 m: F. 複葉状群体; G. 群体葉状部上面; H. サンゴ体上面.
定規の目盛り: 1 mm. スケールバー: 1 mm. 写真: F-H. 立川浩之撮影; F-H以外. 野村恵一撮影.
形態:群体は渦を巻いた単葉もしくは複葉状を成し、長径は 50 cm に達する。群体上面は一切の大型突起を欠く。葉状部は比較的薄く、厚さは末縁で約 1 mm、末縁から 10 cm の距離で 2~5 mm である。
サンゴ体上面では共骨上に小型のドーム状の霜柱状突起が分布するが、その密度はサンゴ体によって変異があり、ほとんど分布しないものから密生するものまで様々である。また、密生しても、サンゴ体基部付近では発達が悪い。霜柱状突起の平均短径は 0.5 mm で、時に莢壁冠を形成する。霜柱状突起は稀に肥大するが、疣状突起を形成することは稀である。たいていのサンゴ体では放射状のコリン列が形成されるが、その発達度合いはサンゴ体によって変異があり、サンゴ体周縁部に限られるものからサンゴ体基部付近にまで破線状に伸びるものもある。コリンの幅は約 1 mm、高さは約 0.5 mm である。
個体は概して疎らに分布し、個体間隔は個体10個分以内である。個体は多かれ少なかれ周囲の霜柱状突起もしくは共骨と共に共骨面から突出して粒状突起を形成し、基本的にサンゴ体周縁方向に傾斜し、直立するものは稀である。しばしば個体後方
(サンゴ体基部側) の共骨が隆起し、フード状、砲弾状もしくは太い鼻筋状の突起を形成する。莢径は平均 0.7 (範囲 0.6~0.8) mm で、個体の大きさは属内では中程度である。
方向隔壁はやや不明瞭、長さは 0.8R、準板状もしくは鋸歯状を成し、莢開口面より上には突出しない。1次隔壁はほぼ完全・規則的、長さは 0.7R、準板状か鋸歯状を成し、突出しない。2次隔壁は完全・不規則か不完全・不規則、長さは 0.5R で、1次隔壁よりも短い。軸柱は認められないか弱く発達する。莢壁も裸地帯もたいてい不明瞭である。
共骨表面の目合いは平均 0.08 mm で、網目はフレームよりも明瞭に幅狭く、肌理は特に細かい。棘はやや大きく、棒状か薄片状を成し、表面は顆粒状突起に被われる。
サンゴ体下面ではエピテカの発達度合いはサンゴ体によって様々で、まったく発達しないものから縁から 1 cm の距離までを被うものがある。個体がごく疎らに分布し、莢径は平均 0.5 mm である。個体は共骨中に埋没するか共骨と共にドーム状に低く隆起する。サンゴ体によっては個体の一端
(たいていサンゴ体周縁側) の共骨が周縁方向に向かって円錐状に長く伸びる場合がある。この突起や隆起個体を除けば、共骨表面は滑らかで霜柱状突起は認められない。
生時の色彩は、共肉が褐色を成し縁は明色に染め分けられ、ポリプは赤色か黄色を呈する。
識別点:本種と Montipora delicatula ホソスジコモンサンゴは形態が酷似し、しかも同所的に生息するため混同され易いが、本種は個体がほぼ周縁方向に傾斜し、霜柱状突起は少なくともサンゴ体基部付近では不明瞭であるのに対し、ホソスジコモンサンゴは個体の多くが直立し、霜柱状突起は全面にわたってほぼ密生することで両者は区別される。また、本種は
M. minuta ウスコモンサンゴや M. aequituberculata チヂミウスコモンサンゴにも外観が似るが、ウスコモンサンゴはサンゴ体周縁方向に傾く個体は一部で、霜柱状突起の密度はほぼ均一なことで、チヂミウスコモンサンゴは莢壁冠が概して明瞭で、少なくとも群体中央付近では霜柱状突起は密生することで、それぞれ本種と区別される。
和名の由来:和名は個体後方の粒状隆起と細かい放射状のコリン列に因む。和名基準標本は SMP-HC 2170 (西表島網取湾産) である。
備考:本種は該当する既知種が見当たらないため未記載種と思われる。M. delicatula ホソスジコモンサンゴのページでも述べたように、野村・成瀬・横地 (2017) によって報告されたホソスジコモンサンゴには2種 (ホソスジコモンサンゴ、M. sp. TSUBUHOSOSUJI ツブホソスジコモンサンゴ) が含まれていたことが、形態ならびに分子系統解析によって確認された。西表島船浮湾では両者は同所的に分布する。
引用文献:
野村恵一・成瀬貫・横地洋之 (2017) 八重山諸島で採集された花冠状群体を形成するコモンサンゴ類 (イシサンゴ目ミドリイシ科) 2種. Fauna Ryukyuana 35: 5–15. [琉球大学学術リポジトリ]
野村恵一・鈴木豪 (2021) コモンサンゴ類の同定の話(48), 国内産種の紹介34. 霜柱状突起と葉状・板状群体を持つ種. マリンパビリオン 特別号12. [串本海中公園]
Veron JEN (2000) Corals of the world, vol. 1. Australian Institute of Marine
Science, Townsville.
執筆者:野村恵一・鈴木豪
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更新履歴:
2023-11-12 公開